日本のカジュアルシーンを変えた、レプリカスウェットの生みの親。

日本のファッションシーンがヴィンテージレプリカジーンズで染まり始めた1990年代初頭。いち早くヴィンテージスウェットのレプリカ制作に着手したフェローズ代表の志村さん。現在も定番としてスウェットを作り続けているが、当然、過去の苦難があってこそのプロダクツなのだ。

「フェローズ」代表・志村昌洋さん|1991年にフェローズを設立。デザイナーであり、イラストレーターとしての肩書きを持ち、毎コレクションでのグラフィックなども自ら描き下ろす。

作るよりヴィンテージのほうが安かった時代。

「最初にスウェットを作ったのは1988年。両VとWフェイスのパーカでした。当時、ヴィンテージのジャンルとしてさほど確立されていなかったこともあり、レプリカとして作ったスウェットよりヴィンテージのほうが安く買えた時代。当然、売れ残ってしまったんですが、その在庫を抱えて全国行脚で売り歩き、その資金を元手にフェローズを立ち上げたといっても過言ではないブランドにとって重要なアイテムのひとつです」

先見の明とはこのことで1990年代に入り、この頃からヴィンテージスウェットの価値が徐々に認知され始め、それが追い風となったことは言わずもがな。もちろん作り手としては決して良い思い出ではないが、同時期にフェローズが手掛けたL2‒A、MA‒1が爆発的に売り上げていたことも助太刀し、再びスウェットを作ると、チノパンとともに瞬く間に人気アイテムに。同時に趣味で始めた服屋から一気にアパレルブランドとして成長するターニングポイントとなったという。

「両V、スリーブの形、ハリ抜きリブなど、ヴィンテージのディテールを踏襲したオリジナルアイテムにこだわりすぎて無謀なことをしてしまった過去の経験があってこそ、ビジネスに転換できる服作りを考えることができた良いきっかけになりました。これはフェローズのものづくりに関して共通しているのですが、最終的にはプライス、パターン、デザインのうちどれも欠けてはいけなくて、そのバランスが重要なんですよね」

左上は初期のカットソーに下げられていた紙タグ。

Wフェイスの後付けパーカは1980年代後半に志村氏が初めて作ったもので、当時の雑誌で使われた切り抜き。

フェローズ設立後、最初のスウェットに付けられていた赤刺繍のブランドタグ。フロントにブランドロゴが染み込みブリントされた定番モデルはこの頃から存在する。

カフスのV字リブは現在のフェローズのスウェットにも採用されたデザイン。80年以上も前に作られたスウェットだが、しっかりとした丁寧な作りが窺える。

1940年代頃の両Vフリーダムスリーブのスウェット。両Vやスリーブとリブの配色、経年変化による褪色など、シンプルなデザインの中にもヴィンテージらしさが溢れた1枚。

タグからフェローズのスウェットの歴史を辿る。

ブランド設立後、比較的初期の段階でオリジナルスウェットを製作していたフェローズ。単色赤刺繍タグに始まり、これまで使用してきたブランドタグは約30年の歴史の中で7種。サイズ表記やロゴ、タグ自体のサイズなど使われた年によって異なるのも興味深い。左上から、1991年~、1994年~、2000年~、2010年~、2015年~、2017年~、2020年~

(出典/「Lightning 2025年4月号 Vol.372」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...

HISTORY OF B.V.D. 着心地を追求した150年

  • 2026.10.20

1876年、ニューヨークで誕生したB.V.D.。風を通すゆったりとした肌着から、水着、街や休日を彩るシャツまで。その歩みを貫くのは、日々を心地よく過ごすための工夫だ。時代ごとの広告や製品を手がかりに、着心地を追求してきた150年をたどる。 HISTORY OF B.V.D. 1876年 ニューヨーク...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

メイド・イン・ノーサンプトンを貫く英国靴の筆頭「Crockett & Jones」のモノづくり

  • 2026.10.21

革靴の聖地であるノーサンプトンにて1879年に初声をあげた〈クロケット&ジョーンズ〉。英国靴を語る上で欠かすことのできない同ブランドのモノづくりの現場に足を運んだ。 一足の革靴に宿る147年の歴史と誇り 革靴産業の一大拠点として名を馳せる英国・ノーサンプトン。中世から靴職人が集まり、17世紀には軍用...

Pick Up おすすめ記事

19世紀から英国紳士に愛され続ける世界最高峰のハンドメイド傘

  • 2026.10.19

年間を通じて降水頻度が高い英国において傘は必需品。ひいては英国紳士を象徴するプロダクトのひとつだ。その中でも、旧くから英国王室や上流階級の紳士たちに愛されてきたFOX UMBRELLAS(フォックス アンブレラズ)は最上級の存在である。 手作業から生まれる圧倒的な造形美 真のトラッド好きは服だけでな...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

遊び心とヘビーデューティ! 「ジムマスター」のアウトドア&ミリタリー

  • 2026.10.18

ほどよく力の抜けたカジュアルウエアを展開するカナダ生まれの「ジムマスター」。その真骨頂は、実は骨太なアウトドア&ミリタリーにある。ヘビーデューティな機能美を日常着へと昇華させる秘訣は、「ジムマスター」らしいほんのすこしの遊び心! カラフルな配色の裏に確かな実用性あり! 【右】主役は厚手のボアジャケッ...

原毛から生地まで。一貫生産を守る英国生地の名門「ムーン」とは?

  • 2026.10.19

服を突き詰めていくと辿り着くのが生地。トラッド好きなら一度は耳にしたことがあるであろう英国の名門が「ムーン」だ。羊毛から紡績、染色、織布を一貫して行う英国最後の生地メーカーが誇る伝統のモノづくりに迫る。(写真は、生地の製造において重要な“織り”の工程。タテ糸とヨコ糸をゆっくりと交差させ、チェック柄が...