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過去と決別した新世代MacBook Air M2は、新たな礎石になる【実機レポ】

第2世代のApple SiliconであるM2搭載。そして、過去のMacBook Airの歴史から完全に決別したシンプルなニューフォルム。WWDC 2022の基調講演でアップルが発表したMacBook Air M2は、大ブームを巻き起こした旧MacBook Airの後を継ぐスタンダードモデルになれるのだろうか?

M1の時は心臓部を入れ替え、M2では外観を一新

ウワサされていたMacBook Airの新世代モデルがWWDCの熱狂の中で発表された。思えば、屋外で発表された最初のMacかもしれない(笑)

アップルは多数派コンシューマーの慎重なユーザー心理というのをよく分かっていて、アーキテクチャー、フォルム、OSのすべてを一度に変えてしまうことはしない。これほど巨大な市場を持つ製品を買う『一般の人』は、我々のような新しいモノ好きとは違って、慎重に買い替えるものなのだ。となると、エンジンもシャシーも変わってしまったような状態は好まれない。

というわけで、インテルCPUからM1への移行は、まるで心臓の入れ替え手術のように、まったく同じ外見、OSのまま、チップセットだけまったく違うものを積むという手品が行われた。心臓部であるチップセットの仕組みがまったく違うのに、何の違和感もなく使えて、数倍のパフォーマンスを得られたというのは奇跡のような話だ。

次なるはこのMacBook Airを皮切りにM2が搭載されていく。M1がM1 Pro、M1 Max、M1 Ultraとコア数を増やして性能を確保していったように、M2もこれをベースにコア数を増やして上位モデルに積むという戦略が採られるはずだ。つまりM2の性能はとても大事ということになる。

14年使ったAirの特徴『ウェッジシェイプ』からフラットに

そこで、今回M2への移行では、外観の変更が行われた。

初代MacBook Airといえば、古いファンならご存知、14年前、2008年にスティーブ・ジョブズが事務用の茶封筒から取り出して薄さを表現したモデル。

その特徴が、滑らかなくさび型のウェッジシェイプだ。ウェッジシェイプは持ちやすく、親しみやすかった。『スタバでMacBook Air』が流行になるほど、多くの人に受け入れられるモデルだったのだ。

そのウェッジシェイプを捨ててのモデルチェンジだ。これはMacBook Air始まって以来の大変更といえるだろう。

手にした感想としては、やはり薄さと軽さが際立つ感じがする。しかし、手に馴染む親しみやすさ、バッグに滑り込ませる時の快適さは旧MacBook Airの方があったと思う。「やっぱり、あのカタチこそMacBook Airの魅力」という意見を持つ人がいてもおかしくないだろう。

重さは1.29kgから1.24kgへと50g軽くなった。おそらく内部構造的には、スクエアな構造の方がベッタリと大きなバッテリーを入れられて効率が良かったりもするのだろう(従来のMacBook Airは複数のサイズのバッテリーを寄せ木細工のように詰め込んでいた)。

従来モデルより、軽量、高性能で、シャープな感じがするようになった。

切削ロゴは入らず、ネジはたった4本に

裏面にはMacBook Proのように『MacBook Air』と切削加工が入っているのかと心配した(筆者はあのデザインはToo Muchだと思っている)が、加工は施されていなかった。良かった。

裏の足はMacBook Pro 14/16と同じ、アルミ切削部分が出っ張ったタイプ。これも内部構造をフラットにするためだろう。ネジは四隅だけ。従来のMacBook Airは10本のネジを使っているし、現行MacBook Pro 14/16も8本だ。4本だけでいいというのは、構造的に何か工夫があるのかもしれない。

MagSafeを採用、Thunderboltポートが有効に使える

ポートで特徴的なのは、MagSafe アダプターの採用。これにより、Thunderbolt / USB 4ポートを2つともストレージの接続などに使えるようになった。ストレージからストレージへのコピーが、電源供給したまま可能になる。できればSDカードスロットも欲しかったところだが……そこはシンプルな構造を選んだということだろうか。

MagSafeの電源ケーブルは4色のボディカラー(後述)同色のものが同梱される。USB-C側のコネクターは唐突に白い。スタッフの方に聞くと、そこは電源アダプターの方に合わせてあるのだという。なるほど。

