渋谷の老舗珈琲店「茶亭羽當」が昭和・平成・令和の3つの時代を乗り越えたワケ。

  • 2024.04.20

若者文化の最先端をいく街「渋谷」。昭和・平成・令和と時代が進むにつれて様々なモノが変化する中で、変わらないことの大切さを教えてくれたのは「茶亭羽當」だった。変化の激しい渋谷で35年前から変わらず営業している老舗珈琲店を訪れてみた。

長年かけて築いてきた良い信頼関係の大切さ。

入口のドアを開けたときの光景。カウンターは長さ11mもの柾目の松材を用いている。古民家を活かした建築を得意とするマカンボ設計事務所によって造られた

「茶亭羽當」という名はコーヒー好きな方なら一度は聞いたことがあるかもしれない。創業は1989年。まわりの建物が次々と新しくなってゆく中、羽當だけが昔ながらの良さを守り続けている。

ブルーボトルコーヒーの創始者、ジェームズ・フリーマンが絶賛したことで海外でも話題になった羽當。責任者の寺嶋和弥さんは、創業から30年以上も続けてこられたわけを次のように話してくれた。

「すべては人との信頼関係ですね。今までご来店くださる方々、30年以上も変わらずに炭火焙煎をしている焙煎士の方をはじめ、様々な方に支えられてここまでやってこられました。創業当初から店内の雰囲気を変えないのは、今のままを求めてやってきてくださる方が多いから。なので、コーヒーの味もいつも安定していなければならないと考えています。

また、炭火焙煎の高い質を保ち続けているコーヒーさんとは長いおつきあいですね。昔はこちらから多少のお願いをしたのですが、何も言わないほうがうまくいくことも……()。良い信頼関係が続くことを大切にしています」

「茶亭羽當」責任者・寺嶋和弥さん|1967年船橋市生まれ。スワローズのファン歴40年超。バイク好き。お気に入りの豆はスマトラ・マンデリン

羽當創業の話をくれたオーナーの岩浪文明さんから喫茶のすべてを任されたことも、寺嶋さんを信頼してのこと。3つの時代で獲得してきた信頼関係は何にも代えがたい宝物だろう。

豆を補完すブリキの茶筒。豆の量はフタの内側で調整している
トルココーヒーに使う「イブリック」を、再加熱のために使用している

炭火焙煎珈琲 羽當オリジナルブレンド

創業時から店の顔として愛飲されてきた。炭火で焙煎をすると水分がゆっくり抜けるのでコーヒー豆の持つ独特の香りとコクを出すことができる。いつも安定した味を提供すべく、季節や作柄の出来なども考慮し、苦みや酸味のバランスを取りながらブレンドの配合を変えている。

ハンドドリップで丁寧に抽出されたコーヒーは、唐津焼の土の色と絶妙にマッチングしている。カップやソーサーはオーナーの岩浪さんとともに寺嶋さんが買い付けに行くこともしばしば。

ゆっくりと丁寧に注がれるお湯を眺めているだけで癒されてしまう。抽出はペーパードリップ。音楽の流れる静かな空間に、コーヒーのほのかな香りが漂っている。

エージング焙煎「楡(ニレ)」

オールドビーンズとも呼ばれる、生豆の状態で何年も寝かせたものを使用してつくるコーヒーだ。エイジングを重ねると豆の表面にマホガニーほどの濃いツヤが生じる。その光沢がコーヒーの旨味につながってくるのだ。写真の状態ですでにエイジングの香りが漂ってくる

ひとくち含むとエイジングされた豆の香りがすっと広がる。凝縮された味・深いコク・長い余韻などに驚かされることだろう。人気の手作りシフォンケーキの自然な甘さとよく合う(7)

デミタスコーヒーはネルドリップで抽出する。お湯の注ぐスピードなどを調整できるため、こだわりの道具のひとつだ。持ち手が細く、指でつまみやすくなっている。

DATA
茶亭羽當(さていはとう)
住所:東京都渋谷区渋谷1-15-19 二葉ビル2F
連絡先:TEL03-3400-9088
営業時間:11時~2330(L.O.2230)
定休日:無休
駐車場:なし
公式HP:なし
SNS:なし
席数:50
ホールセール:なし
豆販売:少量ならあり(喫茶がメインのため)
豆通販:なし
テイクアウト:なし
デカフェ:なし
ドリップバッグ:なし
セミナー:なし
器具販売:なし

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/別冊Lightning Vol.215「東京コーヒーロースターズ」

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