シンガーとDJとダンサーが終結した〝日本初のダンス&ボーカルグループ〟
音楽業界がまだバブル期にあった1990年代半ば、小室哲哉の生み出すTKサウンドが日本中を席巻した。サブスクと多様化が当たり前となった今思えば、それは本当に度を超えた一大ブーム。当時はやっかみ半分に、それらを〝消費される音〟とみなす向きもあった。遠い将来、愛される懐メロになりうるか? その命題に「YES」と即答できる人も少なかった。ところが今、TKサウンドの輝きは、あの頃の若者たちだけでなく、第二、第三世代をも魅了している。
その流れをけん引するのが、昨年30周年を迎えたTRFだ。この2月18日に行われる25年ぶりの武道館公演も、早々とソールドアウト。国民的ヒット曲を通じ、過去と未来が笑顔で出会い、踊る、伝説の一夜となることは間違いない。それもこれも、TRFのメンバー全員が歩みを止めずにいたからこそ。駆け足になるが、ここでは、そんな彼らの歴史と魅力を紹介していきたい。
TRFは、いわゆる美しい出会いのストーリーがあって生まれたグループではない。90年代初頭、すでにそれぞれの道でエンターテイメント界のプロを目指していた5人は、別々の経緯で一方的に小室哲哉(以下、TK)に見初められ、突然意味もわからず集められた。SAM、CHIHARU、ETSUは、ETSU&CHIHARUのインタビューで語られている経緯で。ストリートで踊る姿がTKの目に止まったYU–KIは、後に「小室さんは私の歌う姿を見てないんですよ」と語っているし、DJ KOOに至っては、「知り合いのDJからの声がけがきっかけで、小室さんから直接誘われてすらいない」とも。
すべての発端は、ロンドンでレイヴに衝撃を受け、その可能性を日本で試したいと思ったTKにある。だから、TK RAVE FACTORY(当時の略はtrf)。いわばプロダクションシステムのなかで〝作られた〟グループだった。
謳い文句は、〝日本初のダンス&ボーカルグループ〟。シンガーとDJとダンサーという編成は、斬新すぎて誰もが首を傾げた。が、カラオケとダンスカルチャーを結ぶというドメスティックな方向にTKが舵を切るや、TRFはミリオンセラーを連発。フロントに立つYU–KIは想像を絶するプレッシャーと闘いつつDJ KOOと共に怒涛のレコーディングに、SAM、CHIHARU、ETSUは、次々くる新曲の振付けに明け暮れた。各自の役割に徹した5人は、お互いをよく知る暇もないまま、まさに「Overnight Sensation~時代はあなたに委ねてる~」を体現するかの如く20世紀最後にきた夢の時代を駆け抜けた。それがきっかけで、日本のダンスカルチャーが醸成されたと言っても過言ではない。
ストリート文化としてのダンスが日本で注目され出したのは、ヒップホップの黎明期を描いた82年の映画『ワイルド・スタイル』から。その後、MTVの隆盛とともにマイケル・ジャクソンがメインストリームのショービズ最大の要素としてダンスを位置づけ、観るだけでは飽き足らなくなった人々が自ら踊り出した。そうやってダンス人口が著しく増えた頃にTRFは現れ、期せずしてダンスを市井の人々にわかりやすく教示する役割を担う。
そこでできた下地が育ち、2012年には中学校でダンスが必修化。今や日本中の学校の部活で、十代がダンスに夢中になる姿が目撃できる。ダンスカルチャーへのTRFの貢献を思うと実に感慨深い。
好きなことで〝個〟が輝いていれば、絆はいつでもキュッと結び直せる
一方、21世紀の訪れとともに音楽環境は一変。TRFの活動の場は減少した。a-nationの出演リストからも当初彼らは外されていたという。ETSU&CHIHARUのインタビューでのCHIHARUのこの証言には、内情をよく知るDJ BLUEも驚きを隠せないほど。そんな現実に焦燥感を募らせた5人だったが、それでも恬淡と〝個〟がやるべきことに勤しんだ。
結果、ご存知のとおりDJ KOOはバラエティでも八面六臂の大活躍。YU-KIはミュージカルや声優としてもキャリアを積み、昔以上に奥行きと艶のある歌声を手にしている。SAM、CHIHARU、ETSUは、裏方としてライブの演出や後進の育成に邁進。『EZ DO DANCERCIZE』というエクササイズビデオもヒットさせ、最近では、さらに進化させた『リバイバルダンス』などで高齢者の健康寿命アップにも貢献している。
そんな〝個〟の活動も忙しい彼らだが、周年などの活動期には、「いざTRF!」とばかりに集結する。好きなことで〝個〟が輝いていれば、絆はいつでもキュッと結び直せる。そんな信念を彼らは常に共有して、心地よい距離を保ち、互いへの敬意を忘れない。「気負いなく、やれる場所があるならとTRFを続けてきたから、個々の活動も、矛盾も無理もなくやってこられた」とSAMは言う。もはやTRFは、道を極めるプロフェッショナルたちの拠り所と言えないこともない。TKの勘で〝作られた〟TRFが、今や〝好き〟をつなぎ、〝継続〟を象徴する家族のような存在に。始まりはどうであれ、ストーリーは継続のなかで紡がれ、そして、それこそが美しいとつくづく思う。
