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iPadを使いこなす伊那西小学校は、森の中で英語の勉強

iPadを使った学習というと、詳しくご存知ない方は、「そんなコンピュータだけで、勉強して身に付くの?」とお思いになるかもしれない。しかし、実際の教育の現場を見ると、iPadこそが現実の世界をよく知るためのツールであることがよく分かる。

森に抱かれた伊那西小学校

長野県伊那市の伊那西小学校は、72年もの歴史を持つが、現在は児童数約50人ほどの小規模校。

伊那市内から木曽山脈のふもとへと、なだらかな坂を登った先の、とうもろこし畑の先の小さな森のなかにある。夏から秋にかけては、とうもろこしを目当てにクマが降りてくるので、登下校は『くまバス』というバスで送り迎えすることになっているという土地である。

伊那西小学校は伊那市の『小規模特認校』に指定されており、『少人数』での、『豊かな自然の中での活動』が推進されている。伊那市の小学生は本人と保護者が希望した場合、校区を超えて小規模特認校に入学することができる。

伊那西小学校で特徴的なのは、小学校が保有する森があること。

この森は、児童達や保護者、校区の方が集まって、整備、保全活動をし、各教科、各学年で利用している。林間マラソンが行われることもあれば、自然観察に使われたり、シイタケを育てたり、木の実や山菜、タケノコなど季節の食材採取を体験したりする場所としても使われる。

取材にうかがった日には、その森にある『森の教室』で英語の授業が行われていた。

いつもの森の中だから、照れずに英語を話せる

取材させてもらったのは、5年生の英語の授業。5年生は8人で、たまたまだが全員が女の子。この日の授業は『英語での自己紹介』。

先生が教えた言葉を元に、簡単な受け答えを行う。

カメラを持った児童が英語で質問し、もう一人がカメラに向かってその答えを述べる。

たとえば、撮影者が
『What color do you like?』
と、質問して、
回答者が
『I like green』
と答える、といった具合だ。

児童達は森の教室から出て、森の中に散らばり、思い思いの場所で撮影を始める。教室の中では話すのが照れくさそうだった彼女達も、お気に入りの木陰でカメラに向かってなら照れずに話せそうだった。

撮影に使うアプリはアップル純正のClipsという動画アプリ。各カットの長さを編集したり、入れ替えたり、ステッカーを貼ったり、(著作権がクリアな)BGMを付けたりすることが、簡単にできる。

表現したい言葉が自分の語彙になければ先生に聞けばいい。同級生同士で撮影して、簡単に動画ができていく。

昔なら、先生に当てられた児童にしか発表の機会はなかったし、先生も授業を滞らせるわけにはいかないので、それなりに回答できる児童を当てがちだったものだが、今は全員に発表の機会がある。

全員が考え、全員がカメラに向かって発言をする。子ども達は自分の得意な自己表現のスタイルを見つけることができる。また、動画に撮ることで自分の発表を客観的に見ることができる。

「もじもじしているのはカッコ悪いなぁ」とか、「思ったより発声が小さくて聞き取りにくい」とかを、自分自身で客観的に感じることができるのだ。

5年生の担任である横山千佳先生は、3年生の時から彼女たちの担任だ。ひとりはこの春に、もうひとりはこの2学期に合わせて転校してきたが、残り6人とは3年目の付き合いということになる。互いによく知っているというのは小規模校ならではのメリットだが、変化が乏しいという欠点もある。

昨年の秋にはこの森を舞台にiMovieとClipsを使い、森を舞台にした映画を作った。下の写真は子ども達が小人に扮して、森の切り株に腰かけて話をしている場面。彼女達自身はグリーンバックで撮影し、iMovieで切り株と合成してある。

5人の小人と森の宝
https://youtu.be/YwK2MuQcHto

また、こちらの小学校1年生の『とべ てんとうむし』の朗読もぜひ聞いていただきたい。感情のこもった朗読に感動するはずだ。

(冬だったので)てんとう虫の写真を見ながら読んだのだそうだが、何度もClipsに録音しながら読んで練習し、一番上手に読めたものを提出したのだそうだが、従来だったら「家で10回読んで来なさい」という宿題だったのが、「練習して自分の気に入った録音を提出しなさい」という宿題になることで、多くの子供たちが自分の朗読を聞き直して、感情を込めて読めるように何度も、何度も読むようになったという。

感情を込めて読もうとすることで、通り一遍に読んでいるだけだった従来と比べて、文章内容に対する理解も深まったという。

森の中にはなんと、子ども達自身が作った小屋もある(強度などに関しては、地域の専門の人がちゃんとアドバイスしている)。

『探究的な学び』とは?

伊那市へのiPadの導入に力を尽くしてこられた伊那市教育委員会の足助武彦さんによると、伊那市の教育の中で大切にされているのは、子ども達自身の求めや願いを大切に、自然の中、暮らしの中で課題を見つけ、調べ、考えて答えを見つけ、表現して伝えていく……という『探究的な学び』

気付いたことを調べて、まとめていく中で、斜面に露出している地層について発見が生れるような地域学習のテキスト『御嶽山の火山灰』や、サマーキャンプでの子どもたちの学びの様子を紹介した『大自然の中で解き放て! 君のクリエイティビティ』というApple iBooksが作られたりしている。

御嶽山の火山灰(伊那谷の自然に学ぶ1)
https://books.apple.com/jp/book/御嶽山の火山灰/id928987421

大自然の中で解き放て! 君のクリエイティビティ
https://books.apple.com/jp/book/大自然の中で解き放て-君のクリエイティビティ/id1478734090

先生同士がiPadの活用について学び合う機会が設けられていたりもしている。アップルのサイトでは、『iPadの授業ガイド』という項も設けられており、どの授業でどんなアプリを、どのように活用していけばいいかなども掲載されている。

森の中での子ども達のクリエイティブで自由な学びは、こうした先生方に支えられて、日々進化を続けている。

これら、学校へのiPadの導入については、アップルのウェブサイトにも詳しい情報が提供されている。
https://www.apple.com/jp/education/giga/?fbclid=IwAR3B8hhkUyeZt_M0VtWeuLJVAoXJ4T9l-mdIjgXglH7x3f72ZQbeLv16BlA

(村上タクタ)

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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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