コーヒースタンドのパイオニアが手掛ける、富ヶ谷のロースタリー。

マイクロロースターが増えてきたのは2010年代初頭からだろうか。焙煎機の規模はそこまで大きなものじゃない。小ロット焙煎量ながらもインディペンデントに活動をする店舗、マイクロロースタリーが近年増えている。目指す味があるから自分でやる。コーヒーの味ならどこにも負けない唯一無二の専門店。コーヒースタンドの先駆け店「リトルナップコーヒースタンド」が2号店となるロースタリーを始めたのは自然な流れだった。小さい店舗だからできることがある。 代表の濱田大介さんがマイクロロースターとしての矜持を語ってくれた。

濱田大介|「リトルナップコー ヒースタンド」「リトルナップ コーヒーロースターズ」代表であり焙煎士。ミュージシャンとの交流も深く自身も音楽活動を行う

店舗を始めるきっかけはレブル(社会的怒り)です。

木製の什器などアメリカンクラシックな雰囲気。常に心地よいグッドミュージックが流れ、Taguchiのスピーカーで音響もこだわる

代々木公園にほど近い場所に1号店「リトルナップコーヒースタンド」を立ちあげたのは2011年のこと。濱田さんのコーヒーへの想いはアフリカ、東南アジアとコーヒーベルト一帯を放浪していた若い頃に遡る。現在ほど単一農園にスポットが当たっておらず、情報もオープンにされていなかった時代。

「これほど丁寧に栽培している農園にどれだけの賃金が払われるんだろうと疑問に思ったのが店舗を始めるきっかけ。レブル(社会的な怒り)なんですよ」

「僕たちの仕事は末端」と濱田さん。第一生産者がいて流通され、バイヤーによって届けられた豆を店舗で焙煎して客に提供する。仕事のプロセスとして最後。

「コーヒーの仕事としては僕らは20%。同時にいい豆が届けられても生かすのも殺すのも僕たち。だからいい豆を作ってくれる人をリスペクトし、丁寧な仕事をしなくちゃいけない」

温かみとオールド感のある店内は常に人で賑わう。奥にあるプロバットの焙煎機が存在感

ほんの10年近く前までコーヒー スタンドという名称は馴染みがなかった。その名が聞かれはじめるようになったのは、明らかにリトルナップ以降である。「スタンドが増えてきた現状は嬉しいです。僕が最初にスタンドやるとき、『俺たちでもできる』と思ってほしかったので。僕が10代の頃にパンクロックを聴いて、これなら自分でもできそうって思ったように。実際やってみたら壁にぶつかったり試行錯誤があったりと大変だけど、自分のものになれば生き様になっていくんです」

濱田さんを突き動かしているのはカウンターカルチャー。2号店の「リトルナップコーヒーロースターズ」をスタートさせたのも小さくてもやりたいことがやれる環境を求めたから。マイクロロースターの先駆けだ。

「サードウェーブだって元々はセカンドウェーブに対するカウンターだったはず。僕はそういう気持ちをずっと持ち続けているつもりです」

2号店となるロースタリーは1号店とは徒歩圏内の富ヶ谷。「アトリエ」と表現する建物は、1階がロースタリーとコーヒースタンド、2階がキッチンとレコードショップ(週末限定)、3階が濱田さんのクリエイティブルームだ。

レコードとコーヒー、どちらも本質は同じと語る濱田さん

そして、コーヒーと音楽をこよなく愛する濱田さん。実は、お互いに共通項がある。

「コーヒーを一杯淹れることもレコードに針を落とすことも本質的には変わらない。ミュージシャンがいてスタジオエンジニアがいて盤をプレスする工場があり、そういったプロセスが続いて僕らが針を落としている。農園からバリスタまで続くプロセスと何ら変わりがないんですよ」

