1.U.S.NAVY(USアーミー)の時計|元「アナトミカ」バイヤー・中村隆一さん
80年代にパリのクリニャンクールの蚤の市で、偶然にも同じジャケットに同じタイミングで手を伸ばしてきたのが、あのピエール・フルニエだった。そんな奇縁により、中村さんは名店エミスフェールの日本での店舗を任されるようになる。
「ベトナム戦争で使われたアメリカ陸軍の時計を手に入れたのは、1978年のことでした。オリーブグリーンのナイロンベルトからターコイズのブレスに変えたのは、85年。ピエールと一緒にバイイングで出かけた先のニューメキシコで見つけました。ネイティブアメリカンの居留地を訪問し、ハンドウーブンのネクタイを買い付けした帰りの出来事だったと記憶しています」
60年代から長きに渡って時を刻み、いまでもこの時計は現役であり続けている。
「デザインはいたってシンプル、機構的にも最もシンプルな手巻き。この時計と出会う前はロレックスのエクスプローラーを使っていたのですが、自動巻きでは満足できなくなりました。ブレスと共に経年の味わいを愉しんでいます」
愛用歴:44年
購入場所:アメリカ
購入時の価格:30ドル
2.WAREHOUSE & CO.(ウエアハウス)のスウェット|「ウエアハウス」プレス・藤木将己さん
“ヴィンテージ古着の忠実な復刻”をコンセプトに、一貫した姿勢で硬派なプロダクトを展開する名門ウエアハウス。名物プレスである藤木さんの道具服は、アメリカのアスレチックウエアの原点であるスウェット。同社が創業時から作り続けているスウェットは、まるでヴィンテージのような佇まい。
「このLot403という品番のスウェットは、20年以上、仕様を変更していない弊社の定番です。発売当時、ヴィンテージスウェットの復刻はありましたが、生地やディテールだけでなく、縫製仕様まで忠実に再現したブランドは少なかったと思います。だから使い込んでいくと、ヴィンテージと同じ箇所が破れていくんです。
ウールからコットンに置き換えられた黎明期となる30年代のスウェットは、最先端のスポーツウエアでした。保温性を損なわないように、コットンフリースラインドと呼ばれる裏起毛が施されています。手間は掛かりますが、これだけで着心地が違いますよ」
愛用歴:25年以上
購入場所:ウエアハウス
購入時の価格:1万4850円
3.L.L.Bean(エル・エル・ビーン)のレザートート|「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールマスター・森山真司さん
1980年代に、当時はまだパートナーだった奥さんが購入したのがこちらのバッグ。海外から取り寄せた紙のカタログを片手にFAXでオーダーした。いわゆる個人輸入だ。
「エル・エル・ビーンが日本に上陸する前で、しかもメイド・イン・USAの時代。そこで本場のアメリカものを賢く、確実に入手する手段が個人輸入だったんですよね」
森山さんの体型が小柄ということもあり、夫婦でアイテムを共有するのはいつものこと。婚前に購入した数々の定番アイテムは、今ではほぼ森山さんが使っているほどだ。
「自分にとってはカバンこそが道具的な存在。ここでブランドを誇示したりとか、そういう役割は求めません。その点、エル・エル・ビーンなら靴を突っ込んで汚れようが、雨で濡れようが、とくに気にせず。キャンバス素材のトートがメジャーかもしれませんが、あっちは使い込むとバリバリに劣化してしいます。革靴に合うのはレザーバッグですし、使い込んで魅力が増すという側面も道具的だなと思います」
愛用歴:30年超
購入場所:メールオーダー(当時の国際通信販売)
購入時の価格:3~4万円くらい
4.FANNI LEMMERMAYER(ファンニレマメイヤー)のニット|「アーチ」ジェネラルマネージャー・原祐輔さん
国内外の実力派ブランドと厳選されたユーロヴィンテージを絶妙にミックスした札幌発の人気ショップであるアーチ。ARCHのジェネラルマネージャーを務める原さんが、ベストな機能服として挙げたのが、オーストリアの老舗ニットメーカーのアルパカニットである。
「20代前半の時に右下にあるグリーンのカーディガンを古着で購入したのが、当ブランドを知ったきっかけでした。上の2つは今年と去年にそれぞれ個人オーダーしたカスタムモデル。ともに昔のカタログに掲載されていたモデルを復刻してもらいました。
このニットメーカーの魅力は、地元の北海道で活躍するほどの保温性で、インナーとして着た時に蒸れずに快適であること。質の高いアルパカ100%で、リンクス&リンクスという独自のパール編みだからこそ成せる技です。1枚でも着られますが、基本的にはインナー使いすることがメイン。独特なカラーリングなので、コーデの差し色にもなりますし、何よりも温かいので、実用性も高いんです」
愛用歴:15年
購入場所:アーチ
購入時の価格:無地で7~10万円くらい
5.ALFONSO OF HOLLYWOOD LEATHER(アルフォンソ オブ ハリウッド レザー)のバスケットウィーブレザーウォレット|「ユニバーサルオーバーオール」プレス・山井智弘さん
タフなワークアイテムを日常で着こなす山井さんが「道具として最初に思い浮かべたのが、これです」とポケットから取り出したのが、アルフォンソ オブ ハリウッド レザーのウォレット。
「ロングウォレットだけど、ドル札仕様だからポケットの収まりがいいんですよ。おかげで1万円札は折らないと入らないけど、それも愛着を感じる部分」
