大友康平が教えてくれたビートルズの魅力【ビートルズのことを考えない日は一日もなかったVOL.5】

1980年10月から文化放送で『ザ・ビートルズ』というラジオ番組が始まった。土曜11時半からの30分番組。どういう経緯でこの番組を聞くようになったのか、はっきりと覚えていないが、きっと新聞のラテ欄で見つけてダイヤルを合わせたのだろう。この少し前から、深夜放送を聴くようになり、特に土曜日は深い時間まで起きていられるということで、『所ジョージの足かけ二日大進撃』から『鶴光のオールナイトニッポン』に移行するのがお決まりのパターンだった。その前の時間帯に『ザ・ビートルズ』が加わった。

土曜夜11時半から放送の明治製菓提供のビートルズ番組

番組テーマはホリーリッジ・ストリングス「抱きしめたい」。『ビートルズ物語』で使用されていた

提供は明治製菓。ちょうどこの時期、五十嵐浩晃の「ペガサスの朝」が明治チョコレートのCMに使われていたことから、番組内でも頻繁に流れており、無意識のうちにインプットされていって、翌年大ヒットに至った際は、ちょっとした優越感に浸った記憶がある。今でも「ペガサスの朝」を聴くと『ザ・ビートルズ』で流れていたラジオCMを思い出す。

番組のパーソナリティを務めていたのはハウンド・ドッグの大友康平。デビュー曲「嵐の金曜日」がリリースされたのがこの年の3月だから、まだ駆け出しの新人の頃。どういう経緯でキャスティングされたのだろうか。ビートルズは好きだけど、そこまで詳しくはないという立ち位置で、トークも初々しく、時折ギャグを入れるけど、ちょっとすべってしまうところに愛嬌があった。そんな気合が空回りしたトークが逆に親近感を覚えた。

同時期にスタートした『セイ・ヤング』もたまに聞くなど、気のいいお兄さんみたいな感じで大友康平が気になりはじめ、ハウンド・ドッグの動向も追うようになる。それから1年半ほど経った頃に「浮気な、パレット・キャット」がヒットしたときは、自分のことのように嬉しい気持ちになった。さらには「ff(フォルティシモ)」で大ブレイクした後の86年に行われた武道館10デイズ公演を観に行ったのもいい思い出だ。

竹内まりやがリクエストした「ノー・リプライ」

竹内まりやがリクエストしていた「ノー・リプライ」

肝心の番組はアルバムごとなど毎回ひとつのテーマで構成され、そのテーマにちなんだ曲が5~6曲流れるというもの。まだ聞いたことのない曲が聴けるとあって、初心者の自分にとって大いに参考になった。第一回の放送では、番組開始を記念して桑田佳祐と竹内まりやからメッセージが届き、それぞれが好きだというビートルズの曲が流れた。前者は「ロッキー・ラクーン」、後者は「ノー・リプライ」。「ロッキー・ラクーン」はこの時に初めて聴いた。竹内まりやは後にビートルズにオマージュを捧げた「マージ―ビートで歌わせて」という曲を作ったが、その中に出てくる一節「64年のレコード、棚にある」は、きっと「ノー・リプライ」が収録された『ビートルズ・フォー・セール』なのではないか。

また、番組のオープニングテーマだった「抱きしめたい」のホリーリッジ・ストリングスバージョンも忘れ難い。イントロのオーケストレーションがとにかく印象的。「抱きしめたい」には多くのカバーバージョンがあるが、このバージョンが白眉。このバージョンが『ビートルズ物語』というレコードの中で使われていたことを知るのはもう少し時間が経ってからのことだ。

81年初頭深夜に放送されたカウントダウン特番

80年末にリリースされた『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』

翌81年4月まで約半年続いたこの番組の思い出は尽きない。その間にはジョンの死去があり、年始には2時間にわたる特番もあった。『ビートルズスペシャル81』というタイトルのこの番組はリスナーから募ったリクエストをカウントダウンで20位から1位まで紹介するというもので、自分以外のファンの人はどういう曲が好きなのかとても興味深かった。

あと、この特番内でリリースされたばかりの『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』が抽選で40名にプレゼントされるというお年玉企画があった。このボックスはビートルズの曲を8枚のレコードに分けてコンパイルされた豪華仕様盤、価格は18,400円ということで、ファンにはなんとも魅力的な商品だったので、自分も必死にリクエストカードを書いた。当選を楽しみにして、テープに録音しながら2時間を完全聴取。残念ながら当選することはなかったが、今でもすごく印象に残っているラジオ番組だ。ちなみに人気投票の1位は「レット・イット・ビー」だった。

この記事を書いた人
竹部吉晃
この記事を書いた人

竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。WEBメディア『昭和MILD(https://showamild.com/)』もよろしくお願いします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

夏を彩るカラーゴールド。「市松」定番の18金シリーズはカラバリ豊富で夏に欠かせないアクセサリー

  • 2026.05.18

湘南に工房を構えるオーダーアクセサリーブランド「市松」。1997年に創業し、その2年後から27年も続く定番の18金シリーズは、カラバリも豊富で、いまや欠かせないブランドの顔だ。プロダクツとしての魅力だけでなく、夏の装いにも重宝する。 「市松」の定番、特別な5色の18金 「酷暑日」という言葉が新たに発...

