メンズ誌編集者の散財ダイアリー! ストーリーとロマンを感じる1940年代のヴィンテージ・ミリタリートラウザーズ。

ファッションは新品でも古着でも、さらにはアンティークや、その他ちょっと変わった(本人はいたって普通だと思っている)物欲で、おっさんになっても散財が絶えない編集者であるラーメン小池が送る散財日記。ぶらぶらとネタを求めて街をパトロール(徘徊)しながら、行く先々で出会って手に入れたプロダクツを不定期で紹介していく企画がこれ。今回は古着の定番ともいえるアメリカのミリタリーモノ。しかも1940年代製という代物。こいつがなんだかおもしろい個体だったぞという話。

旧いけど何か違う!? そんなミステリアスなミリタリートラウザーズに出会う。

古着のおもしろさは、それぞれに前の持ち主のストーリーや、時代背景ならでは特徴があったりと、現代の新品にはない独特な味がある。もちろん、時代を経た風合いや、その時代だからこそ作ることができた生地や部材など、今同じモノはなかなか作れないし、誰も作ろうとしないだろうなというアイテムに魅力があると信じている。

なのでヴィンテージ至上主義というわけではなく、古着店に行ったときはそんな視点で物色するので、そこまで年代にこだわらないというのが私の基本。

ふらりと立ち寄った古着店でそんな出会いがあることもあったりもする。で、今回出会ったのはアメリカ陸軍のトラウザーズ。

いかにも時代を経た生地の色褪せてこなれた質感と、適度にダメージがあって、そこを何者かが補修している。さらにおもしろいのは生地がところどころで微妙に褪色具合が違っていて、よく見るとオリーブグリーンの2トーンになっているところも気になった。

といってもこの仕様は初見。「いったい何ですか、これ?」とショップの人に聞くと「一応M-43なんですけどね」と。

M-43とは1940年代にアメリカ陸軍に支給されていたフィールド・トラウザーズだけど、私の記憶を頼りに調べてみると、裾にはボタン式のアジャスターが付き、アウトシームは巻き縫い縫製だったような。

でもこれはアウトシームは脇割り縫製で、裾のアジャスターが無いのである。どうやら脇割り縫製のM-43も存在していたみたい。

ショップの人も「移行期のモノなのか、イレギュラーなのか、裾のアジャスターは前の持ち主に裾上げされて取られちゃった可能性もありますよね。あまりアメリカの人は裾上げしないんですけど。なんせ古着なので細かい詳細は不明なM-43です(笑)」。

だから「一応M-43」ってわけか。ミリタリーの支給品にはイレギュラーや納入コントラクターによって仕様の若干の違いは珍しいことではない。軍が決めた最低限のルールに沿って作られてがいるものの、けっこう良い意味で「適当」に作られていることが多い。なんせ大量に発注→生産という時代だったからね。

しかも支給品そっくりの民生品もあれば、古着は前の持ち主によってカスタムされている個体も存在するからなあと思いながらよく見てみると、ちゃーんと裏には軍の支給品のスタンプが確認できる。

そんないろいろなストーリーを現物を細かく見ながら想像することが実に楽しい。これぞ古着の醍醐味なのではと。

と、ショップのスタッフと盛り上がって買ってしまった。プライスもけっこう穿き込まれているのと「謎」な部分もあったおかげで良心的&サイズも奇跡的にばっちりだったので手に入れることに。古着のおもしろさはこういうところではないかと。

ショップの人と会話で盛り上がるんだから、ある意味これも「ストーリーのある服」なのではないかと思うわけである。そんな「あーだこーだ」を会話しながら手に入れる。やっぱり買い物は対面がいいよねと思うおっさんなのであった。

ただし、現在はデニムの経年変化の実験でほぼ毎日ジーンズを穿いているので、あまり出番は無さそう(笑)。でも出会ったときこそ手に入れるとき。そんな一期一会を古着で楽しむのである。

スタンプは色褪せて判別不能だけど、1行目にTROUSERS, FIELD, CO……と残る。つまりTROUSERS, FIELD, COTTON, O.D.とあったはず。たしかにM-43トラウザーズにあるスタンプである。民生品ではなく、支給品であることは間違いない。ちなみに同時代に両サイドに大きなカーゴポケットを配し、HBT生地でできたM-43カーゴパンツなるものも存在しているのでなんとも紛らわしい。

フロントは尿素ボタンのボタンフライ。サスペンダーボタンも付くのが1940年代という時代を反映している。これが後期型だと13スターが刻印されたメタル製ボタンに変更されるようだ。腰帯の裏とポケットスレーキにはHBT(ヘリンボーンツイル)生地が使われているのも特徴。フロントの前立ても同じ生地だけど色味が違う。

ポケットの縁やウエストのアジャスター、ベルトループなどのパーツは生地の褪色が他よりも激しく薄いオリーブカラーに。同じ生地でロットが違うものが使用されていたのだろうか? 時代を経て経年変化することでその違いが浮き彫りになって2トーンに見えるのがおもしろい。新品のときは同じオリーブカラーだったはず。

アウトシームは巻き縫いではなく脇割り縫製になっている。どちらの仕様も存在していたんだろうな。裾部分は前の持ち主によってリペアされていることが確認できる。本来のM-43には裾に裾幅を調整できるボタン式のアジャスターが付属するはずだけど、この個体には無い。元々無かったのか、リペアのときに取られちゃったのか不明。でも個人的には必要ないのでむしろOK。いわゆるチノパンのように穿くことができる。 

ウエストはアジャスターで微調整が可能。アジャスターやフロントのコインポケットの縁も褪色が違うので2トーンに見える。なんとも不思議でおもしろい。生地自体はかなり褪色が進んでいるけれど、まだまだ普段穿き可能なくらいしっかりとしている。ところどころのリペアも後年になって何者かがやったようで雰囲気があって良いんだよね。

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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