書類、名刺、レシートなどすべてデータ化 リモートワークの必需品 ScanSnap iX2500

『失われた30年』に大変貌を遂げたフォントの話【タイポグラフィ・ブギー・バック】

『フォントの日』に開催された『Adobe CC道場スペシャル』に出演されていたフォント愛好家・正木香子さんの著書、『タイポグラフィ・ブギー・バック』を読んだ。

iPhone/Macと同じ美しいフォントが、Windowsでも使えるように!【Adobe Fonts】【フォントの日】

iPhone/Macと同じ美しいフォントが、Windowsでも使えるように!【Adobe Fonts】【フォントの日】

2025年10月27日

主なテーマは、写植・電算写植から、デジタルフォントへの移り変わりだった。思えば、バブル崩壊とか、景気の低迷とか、出版の凋落とか、サブカルの隆盛とか、いろんなことと重なっていて面白い。

タイポグラフィ・ブギー・バック: ぼくらの書体クロニクル
https://amzn.to/3obDLfg

筆者の職歴の始まりはDTPからだった

ダンスフロアに華やかな光
僕をそっと包むよなハーモニー♪

筆者(本の著者でなく、私、村上タクタ)が出版業界に入ったのは ’92年7月だった。当時世間はまだまだ写植全盛の時代だったが、私が入ったライダースクラブというバイク雑誌は先進的なDTPを取り入れていた。

手取り月給13万円で入社したばっかりの私の机には、「80万円もするんだからな、壊すなよ」と言われてMacintosh Classic IIが置かれていた。デザイナーたちは、IIciでAldus Page Maker 6.5を使ってデザインしていた。

当時は写真は粗いモノクロ画像のみをアタリ用に取り込んで、本番写真は印刷所ではめ込んでいた。文字組みを含むデザインは帆風などの出力屋さんに持ち込んで出力してもらい、それを銀座の印刷屋さんにバイクで持ち込んでいた。なにしろ、バイク雑誌だから「オレらの方がバイク便より速い」と意味の分からない自負を抱いていた。

DTP→写植。まさに時代に逆行

ところが、 ’95年に着任した編集長が「写植の方が美しい」と言い出して、写植に逆戻り。デザインもデザイン用紙という方眼紙のような紙の上にデザイナーが手書きするようになった。

(キャッチ 16Q ゴナDB ツメツメ 行18)
(キャッチ 13Q EG-KL ツメツメ 行15)
(キャプ 10Q DG-KL ツメ 行12)

文字は、シャープペンシルで引かれたZ字型の枠の中にこういう指定が書いてある。そして、級数表という升目が引かれた透明な下敷きのようなモノを当てはめて、文字数を調べてデザイナーが書き込んでくれている。本文なら(17文字×107行)とかいう具合だ。

ここで、書いた文字をフロッピーディスク(3.5インチ)に入れて写植屋さんに渡すと写植が上がってきて、それを印刷屋さんが、別途入稿されたポジフィルムの写真を合わせて版を構成してくれる。なんか、今考えるとめちゃくちゃ大変だ。

結局のところデジタルでは当時のリュウミンなどの文字がちょっと細くて頼りなかったり、フォントのバリエーションが足りなかったり、文字ヅメが写植ほど上手くいかなかったりしたのだ。

この本で言うところの『写植からデジタルフォントに移り変わりながら混在していた時代』、私はまさにデジタルと写植を行ったりきたりしていたのだ。

バブル崩壊、出版凋落、写植からデジタルフォントへの移り変わり

渋谷系という言葉の華やかさとはまったく関係のない、渋谷1丁目のライダースクラブ編集部で徹夜していた時代、当時のボスに呼ばれて六本木のバーに行くとかならず歌って(というか歌わされて)いたのが、『今夜はブギーバック(nice vocal)』だった。

だから筆者にとって、写植の級数指定をしていた時代の背景には、オザケンの『今夜はブギー・バック』が流れている。この本の『タイポグラフィ・ブギー・バック』というタイトルは、筆者にとっての時代性をめちゃくちゃ上手く汲み取ってくれている。懐かし過ぎる。

と、まぁ、話は途方もなく自分語り、昔語りになってしまったが、正木さんのこの本も、まさにフォントにまつわる自分語り、昔語りの本。

『今夜はブギー・バック』の他にも、『SLAM DUNK』などのジャンプマンガのフォント選び、古畑任三郎とヱヴァンゲリヲンの文字組み、クウネル、SWITCHなどの雑誌、きゃりーぱみゅぱみゅ、椎名林檎などに関するフォント選びのエピソードなど、言われてみれば「そういえば!」とヒザを打ちたくなるようなフォントにまつわるエピソードが満載である。

