iPhoneにマイナンバーカードがやってくる
Appleウォレットにマイナンバーカードを登録できるというこの新機能は、手続きの簡便化はもちろん、身分証明のあり方そのものを大きく変える可能性を秘めている。これまで物理カードが必要だったマイナンバー認証を、スマートフォン1台で代替できるというのは大きな変化だ。しかも、iPhoneのFace IDやTouch IDと連携することで、従来の暗証番号入力に比べてはるかにスマートで安全な本人確認が実現する。
マイナンバーカードにまつわる誤解は少なくない。『個人情報が漏れるのではないか』『政府に行動を監視されるのではないか』といった不安の声もあるが、これは誤解に基づいた懸念だ。マイナンバーカードは『本人確認』のためのツールであり、医療記録や銀行口座などの情報が内部に格納されているわけではない。
たとえば、役所で住民票を発行してもらう場合、求められるのは「この人が本人かどうか」という一点のみ。マイナンバーはその本人性を担保する手段に過ぎず、Appleウォレット版もこの考え方に基づいて設計されている。
利便性だけでなく、安全性にも配慮
『iPhoneのマイナンバーカード』を登録するには、マイナポータルアプリと、手元のマイナンバーカード、そして暗証番号(数字4桁)と署名用パスワード(英数字6〜16文字)があればよい。数分でiPhoneに登録でき、Face IDでの認証を通して本人確認が完了する。
これにより、マイナポータルへのログインや、コンビニでの住民票・印鑑証明の取得など、これまでカードリーダーやキオスク端末が必要だったサービスが、iPhoneだけで完結するようになる。
Appleウォレットに格納されたマイナンバーカードは、iPhoneのセキュアエンクレーブ上で管理され、第三者がアクセスすることは極めて困難だ。データ自体も端末内に保存され、クラウド上には送信されないため、プライバシー保護の観点でも高いレベルの安全性を確保している。
また、万が一iPhoneを紛失した場合でも、「マイナンバー総合フリーダイヤル」に連絡すれば24時間365日体制で一時利用停止が可能。「探す」アプリからの遠隔無効化にも対応している。もちろん、Face IDを突破するのはほぼ不可能なので、Face IDさえかけておけば、利用停止する必要もないと思うのだが。
ユニーク性の証明が可能になる未来
この仕組みを活用すれば、オンラインサービスにおける『1人1個まで』の購入制限なども精密に実現できる。名前や住所といった情報を渡さずに、『この人は他の誰とも重複しないユニークな存在である』という証明ができるのだ。
今、Switch 2や、ガンプラ、お米などでも問題になっている転売対策としても有効だし、コンサートチケットなどの不正転売防止にもつながる。つまり、マイナンバーカードは『個人情報を必要以上に渡さないための道具』として捉えるべきだ。
制度を壊すな、セキュリティを壊すな
こうした未来に向けた前進を歓迎する一方で、懸念すべき動きもある。
公正取引委員会がAppleに対し、App Store以外のサイドローディングを認めるよう圧力をかけていることだ。これは、iPhoneの堅牢なセキュリティモデルを崩しかねない行為であり、デジタル庁としても強く異議を唱えてほしいところだ。
デジタル庁がiPhoneやAndroidの高い安全性を活用しようとしている一方で、公正取引委員会がその安全性を破壊する『スマホ新法』を押し通そうとしている。縦割り行政の悪い点だ。スマホのセキュリティは今後の社会基盤となっていくものだ。そのことを、あらためて行政も立法も認識して欲しい。
『iPhoneのマイナンバーカード』は、安全性と利便性を両立させた稀有なサービスであり、これを起点に、行政サービスのあり方も、オンライン認証の枠組みも、よりユーザーフレンドリーな方向へと進んでいくべきである。
(村上タクタ)
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