ライダース以外も知ってる? 今更聞けない革ジャン(レザージャケット)の主な種類と、意外と知らない細かな特徴。

レザープロダクツのなかでも代表的なアイテムといえるレザージャケット。これらの各ディテールの名称や基本的な型やデザインは、レザー好きとしてはまずは知っておきたい必修科目。どれも欧米のレザーウエア文化の発展とともに生まれた歴史的なデザインがそのルーツとなっていることも興味深い。ここでは基本的なレザージャケットのスタイルからそのディテールを総ざらいしてみよう。

1.ライダースジャケット

バイクライディングに特化した機能を持つジャケット。転倒時のプロテクション効果のあるディテールや、スピードや風雨から身を守るための機能などが搭載されている機能的なデザインがベースになっている。また、襟やフロントの合わせの形状でシングルとダブルに分類される。

本来は装備品を固定したり階級章を付ける目的で装備されるエポレットはライダースジャケットでは飾りで付けられているため、エポレットを装備しないタイプも存在する。

転倒時に身体を守ってくれるように肩や肘にパッドがデザインされるタイプも珍しくない。カラダをむき出しで乗るバイク乗りならではのディテール。極限のスピードを競うレース用のライダースジャケットではパッドは必須になる。

肉厚なレザーのために動きやすく可動域を確保するためにアクションプリーツがデザインされる場合が多い。

D型のフロントポケット、通称Dポケットは1940〜1950年代のアメリカのライダースジャケットによく見られたディテール。地図やタバコを入れ、ライディング時にも取り出しやすいように考案されたデザイン。ポケットの中身が出ないようにジッパー式ポケットになっているのもバイクに乗ることを想定した仕様になっている。

ライダースジャケットの代表的なデザインはこの5つ。

1.ダブルライダース/アメリカンタイプ

大きな襟とダブルブレストの仕様が特徴。アビエイタージャケット(飛行服)にルーツを持ち、風で襟がばたつかないようにスナップボタンで固定できる仕様が独特。ロックンロールのミュージシャン
などと結びつくことで、一般的なファッションアイテムとして発展した。

2.ダブルライダース/ブリティッシュタイプ

英国で生まれ、現地のライダーたちのカルチャーを反映することで育っていったライダースジャケット。アメリカ生まれのダブルのライダースジャケットよりもタイトな作りで、前傾姿勢で乗ることを念頭にしたパターンが特徴。サイドからフロントに向いたアジャスターベルトやボールチェーンなども英国式によく見られる。

3.シングルライダース/スタンドカラー

レース用のモーターサイクルスーツのツナギの上半身部分を独立させたことにルーツがあるといわれているシンプルなスタイル。小さなスタンドカラーはヘルメットを装着しても邪魔にならないように設計したため。シンプルながらレーシーな雰囲気が特徴。カフェレーサージャケットとも呼ばれる。

4.シングルライダース/襟付き

襟があることでカジュアルな雰囲気になる襟付きシングルタイプ。襟が付くことで競技用ユニフォームというイメージが薄くなるので、普段のコーディネイトにも比較的取り入れやすく、革ジャン初心者にもおすすめのデザイン。

5.シングルライダース/オフセット

ライディング時の防寒性を高めるためのフロントの大きな合わせと、首周りのストレスが少ないスタンドカラーを併せ持つハイブリッド型。英国製ライダースジャケットによく見られるデザイン。

2.スポーツジャケット

1930年代にアメリカではハンティングや野外作業用などのアウトドア用レザージャケットが数多く誕生した。いわゆるワークやスポーツのカテゴリーで生まれた機能服で、その総称としてスポーツジャケットと呼ばれる。

ジッパー式のライダースジャケットの袖口とは違い、スポーツジャケットにはカフスがデザインされることが多く、カジュアルなジャケットに近いデザイン。リブを装備するタイプも存在する。

グローブをしたままでも開閉がしやすいように大きなスライダーを持つジッパーがポケットに装備されることが多いのはライダースジャケットと共通。戦前のスポーツジャケットにはボールチェーンが装備されることが多かった。

防寒性を高めたいときはチンストラップで首元からの風の侵入を防ぐことができるデザインは当時のワークシャツやチョアジャケットとも共通した仕様。ワークウエアをルーツに持つジャケットだということがわかる。

スポーツジャケットの代表的なデザインはこの4つ。

1.シングルタイプ

エポレットやウエストベルトなどは無く、シンプルなイメージのシングルタイプ。ファッションとしてもシンプルなレザージャケットを好む人におすすめのデザイン。写真のモデルは袖口がカフスでは無くリブ仕様になっている。

2.ダブルタイプ

ダブルライダースのようにも見えるが、エポレットや襟を留めるスナップボタンはなく、袖はカフス仕様になっていたりと、よく見ると違うデザインであることがわかる。防寒性を高めるためにフロントをダブル合わせにしているデザイン。

3.A-1 タイプ

米陸軍航空隊のフライトジャケット[A-1]に似たデザイン。フロントはジッパーではなく、ボタン留めになっているために、よりクラシックな印象になっている。襟の形状にも様々なタイプが存在する。

4.熊ジャン(グリズリージャケット)

ボディ前面と背面、襟にシープムートンを配し、防寒性をさらに高めた仕様になっている熊ジャン(グリズリージャケット)は、スポーツジャケットの最高級モデルとして生まれたデザイン。写真のモデルは袖口やウエストがベルトで調整ができる手の込んだ仕様になっている。

3.フライトジャケット

その名の通り、大空を駆けるパイロットのための飛行服。機能に特化し、無駄を排除したソリッドなデザインが特徴で、乗る機体の飛ぶ高度や仕様によって様々なバリエーションが存在した。また戦争の変化や戦闘機の進化によって、同じようにフライトジャケットもアップデートされ、現在ではレザー製フライトジャケットは存在していないが、かつてのレザー製フライトジャケットをデザインソースとしたファッションアイテムは数多く存在する。

着用時にカチッとした印象になる台襟付きはより軍服らしい威厳を持ったデザイン。台襟が無いモデルも存在し、好みが分かれるところ。

ベンチレーションのために装備されるアイレットはカラダを動かすことが多い戦闘機での使用を前提にしたデザイン。前述したスポーツジャケットにも装備されることが多い。

防寒性とフィット感を高めるためだけでなく、グローブを装着することが多いため、袖口はニットリブになる。

フライトジャケットの代表的なデザインはこの4つ。

1.A-1 タイプ

1927年にアメリカ陸軍航空隊の飛行服として採用されたモデル。ボタン留めのフロントと首元、袖口がリブニットになっているのが特徴になる。

2.A-2タイプ

アメリカ陸軍航空隊のサマーフライトジャケット。1930年代に生まれ、フロントに当時としては革新的なジッパーを採用したレザーフライトジャケットとして登場した。軍服らしくないデザインのため、カジュアルにファッションとしても楽しめる。

3.G-1 タイプ

アメリカ海軍の飛行服として開発された代表的な型。アウターシェルにゴートスキンを採用し、襟に付いたムートンボアがワイルドなムードを演出する。その機能性の高さから長い期間採用されていた名品。

4.B-3 タイプ

高高度を飛行する爆撃機のパイロットやクルーたちに支給されたフライトジャケット。シープシェアリングを贅沢に使用し、防寒性は折り紙付き。そのデザイン性の高さからカジュアルファッションのデザインとして今も多くのレザージャケットのデザインソースとなっている。

(出典/「Lightning 2024年12月号 Vol.368」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

Pick Up おすすめ記事

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...