20歳の頃に入手して以来、このウォレットだけを愛用し続けている。
「17年経つけど、劣化するどころか、ポケットに馴染んで使い心地がよくなる一方(笑)。まだまだ壊れる気配もないから、生涯現役になりそうです」
愛用歴:17年
購入場所:渋谷のバックドロップ
購入時の価格:2万円くらい
6.CASIO(カシオ)のジーショック|「WEAREALLANIMALS」平沢達哉さん
有名セレクトショップでバイヤーやディレクターを経て、昨年に独立を果たした平沢さん。その独特な審美眼と個性的な着こなしで知られる平沢さんの愛用品は、そのセレクト同様にひと癖あり。世は90sブームの真っ只中であるが、この手のジーショックに目を向けている人は少ないだろう。
「最近のマイブームで、90sのジーショックが気になっているんです。きっかけは先輩がフランス軍に納品されていたジーショックを付けていたこと。ストラップを替えていて、なんだか新鮮に写ったんです。ヴィンテージの機械式時計も所有していますが、普段は自転車移動が多いこともあり、デメリットの方が大きかったので、ちょうどいいなと。
左の5600ミリタリーコレクションは近年のものですが、右の6900エクストリームは当時物。そこらへんを掘ってみるとおもしろい海外企画があったり、かなり奥が深い世界。今でも実働しますし、手の出しやすい価格帯なので、あらためて追求したいジャンルになっています」
愛用歴:1~5年
購入場所:セレクトショップ
購入時の価格:各1万円
7.Black Sheep(ブラックシープ)の手袋|「原宿キャシディ」店長/バイヤー・八木沢博幸さん
原宿トラッドスタイルの重鎮として名高い、八木沢博幸さん。自身が勤めるショップ、キャシディでも扱っているニットグローブを25年ほど愛用中。
「英国らしい素朴なニット製品を手掛ける実力派ブランドです。ウェールズ原産のブラック・ウェルシュ・マウンテンシープの毛を使用しており、昔ながらの手強いタッチを今に伝える貴重なニットが特徴。セーターも作っているのですが、キャシディでは滑らかな質感のセーターを中心にセレクトしているので取り扱っていません。
手袋だとしっかりしているほうが軍手よろしくタフに使えて保温性も抜群。冬の自転車通勤などに使っていますが5年はヘタれません。少し油分を残したニットは保湿性もあるようで、フリースなどと比べて使用後の肌感が良いのもポイント。このグローブは指貫き仕様なので、スマホ操作や細かい作業も極めてスムーズです。また素朴なニット製品は、ダッフルコートやツイードの上着などと相性が良いところも気に入っているんです」
愛用歴:25年
購入場所:原宿キャシディ
購入時の価格:3080円
8.Paul Harnden(ポールハーデン)のレザートートバッグ|「メイデンカンパニー」バイヤー・矢澤雄太さん
イギリスのアルチザン系ブランドの代表格ポールハーデン。一点ずつ手作りされるアイテム類は非常に高価にも関わらず、なかなかお目にすら掛かれないほど人気が高い。そんな名ブランドのトートバッグを使う矢澤さんは、原始的なスタイルに道具らしさを見出している。
「ブランド的な主張が一切なく、言うなれば袋にハンドルが付いた究極にシンプルなスタイルなので、TPOやスタイリングを問わず使えます。それでいて一眼見ても分かるレザーのハイクオリティさなど、なんとも言えない上品さも備えています。物を運ぶ上でこれ以上のモノはないですね」
愛用歴:5年
購入場所:インターネット
購入時の価格:3万円くらい
9.ICHIMATSU(市松)のバングル|「ベルーリア」オーナー・山越弘世さん
オーダーメイドのアクセサリーブランド「市松」が創業した、25年前に購入した最初期モデル。一時廃盤になったものの熱い要望に応えて復刻を遂げ、現在も展開されている隠れた名品だ。
「丸型の地金を打ち込みながら角型に仕上げた『丸線5.5mmバングル』この形状にするためには職人の高い技術が必要なんです。高純度なシルバー980を使用しているから本来の経年を楽しむことができ、25年も使っているのでよく周りから『いいアジ出てるね』と褒められます。人生初のオーダーバングルで、お守りとしてもファッションとしても毎日欠かせません」
愛用歴:25年
購入場所:シップス
購入時の価格:3万8000円
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年2月号 Vol.191」)
Photo/Satoshi Ohmura, Yuta Okuyama, Nanako Hidaka, Shunichiro Kai, Norihito Suzuki, Takuya Furusue, Akira Mori, Yoshika Amino Text/Okamoto 546, Shuhei Sato, Masatsugu Kuwabara, Tsuyoshi Hasegawa, Shinsuke Isomura, Kiyoto Kuniryo, Shuhei Takano, Kazuki Imanishi
関連する記事
-
- 2024.11.20
松浦祐也の埋蔵金への道。第10回 夏季最上川遠征・没頭捜索編 その2。
-
- 2024.11.19
[渋谷]革ジャン青春物語。—あの頃の憧れはいつもVANSONだった。—
-
- 2024.11.17
なぜ英国トラッドにはブラウンスウェード靴なのか? 相性の良さを着こなしから紐解く。