【今行くべき町中華】手塚治虫も太鼓判!「一番飯店」の特製上海焼きそば(高田馬場)

「町中華」。言葉の響きを聞くだけで、なんだか嬉しくなってしまう。店に入った瞬間、鼻から入って、脳を通って、耳から抜けていく、油の香り。厨房から聞こえる、ジュワッという最高の効果音。ああ……この気持ちを満たすために、訪れたい厳選店舗をピックアップ。今回は漫画の神様、手塚治虫氏が生涯愛した一品を供する「一番飯店」へ!

野菜、肉、魚介たっぷりの具材と旨み。手塚治虫の太鼓判もうなずける。

創業は昭和27年。高田馬場に移転して68年と一番飯店の歴史は実は長い

今年5月に70周年を迎えた一番飯店。ここでいただきたいのは、『特製上海焼きそば』。2代目店主の山本義家さんが、漫画家・手塚治虫さんの職場に出前を届けた際、頼まれた創作メニューだ。

多忙なため、1日1食だったマンガの神様・手塚治虫さんが、店主山本さんにお願いしてできた『特製上海焼きそば』1450円

「とても腰の低い人でね。『悪いんだけど……この焼きそばに、八宝菜をのっけてもらえないかな。鶏肉もいいな、それにイカ、エビ。 きのこも入れられる?』って言うもんだからさ、帰って親父に相談したんだよ」

先代は、歴代の首相に料理を振る舞っていた料理人。山本さんが要望を伝えると、迷いなく、パパっと仕上げた。しかし、これは手塚プロ専門メニューという位置付けで、店に並ぶことはなかった。でも焼きそばの歴史は終わらない。

店頭には手塚治虫さんとのゆかりの品と、2代目店主の幼少期の家族写真が。当時を知る客もいまだに店に足を運んでいる

手塚さんが亡くなった後、手塚プロからあの焼きそばのリクエストが届く。そんなに愛されているのなら、と、店舗メニューとして復活。いわば、手塚プロ公認のひと皿なのだ。
「みんな、これを目当てに来てくれるから、作る側も気合いが入っていますよ」

店の成り立ちが分かる年表も。先代が昭和27年に白金台で創業、浅草からの移転を経て、高田馬場で昭和29年「一番」を開業。 昭和42年に現在の「一番飯店」に名前を改めた……という長年の歴史あり

実は『特製上海焼きそば』、準備も手間もかかる。まず中華鍋をふたつ熱す。そして茹でた麺を炒めてお皿に盛り、その後、エビを揚げてあんかけを麺に盛る。再度、熱していた3つめの鍋で野菜を揚げて再びあんを作って盛る。この工程、2人体制でないと作ることができないのだ。

昼からビールを飲みながらやるのが最高。常連は必ず注文する『空芯菜炒め』560円

ちなみに写真ではなかなか伝わりにくいが。かなりの大皿で提供される『特製上海焼きそば』は、総重量650グラム。しいたけ、鶏肉、小エビ、エビ、チンゲン菜、きくらげなど全9種類の具材のありとあらゆる旨味が凝縮されている。あんかけをつまみに飲みながら、最後に麺と一緒に食すのが通の食べ方らしい。

2代目と3代目山本さん親子。名物の『特製上海焼きそば』は連携プレーがないと作れない

DATA
一番飯店
東京都新宿区高田馬場4丁目28-18
TEL03-3368-7215
営業/11:0015:30(L.O.15:00)17:0022:30(L.O.22:00)
休み/
水曜

(出典:「2nd 20229月号 vol.186」)

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