TKの審美眼も確かなら、選ばれしこの5人もやはり只者ではなかった。〝卒業〟でグループを存続させるのが当たり前の今、脱退も解散もなくきたTRFは奇跡以外の何ものでもないだろう。デビュー30周年スペシャル記念盤『TRF 30th Anniversary past and future Premium Edition』で、ぜひその魅力とメンバーそれぞれの〝好き〟に触れてみてほしい。
ジャケットのアートワークを手がけたのはイラストレーターYOICHIRO ANDO
LOUIS VUITTONやCOACHをはじめとするハイファッションブランドや、HYDE、GLAY、LiSAなどアーティストのライブペインティングを制作。夏フェスのサマーソニックではミューラルアートを通年にわたり担当。アニメ『東京リベンジャーズ』のグラフィティデザインを務めている気鋭のデザイナー。
TRF30年間の集大成であり、新たな作品!
昭和カルチャー倶楽部で購入すると、さらなる限定特典のチャンスも!
購入はこちらから!!
※応募締め切り:2月25日(日)23:59
https://showa-club.com/pages/2024-trf-30
今回の30周年記念盤は、従来のベスト盤的な作品にとどまらず、TRFメンバーが大切にしてきた人生のテーマでもある“好きを極める”を軸に歌、ダンス、DJ、それぞれの魅力を詰め込んだスペシャルな記念企画盤となっている。今回初収録となる、YU-KIセレクトによる歌い直し、リアレンジ曲、DJ KOOミックス、ダンサークリップ、ライブ映像、テレビ映像がふんだんに盛り込まれた内容だからこそ、価値の高い作品と自信をもって言える。11年ぶりの新パッケージデザイン(クリアケース・プレミアムアートジャケット仕様)となっている点にも注目してほしい。すべてにおいてコンセプチュアルな記念盤として間もなくリリースされる!!
TRF 30th Anniversary “past and future”Premium Edition
[DISK収録内容]
CD1|TRF Special Tracks
★ボーカルYU-KIセレクトによる歌い直し、リアレンジ数曲を初収録
CD2|TRF Non Stop Remix Trax
★YouTube(KOOTUBE)で115万再生されてるTRF DANCE MIX音源を初CD化
★単曲ボーナストラック『Impression of trf 2023』オリジナル音源初収録
CD3|TRF Tribute Non Stop Mix
★20周年トリビュート3作品を1枚のノンストップミックスにした初企画、初収録
BD1|2023.02.25 at Zepp Haneda(TOKYO)TRF 30th Anniversary Live『THANXXX!!! Live & Party 2023~』
★チケット争奪戦となった30周年イヤースタートライブを全編初収録
BD2|TRF Music Video Clips
★TRFのオリジナルMVをHD映像へアップコンバートして初Blu-ray化
★ダンサー(SAM、CHIHARU、ETSU)がセレクトしたMVクリップを収録
BD3|TRF Special Contents
★TRF特番(NHK)本編ノーカット初収録
★TRF特番(NHK)再編集したメイキングなどを追加収録
★ダンサー(SAM、CHIHARU、ETSU)がセレクトしたライブクリップを収録
3月20日発売
6DISCS (3CD+3Blu–ray)
初回生産限定盤
クリアケース・スペシャルアートジャケット仕様
3万3,000円
①特製Tシャツ(サイズXL)
②特製ブックレット
(Zepp Hanedaライブフォト)
③スペシャルアートジャケット
④スペシャルクリアケース仕様
⑤特製ステッカーシート(ジャケットデザイン、TRFロゴ、30周年ロゴ)
⑥特製クリアチケットホルダー
詳しくはTRF30周年特設ページをチェック!
https://trf.avexnet.or.jp/trf30th/
※商品のデザイン及びサイズはイメージです。実際の商品と若干の違いがある場合があります。予めご了承ください。
(出典/「昭和50年男 2024年3月号 Vol.027」)
文:藤井美保
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