防寒性の高い厚手のウールコートをはじめ、コットン製のスプリングコートや防水性に優れたレインコートなど、ひと言でコートといっても様々な用途があり、アイテムの振れ幅は広い。かつアウターとして最も存在感が強いために、スタイリングに与える影響力はピカイチ。コーディネイトするアイテムをベーシックにしながら、一点豪華主義的に渾身のコートを取り入れるもいいかもしれない。
カジュアルファッションにおいて活躍するコートといえば、バルマカーンコート(ステンカラー)、トレンチコート、ダッフルコート、ピーコートの4アイテム。興味深いことに、そのうち3つがミリタリーを起源としている点も興味深い。戦場という極限の環境下において各国が凌ぎを削って生み出したスペックを搭載したアイテムは、「機能的」であるのはもちろん、「機能美」として完成されたデザインを生んでいる。
着丈や仕様など定義の幅が広く、年中活躍するコートカテゴリーはバリエーションも豊富。なかでもメンズアウターを代表する定番の4スタイルを紹介する。
1.バルマカーンコート(ステンカラーコート)
小さめの襟が特徴のゆったりとしたオーバーコート。日本ではしばしば「ステンカラー」と呼ばれるが、それは和製英語でありスコットランドの地名にちなんだ「バルマカーン」が一般的な名称だ。他に比べて装飾の少ないベーシックなデザインなので着こなしの汎用性は最も高いといえる。英国マッキントッシュ社のゴム引き防水コートなど、多くの名作コートもこの型をベースとしている。
2.トレンチコート
ダブルブレステッド&ベルテッドの防水素材製コート。装飾性が高いことからドレス寄りなイメージが強いが、第一次世界大戦時の英国陸軍が塹壕(トレンチ)戦で着用していたモデルが起源といわれている。襟元には防塵、防寒性を高めるチンストラップや発砲時の衝撃から身を守る右肩の当て布(ガンフラップ)はその名残り。当時アクアスキュータム社も軍への納入をしていた。
3.ダッフルコート
「ダッフル」とは起毛した厚手の粗いウール素材のこと。北欧の漁民が着ていたものを第二次世界大戦時に英国海軍が採用したことで一般層にも広がったデザインとされる。ボタンではなくトグル留めを採用した前立ては、極寒の環境下で手袋をしたままでも着脱し易いように考案されたもの。現代ではスタイルをチャーミングにしてくれるアウターの象徴として、ビビットなカラーも多様に揃う。
4.ピーコート
オランダ語でラシャ(厚手の織物)のコートを意味する「pij jekker(ピイ エッケル)」が語源とされるメルトン製のコート。19世紀末頃、英海軍で採用されると戦後のヨーロッパを中心に漁師などにも愛され、第二次世界大戦にはアメリカ海軍にも防水加工を施した10ボタンのピーコートが正式採用されている。ショート丈の着易さもあり、カジュアルスタイルには欠かせない存在だ。
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