シュガーケーンのスーパーヴィンテージ復刻シリーズ第二弾! 1942MODELとS1945MODELどちらを選ぶ?

昨年に待望の第二弾ローンチが発表され、ライトニング本誌でもその詳細を伝えてきたシュガーケーンの“SCSC”プロジェクト。今号では、甲乙つけがたい1942年前期と1945年後期モデル2つのモデルのディテールを比較する。

大戦の最初期モデルと最後期モデルを比較。

(1945年後期モデル)4万9500円
(1942年前期モデル)5万2800円

これまでライトニング本誌にて3度にわたり掘り下げてきたシュガーケーンのスーパーヴィンテージ復刻企画、SCSC第二弾。1942年前期モデルのパンツと、1945年後期モデルのパンツ、いずれもヴィンテージの完全再現を試みており、そのこだわりは精緻かつ微差ではあるものの、今回はあえて両者を比較。発売を前に、購入の検討材料となれば幸いだ。

「1942年モデルと1945年モデルは言うなれば、大戦の最初期と最後期に展開された個体。ヴィンテージ好きの方はすでにご存じかとは思いますが、大戦による合理化の影響もあって、全体的に1945年モデルのほうが粗雑な作りである側面が多いです」

「シュガーケーン」企画統括・福富雄一さん|パタンナーとしての経歴を持ち、企画の統括のみならず自らサンプルを製作して改良を重ねる。ディテールからパターンに至るまでヴィンテージの再現を追求する職人。

写真の左が「S1945モデル」で、右が「1942モデル」だ。ディテールの違いを見ていこう。

フラッシャーのデザインや形状が変化。ギャランティチケットの“COPPER RIVETED”表記は、リベットが銅から鉄製に変更されたことに伴い“ORIGINAL RIVETED”となる。

いずれも酸化によって経年したボタンを再現しているが、1945年のほうがより質感が鈍い。トップボタン周辺のステッチワークも、1945年は大戦期らしい粗野な印象。

両モデルのデニム生地を比較。1945年のほうがムラ感やネップ感が強い大戦期ならではの荒々しいデニム。緯糸も1942年は白っぽいが1945年は生成りに近い。

ミミに使用されているステッチに注目。1942年のほうが赤みが濃く番手が細い。対して1945年は赤みが薄く番手が太い。わずかな差異にも徹底的にこだわっている。

細かな差異で比較する両モデルそれぞれの魅力。

「1945年のほうが大戦期らしい粗い生地を使用しています。1942年も粗いことには変わりないですが、1945年と比較すると落ち着いた印象です。ステッチワークも、1942年に比べて1945年のほうが歪みが多く、ステッチのピッチも全体的に194
5年のほうが粗いです。それ以外のディテールに関しては大差ないように見えるかもしれませんが、今回比較しているとおり、細かく異なっています。

同じロットナンバーで、製造時期も3年しか変わらないのに、ここまでディテールに差が出るのは、大戦モデル最大の魅力です。作り手として、『1945年のほうが粗雑な作りの再現に苦労したのでは?』と尋ねられることもありますが、1942年も決して丁寧とは言えませんし、絶妙なニュアンスの再現に関しては両モデルとも苦労しました。

また、1942年モデルは黒バックルの質感を完璧に近づけるため4回もサンプルを作り直しましたし、1945年モデルは、元にしたヴィンテージに米綿らしからぬしっとりとした質感があって、その再現が難しかったです。どちらがより手がかかったかと言えば……、決められません(笑)」

魅力的な個性がぶつかり合う両モデル。甲乙つけがたいのは百も承知で、あえて聞こう。あなたはどちらを選ぶ?

同じロットナンバーでも3年で大きな差が生じる。

フロントボタン裏のタック。1942年は銅メッキのフィニッシュで、1945年は鉄製のニッケルフィニッシュ。生地の端の処理も、1945年のほうが粗い。

シャトル織機で織ったスレーキには、青いインクでスタンプが押される。スタンプの内容や位置にいたるまでそれぞれのヴィンテージを踏襲している。

1945年モデルの革パッチには、Simplified(=簡素化)の“S”だけでなく、世界に2本しかない希少なヴィンテージから再現した“A” の文字が入る。

ヒップポケットは、1942年はオレンジ&イエロー、1945年はイエローのみと、ステッチの色や形状も異なる。ベルトループのステッチ幅の差にも注目。

1942年モデルはパーツが制限される直前の個体のため股リベットが付く。比翼のステッチのカーブ具合も、両モデルで微差があることが見て取れる。

セルビッジを使用した1942年のコインポケットに比べ、1945年は裁断もステッチも粗雑な印象。バンド付けのミシンのピッチも1942年のほうが細かい。

【問い合わせ】
シュガーケーン(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321 www.sugarcane.jp

(出典/「Lightning 2025年3月号 Vol.371」)

この記事を書いた人
パピー高野
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パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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