そして、この本が指摘している通り、ここ30年でフォント選びの事情は大きく変わっており、我々が目にする文字は写植文字からすっかりデジタルフォントに移り変わった。

’95年に僕らの編集部が感じてたような、デジタルフォントの貧弱さみたいなものはまったくなくなった。

フォントのバリエーションも増えたし、2001年にMac OS Xが登場、その後、日本語組み版の特殊事情をしっかり取り込んだInDesignが登場した(それ以前は、Page Maker→QuarkXPressだった)。印刷所の対応が進まないとか、いろいろな事情があって、Power Mac G4+OS 9+QuarkXPressという組み合わせは長く使われたが、最終的にはAdobe InDesignがデファクトスタンダードになった。そのあたりの事情も掘り下げるといろいろあるのだが、ともあれ、そんな波乱万丈があって今がある。

その頃の僕らと言ったら
いつもこんな調子だった♪

一般の方が読んで面白いかどうかは分からないが、私は非常に楽しく、かつ懐かしく読ませていただいた。

(村上タクタ)

正木香子さんがお話しされた『【CC道場 スペシャル】フォントの日だよ〜文字っ子!全員集合〜あのフォントが使えるってふぉんと!? 』はこちら。

この記事を書いた人
村上タクタ
この記事を書いた人

村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

王道のデニムセットアップはボトムスで差をつけろ!

  • 2026.06.30

昨今のアメカジブームのなかで、注目度が高まっている“デニムオンデニム”のセットアップスタイル。王道ももちろん良いが、一歩先を行きたいアメカジラバーはボトムスで差を付けてみるのはいかがだろうか。気鋭のブランド「アンバースレッズ」が展開するデニムセットアップはそんな望みを叶えてくれるに違いない。 Amb...

初夏は、泥と大戦で。「STUDIO D’ARTISAN」2026SSの新作を紹介!

  • 2026.07.03

選ぶのは「泥染の開襟シャツ」か、「大戦モデル」か──。この初夏、気になるのは対照的な表情を持つ二つの新作だ。そのどちらにもステュディオ・ダ・ルチザンならではの、丁寧な作りと遊び心が息づいている。 奄美大島の伝統技法が生む、泥染ならではの深い表情に注目 奄美大島に古くから伝わる泥染は、テーチ木(シャリ...

時とエイジングを刻む。VAGUE WATCH&Co. × CONSIGLIERE THE 1ST SPECIAL WATCH

  • 2026.07.02

時計は時間を刻むもの。本来の目的はそれで十分だが、「エイジングするものに囲まれて暮らしたい」という自称革ジャンの伝道師・モヒカン小川はベルトにもこだわる。そんな彼が愛用するヴァーグウォッチとシルバージュエリーブランド「コンシリエーレ」のコラボウォッチには毎日身につけた分のエイジングが刻まれている。 ...

「ファーストアローズ」創業30周年記念! 「JELADO」「RE-BUILT」とのコラボによる銀で彩った、贅沢なデニム。

  • 2026.06.29

日本屈指のシルバーアクセサリーブランド「ファーストアローズ」が創業30周年を記念して、これまでの集大成かつファンへの感謝の気持ちを込めて、「JELADO」と「RE-BUILT」とコラボしたスペシャルなデニムを制作。限定100本。節目の年に相応しいこだわりに満ちたデニムの詳細を大解剖! First A...

Pick Up おすすめ記事

上品に纏うちょうどいい季節。大人の夏にちょうどいい「ORGUEIL」のシャツ

  • 2026.06.30

気温の上昇とともに、装いは軽く簡素になる。だからこそ求めたいのは、肩肘張らない大人の品格だ。クラシックをモダンに再構築したORGUEILのシャツが、大人の夏にちょうどいい存在感を放ってくれるはずだ。 Shawl Collar Denim Work Shirt 1930 年代に現存したアメリカンワーク...

夏のアメカジがもっと楽しくなる「HEATH」のオリジナルプリントT !!

  • 2026.06.30

横浜を拠点に“大人のアメカジ”を提案する「ヒース」。セレクトショップでありながらハイクオリティなオリジナルプロダクツに定評があり、遊び心のあるアイテムや限定モデルも多く展開している。その筆頭が7.4オンスの肉厚Tシャツシリーズだろう。 [caption id="" align="alignnone"...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

時とエイジングを刻む。VAGUE WATCH&Co. × CONSIGLIERE THE 1ST SPECIAL WATCH

  • 2026.07.02

時計は時間を刻むもの。本来の目的はそれで十分だが、「エイジングするものに囲まれて暮らしたい」という自称革ジャンの伝道師・モヒカン小川はベルトにもこだわる。そんな彼が愛用するヴァーグウォッチとシルバージュエリーブランド「コンシリエーレ」のコラボウォッチには毎日身につけた分のエイジングが刻まれている。 ...

夏の余白に、存在感を。大人メンズの夏スタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介!

  • 2026.06.30

シンプルな装いだからこそ、アクセサリーや小物が着こなしの印象を大きく左右する夏。そんな季節にチャコールグリーンが提案するのは、物語とクラフトマンシップを宿した逸品たち。夏のスタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介する。 手仕事が生む、本物の存在感 2002年に誕生したアティースは、「REL...