ちなみに、8コアGPUの一番安いモデルには従来同様の30W USB-Cアダプターが付属する。それ以上のモデルを選んだ場合には、デュアルUSB-Cポート搭載35Wコンパクト電源アダプターが付属する。また、オプションの67W USB-C電源アダプター(MacBook ProのM1 Proタイプに付属するもの)を使うと30分で50%を充電する高速充電に対応。

このアダプター、機能は魅力的だが、隣のコンセントを覆ってしまいそうな幅広のデザインや、指の凹みなど、最近のアップル製品に時折現れるToo Muchなデザインを感じる。シンプルでいいのに。でも、ブレード部分が折り畳めるのは持ち運びに便利でありがたい。

実はキートップがわずかに凹んでいる

どこにも記述がないが、従来のアップル製品と違って、キートップが少し凹んでいる。これはToo Muchというよりは、ユーザーの使い勝手に少し歩み寄ったようで嬉しい。身勝手な私見ばかりで申し訳ないが(笑)

Special Thanks to 弓月ひろみさん!

打鍵感はMacBook Pro14/16に近い、バタフライキーボードより少し沈み込みの深いタイプ。こちらの方が好ましいという人が多いだろう。

ディスプレイは若干(おそらくFaceTimeカメラの分)縦寸が64ピクセル伸びて、2560×1664ピクセルの13.6インチディスプレイとなった。Liquid Retinaディスプレイを採用し、ディスプレイ輝度は400から500ニトに向上した。

ボディカラーは暗い方から、ミッドナイト、スペースグレー、スターライト、シルバーの4色。ミッドナイトは光の加減によっては少し青味がかってみえる。スペースグレイはMacBook Proなどでお馴染みの色。スターライトも最近アップルが好んで使うゴールドとシルバーの中間のような色。

今後の全Macの性能に影響する、基本のM2

たいへん後回しになったが、チップセットの性能について語ろう。M2のお話だ。

Apple Silicon Macの最大の特徴はファンレスであるということだ。

Apple Siliconは、iPhone 搭載のAシリーズチップにルーツを持つから、非常に省電力で発熱が少ない。その特徴を最大限に活かしたのがMacBook Airだといえるだろう。

ファンの音はしないし、熱として無駄になるエネルギーもない。

その効率の良さこそが、MacBook AirがMacBook Airたる所以なのだ。

M2は第2世代のApple Silicon。8コアのCPU、8〜10コアのGPU、8、16GB、24GBを選択できるユニファイドメモリー、256GB、512GB、1TB、2TBを選択できるSSDを搭載する。

CPUで18%、GPUで35%

M2は第2世代の5nmプロセスの技術で生産される。チップセットの基本的な性能は、前モデルのM1に対して、CPUで18%、GPUで35%、ニューラルエンジンで40%、メモリー帯域が50%大きい。

このスペックアップは、M2 Pro、M2 Max、M2 Ultraというようなチップセットが出た時にも、同じように効いてくるはずだから重要なポイントだ。

逆に、そのぐらいの性能アップであるから、M2よりもM1 ProやM1 Maxの方が高性能ではある。M1 ProやMaxのMacBook Proを買うべき人は、M2 MacBook Airで迷わずにProを買うべきだろう。


完全に静かで、高性能、文字通りCoolなマシン

円安の関係で、今回のMacBook Air M2は、日本で買うとかなり高く感じるはずだ。以前にも書いたがMacBook Air M1は1ドル=104円換算で設定されていた。それに対して、今回のMacBook Air M2は1ドル=125円換算となっている。それは高くなるはずだ。もっとも、当分こういう価格帯で推移していくことになりそうだが。

そこも含めて考えると、新MacBook Airは、薄くて、高性能で、ちょっと高価なマシン……という位置づけになりそうだ。とにかく、軽くてスマートなマシンが欲しい! という人が買うマシンということになる。

安さやコスパを求めるなら、MacBook Air M1を買ってもいいと思う。上記のように、CPUで18%、GPUで35%の差だから価格なりの違い……ということもできると思う。逆に純粋に高性能が欲しいのなら、M1 Pro/Max搭載のMacBook Pro 14/16がお勧めということになる。

完全に静かで、高性能、文字通りCoolなマシンとして、MacBook Air M2が新しい時代を牽引していくことに間違いはない。歴史あるカタチからの決別、M2搭載と、意義の大きなマシンだ。

この記事を書いた人
村上タクタ
この記事を書いた人

村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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