サインペイントも自らこなす多才ぶり

焙煎はすべて自分流。教えを請わずやってきた。

富ヶ谷交差点のすぐ先。井の頭通り沿いにあるコーヒーロースタリー。1号店の「リトルナップコーヒースタンド」からも徒歩圏内だ。外観は小さいが入店してみると思いのほか奥行きがあり、カウ
ンターの奥にはプロバットの5kg釜が置いてある。

焙煎機はプロバットと決めていたと濱田さん。通常は1日12~15バッチ、イベントの際は20バッチほど焼く。焙煎中は片時も機械の前を離れない。「コンピュータの連動もあるけど、アナログのほうが性に合ってるから」

そこで豆を焼く焙煎士は代表の濱田さんだ。オーナーバリスタでもある濱田さん。当初は信頼できる焙煎士に一任していたが、焙煎の量も増え、バリスタが育ってきたこともあり、自家焙煎という次のステップへと踏み出した。驚くべくは、濱田さんの焙煎技術はすべて自分流。

「僕は、焙煎に限らず基本的にはだれかに習うということはしないです。時間はかかるけど、試行錯誤して自分のやり方でやっていくのが好き」

焙煎は、豆の持っている甘さを最大限引き出せるように。テストスプーンで煎り止めのころ合いをチェックする

焙煎はイメージ。そう濱田さんは言う。理想に近づける努力をすることで、やがて火の入れ方などの勘所もわかってくる。濱田さんの焙煎の姿はとても絵になるが営業時間内はあまり焙煎しないようにしている。コーヒーはもちろん音楽も含めた空間を味わい、楽しんでもらいたいからだ。

シングルオリジンの豆はブラジル、グアテマラ、コロンビア、エチオピアの定番4種類。農園はその年によって最良のものを選ぶ
バリスタが店頭に立つのは修練最低3年以上
ペアリングとなるスイーツも濱田さんが試作して商品化する

人気のコーヒー豆を紹介!

[豆の種類]
シングルオリジン 4種類
ブレンド 1種類
ブラジル、グアテマラ、コロンビア、エチオピアが店舗の定番

[抽出方法]
ペーパー/エスプレッソ

[焙煎機]
プロバット/半熱風式/5kg釜

【シングルオリジン】カシャンブ

カトゥーラとムンド・ノーボの交配から生まれたカツアイ品種。ブラジルならではの豊かなコクとビターチョコの香り。キャラメルやアーモンド等のナッツ感も堪能して。

産地:ブラジル
焙煎:中煎り
精製方法:バブルドナチュラル
香り:ビターチョコ
酸味:ひかえめ
コク:豊か
後味:すっきり

【シングルオリジン】クエビタス

まろやかな口当たりのコーヒー。ヘーゼルナッツ感とブルーベリーやチェリーなどのフルーティな味わいもあり、酸味が苦手な人にもおすすめ。アフターテイストもはなやか。

産地:グアテマラ
焙煎:中煎り
精製方法:フリーウォッシュト&天日乾燥
香り:フローラル
酸味:ベリー系
コク:あり
後味:長く続く

【シングルオリジン】イルガチェフェ

濱田さんいわく「これはもはやコーヒーじゃなく紅茶です」。すっきりとして飲みやすい味わい。焙煎はその豆の甘味を最も活かせるようなローストポイントを目指している。

産地:エチオピア
焙煎:中煎り
精製方法:フリーウォッシュト
香り:フローラル
酸味:紅茶さながら
コク:ひかえめ
後味:甘味残る

【DATA】
Little Nap COFFEE ROASTERS(リトルナップ コーヒーロースターズ)
住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-43-15
連絡先:TEL03-5738-8045
営業時間:月~金9:00~19:00、土日9:00~17:00
定休日:不定休
公式HP:http://littlenap.jp/#1
席数:約22席
ホールセール:あり
豆販売:あり
豆通販:なし
テイクアウト:あり
デカフェ:なし
ドリップバッグ:なし
セミナー:卸先のみ
器具販売:なし

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/別冊Lightning Vol.215「東京コーヒーロースターズ」)

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