働くヒトとヴァーグウォッチ。【vol.01靴磨き職人/「Chett」店主・大平雄太さん】

  • 2026.05.21

「Time is Money」=「時は金なり」。自身の仕事に誇りを持ち、日々働く人々は有限な“時間”というものを重んじ、身につけるプロダクトにも徹底的にこだわる。アンティークウォッチの旧きよきディテールを備えながら、手軽かつデイリーに使うことのできるヴァーグウォッチはそんな彼らの心強い相棒となる。 ...

磨き続けた伝統が、新たな定番を生み出していく。「アリゾナフリーダム」の新作に注目

  • 2026.06.03

長く愛される定番には理由がある。そして、その定番を更新し続ける覚悟があるからこそ、プロダクツは生き続ける。今回、紹介する新作は、奇をてらった変化ではなく、受け継がれてきた意匠や職人技を礎にしながら、細部にわたり静かな進化を重ねた美しい作品たち。変わらないために進化し続ける。そこには揺るぎないクラフト...

ロンドン生まれのアイウエアブランド「CUBITTS」が日本に本格上陸! 人気の秘密に迫る。

  • 2026.05.19

英国・ロンドン生まれのアイウエアブランド「キュービッツ」。日本へ本格上陸したばかりでまだ多くを知られていない、その全容を紐解く。 ロンドン生まれ質実剛健な実力派 2013年にロンドンで創業、2025年に日本へ本格上陸を果たした「キュービッツ」。本国では、新鋭ながら圧倒的な知名度を誇り、ビスポークも手...

Pick Up おすすめ記事

落語家たちが洋装に身を包む会、第4弾! 落語会「師匠お似合いですよ」の舞台裏で注目の落語家たちをSNAP!

  • 2026.05.18

アメカジを提案するファッションブランド「ゴールデンベア」が主催する落語会、その名も「師匠お似合いですよ」。弊誌も師匠方のスタイリングを担当。第4回目となる今回も大盛況でした。楽屋裏で撮影したみなさまの素敵な着こなしをお届けします! 落語家たちが洋装に身を包む会「師匠お似合いですよ」の舞台裏に潜入! ...

アメリカンクラシックの原点「ディグナ クラシック」の[ジミー]なら、カラバリ・仕様も豊富で自分好みの1本が見つかる!

  • 2026.05.21

50sアメリカンスタイルを踏襲した「ディグナ クラシック」の[ジミー]は、シンプルなデザインやクラシックな世界観から多くの人に愛される名作。その人気ゆえ、仕様やカラーのバリエーションが非常に豊富な[ジミー]の全容をいま一度おさらいする。 955E“Jimmy”とはどんなメガネ? 1950年代にアメリ...

日本人に最適化された新作の“JAPAN LIMITED”に注目!「MOSCOT」現代に引き継がれるアメリカンクラシックのDNA

  • 2026.05.20

1915年にNYで創業し、アイウエアデザインの王道を形づくった「モスコット」。多様なデザインで溢れるいまこそ、伝統に裏打ちされたクラシックな佇まいに惹かれる。 新作の“JAPAN LIMITED”のラインナップを紹介! 2016年よりスタートした“JAPAN LIMITED”は、インラインにはないノ...

夏を彩るカラーゴールド。「市松」定番の18金シリーズはカラバリ豊富で夏に欠かせないアクセサリー

  • 2026.05.18

湘南に工房を構えるオーダーアクセサリーブランド「市松」。1997年に創業し、その2年後から27年も続く定番の18金シリーズは、カラバリも豊富で、いまや欠かせないブランドの顔だ。プロダクツとしての魅力だけでなく、夏の装いにも重宝する。 「市松」の定番、特別な5色の18金 「酷暑日」という言葉が新たに発...

アイヴァン史上初の完全復刻。“ヒストリック コレクション”誕生の裏側に迫る!

  • 2026.05.22

「アイヴァン」2026年春夏の新コレクションとして突如発表された“ヒストリック コレクション”。これまでにもアーカイブを現代に甦らせる試みは幾度か行われてきたものの、どれも細やかなアップデートが施されていた。文字通りの“完全復刻”は今回が初となる。 アイヴァンには立ち返るべき原点がある どこぞのヴィ...