シボレー・アストロは日本でブームを作ったアメリカ車。新型は? 燃費って? 歴史からおさらい。

日本のクルマ好きの間でもコアな人気を誇るアメリカ車。といっても、そんなアメリカ車にも人気車種やブームを作ったモデルは存在する。いわゆる「市民権を得たアメリカ車」といえばシボレー・アストロがその筆頭かもしれない。日本でもブームを巻き起こした遊べるアメリカ車であるアストロを深掘りしてみる。

アメリカのミニバンブームから生まれ、日本でも成功した数少ないアメリカ車。

現在のクロスオーバーヴィークル全盛のルーツにあったのが、アメリカのミニバンブーム。時代をさかのぼると、ミニバン→SUV→クロスオーバーとユーティリティの高いクルマの歴史は進化していったけれど、その元祖ともいえる1980年代のミニバンブームで登場したのがシボレー・アストロだった。

アメリカのミニバンブームの火付け役といえばクライスラーがダッジブランドから発売したダッジ・キャラバン(同社のプリムスブランドではプリムス・ボイジャー)や、マツダのMPV。これらのモデルはサイドにスライドドアを装備したコンパクトなワゴンボディで、人も荷物も積めるだけでなく、フルサイズカーよりも燃費が良いことで一気に庶民の足(とくにファミリー層)として広まっていった。

そんなミニバンが猛威を振るう世の中でシボレーブランドからの解答がアストロだった。フルサイズバンをコンパクトにしたようなデザイン。あえてスクエアなデザインにすることで、車内の広さを確保し、V8ではなくV6エンジンを主力とすることで、経済性の高さも兼ね備え、1985年に登場した。

兄弟ブランドのGMCからはGMCサファリのモデル名で販売され、一般ユーザーだけでなく、商用車やキャンピングカーのベース車としても普及していった。その歴史を追いながら、アストロの「いろは」を掘り下げてみよう。

1998年のシボレーのバンのラインナップ。向かって右側2台目がアストロ。左に行くほどにボディサイズが大きくなる車種で並んでいる。こう見るとアストロがミニバンカテゴリーであることがよくわかる。Photo by General Motors

第1世代。1985~1994年。コンパクトなボディながら「アメリカ車らしさ」も感じることができた初代。

それまで人気だった他社のミニバンよりも多くの乗車定員を可能にしたモデル(最大8人乗り)として生まれたアストロ。

ボディはサイドウィンドーがあるワゴンタイプと商用車として使用可能なサイドに窓が無いカーゴボディで販売された。さらにスタンダードとエクステンドの2種類のボディが存在した。

1990年式ではアメリカ車のミニバンで初めてAWDモデル(フルタイム4WD)を搭載し、その走破性でも他社のミニバンとの差別化を図っていた。

搭載されるエンジンは2.5L 直4がカーゴモデルにのみ存在し、パッセンジャーモデルは4.3L V6がラインナップ。コンパクトなボディとV8エンジン搭載のフルサイズカーよりも燃費が良いことから、1990年代前半から日本でも正規輸入が始まり、同時に並行輸入モデルも増加していった。

そんなモデルをオーナーたちが思い思いのカスタムをして乗ったことも手伝って、日本でアストロブームと呼ばれる現象が起きたほど人気のアメリカ車になった。

初代アストロは角目2灯で傾斜したフロントマスクを持ったスクエアなフォルム。角張ったデザインは飾らないアメリカ車らしさだけでなく、同時に室内のスペースも広く取れた。メッキのアイアンバンパーを装備しているところもクラシカル。Photo by Buddy Auto

第2世代。1995~2005年。日本のアメリカ車好きにはメジャーなモデル。最終型は2005年式。

フルサイズバンのシボレー・エクスプレスと同様のシボレー・トラックマスクと呼ばれる上下に分割された横長のヘッドライトを持ち、ロングノーズになったフロントマスクへとモデルチェンジした2代目。

ボディはエクステンドボディのみに統一され、搭載されるエンジンも4.3L V6のみの設定になった。

このモデルのころの日本でのブームはさらに大きなものとなっていて、正規輸入も引き続き存在しただけでなく、並行輸入のアストロを専門に販売する個人店なども全国に登場した。

左ハンドルのみという設定と、ミニバンといっても日本車よりも大きなボディだが、フルサイズのアメリカ車よりは取り回しが容易だったことから、初めて乗るアメリカ車としての需要もあったことも人気を底上げした理由のひとつだった。

第2世代にして最終モデルになってしまったアストロ。上下に分割された角目4灯のフロントマスクは他のシボレー系フルサイズカーと共通のデザインになった。またこの世代にはカーゴマスクと呼ばれる角目2灯のフェイスも存在した。写真は1998年式モデル。Photo by General Motors

気になる燃費やコンバージョンモデルの存在も見逃せない。

アストロ人気に拍車をかけたのは、同車をベースにアメリカのサードパーティのメーカーが手を入れたコンバージョンモデルが多数製造されていたこともひとつの理由。

コンバージョンモデルはボディをハイルーフ化したり、室内を豪華な装備に変更、他にはキャンピングカーとしての装備を追加するなど、架装を行うメーカーによって多くの個性を打ち出したスタイルで生まれ、アストロのバリエーションをさらにオーナーのライフスタイルに合わせた仕様にすることで、多くの選択肢を持たせてくれた。

アメリカでメジャーなスタークラフト社のコンバージョンモデルは日本での正規輸入がされるほどで、いかに多くの人がアストロに注目していたかがわかる。

燃費は非公式なデータだが、2005年モデルで、街乗りでリッター約7km、高速道路でリッター約9km。V8エンジンを搭載したフルサイズのアメリカ車にくらべて燃費は良く、大型の輸入車に乗っている人にとってはそれほど気にならない数値だった。

コンバージョンモデルはノーマルには設定の無い装備をアメリカのサードパーティのメーカーが架装、カスタムして販売していた。ハイルーフ化や、豪華な内装、それにキャンパー仕様など、各架装メーカーで個性があった。写真左のアストロのようにポップアップ式のテントを装備するモデルなんかも存在した

2023年現在、新型の情報は無く、中古モデルは一周したのか価格は高騰中。弱点対策済みのモデルを狙いたい。

ここまで日本で人気となったアストロも、ミニバンブームが終わり、SUVブームの登場によって販売台数も減少。2005年モデルでその歴史に幕を下ろすことになり、2024年1月現在では新型の発表もない。

日本でもその覇権はフルサイズのSUVやフルサイズバンに取って代わり、アストロもその役目を終えたモデルになったかと誰もが思っていたところ、ここ最近ではそんなかつてのブームが一周したことと、ヤングタイマーな年式のクルマにスポットが当たっていることで、実はジワジワと中古車が高騰している。確かに今見ると、スクエアでコワモテなイメージは往年のアメリカ車らしくて悪くない。

もちろん人気は最終世代になる2世代目に軍配があがるが、もし狙うのであれば、正規輸入、並行輸入を問わず、最低限でも日本国内に入ってきてからのメンテや修理記録がわかる個体を探したい。

ワイパーモジュールやパワーウィンドーモーター、燃料ポンプやオルタネーターといったパーツはアストロの修理によく出てくる定番箇所。このあたりにしっかりと手が入っている個体に出会いたい。そのなかでも走行距離の少ないモデルを選びたいところ。もしそのあたりの記録が曖昧な場合は上記のパーツの劣化による修理は心しておいた方がいい。

とくにアメリカの中古車はその個体のヒストリーがはっきりとしている個体がおすすめだ。

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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