SUGAR CANEが威信をかけたデニムがいかにして作られるか。その裏側を本誌独占で特別公開。

シュガーケーンが2023年冬にリリースした新レーベル『SUGAR CANE Super “Denim” Collectibles』(通称『SCSC』)は、 デニム生地の染色や織布のみならず、各部の部材から縫製まで、これまで以上に徹底的にこだわっている。1943年、そして1946年に作られたスーパーヴィンテージ級の大戦モデル、しかもそのデッドストックをもとに、全てを検証した上で完璧に再現させるためだ。約80年経った現在、量産化させることの難しさは、 日本を代表する老舗デニムブランドでも一筋縄ではいかない。ここでは、そんなモノづくりの裏側の一端を特別にお見せしよう。

紡績した糸をロープ染色する

30年以上にわたってシュガーケーンのデニム生地を手掛け続けてきたのが、1917年創業の日本綿布。染色から織布まで一貫して行う老舗の工場であり、すでに日本でもこのように稼働している工場は数軒しかなく、シュガーケーンがヴィンテージデニムを追求するためには欠かせない存在となっている

現代では削ぎ落とされる短い綿やくずを残したままの当時の紡績を特注して再現。繊維長が短いので撚りを強めにかけて糸の強度を保っている。

何度も染色のテストを繰り返し、もとにしたデッドストックの1943年製ヴィンテージと遜色ない風合いを再現。濃色のインディゴが特徴。

生地表面は凹凸感が強く、裏面を見てもネップ状に糸の節が残っているのがわかる。1943年モデルは最も過酷な状況下で生まれたモデルのため、通常のモデルとは全く異なるディテールと風合いを持つのだ。

デニム生地の経糸を数百本束ねてロープ状にして染色工程は始まる。

まずは不純物を取り除き、その後にインディゴの槽に浸けてローラーで絞る。それを約15メートル分の高さまで持ち上げ、空気にさらして酸化させることで青く染まるのだ。この工程を10回以上繰り返すことで、芯は白いまま外側がしっかり染まった「中白」の糸ができるのである。この工程が終わると、染め上げた糸はサイジングと呼ばれる糊付けの工程に移る。

シャトル織機による織布。

ヴィンテージデニムを再現するのに欠かせない旧式のシャトル織機による織布工程。シュガーケーンを象徴するロングセラー「1947モデル」の場合、1台の織機で織れるのは1日に25メートル(これでも一般的なデニムよりはかなり少ない)、1反(50メートル)織り上げるのに2日かかる。しかし、今回のコレクションの大戦デニムは、さらにローテンションで織り上げるだけでなく、そのために限られた台数の織機を改造・調整しているため、生産性は非常に悪くなってしまうのだ。

上が1943年モデル、下が1946年モデルのシャトル織機。当時と同じ28インチ (約71cm)幅のデニムにするため、旧式の力織機を使うのだが、当時の風合いを再現するためにシャトル織機を改造・調整して、通常よりもローテンションで織り上げているのが特徴だ。これによって生地の強度は保たれつつ糸が張らずに膨らむため、ヴィンテージ合わせて紡績から仕込んだ糸が持つ本来の特性が損なわれず、大戦期特有のざらつきのある風合いを再現できるのだ。しかし、ローテンションにするため1日に織れる量はごくわずか。シュガーケーン史上最も生産効率の悪いデニム生地になってしまったが、そこにはシュガーケーンの気概を感じずにはいられない。

1943年モデルよりも短い綿やくずが少なく、繊維長も長めで一見大人しい表情だが、ムラ糸の形状は1943年モデルより少し強めになっている。

ヴィンテージは青みが強い印象だが、ビーカーテストを繰り返して検証し、若干赤みに振ったものを採用。色落ちするとこのように変化していく。

1946年モデルのデニムは、以降の年代のものよりも荒々しさはあるが、1943年モデルに比べるとムラ感の少ないかなり綺麗なデニムなのがわかるだろう。色合いも黒さも感じられる1943年モデルより青さが強いのが特徴だ。

そうしてできあがったアイテムを紹介!

13.5oz. BLUE DENIM BLOUSE “S1943” MODEL

混乱した大戦真っ只中に作られた1943年モデルは、ステッチワークにも歪なところが多い。部位によってはステッチのピッチもマチマチなのだが、それも全てもとにしたヴィンテージに倣って再現している。非常に手間のかかる縫製だ。5万7200円(SIZE46,48,50のT-BACK仕様は5万9400円)

13.5oz. BLUE DENIM WAIST OVERALLS “S1943” MODEL

最も過酷な状況だった第二次大戦真っ只中のモデル。大戦真っ只中の1943年当時、縫い子が不足して技術が未熟な者も縫製に携わったという話が通説だが、それはヴィンテージを見れば納得できる。随所に歪な縫製部分が見てとれるのだ。しかし今となっては、これが個性として評価され、その一点モノ感が魅力になっている。それを現在量産化させることは非常に難しい。今回の1943年モデルは、まさに工場泣かせの仕様が満載なのである。4万6200円

13.5oz.BLUE DENIM WAIST OVERALLS “1946” MODEL

戦時中の仕様を一部に残しながらも徐々に品質を高めつつあった時代のモデル。左前身頃の前開き部分に3つ折りステッチをかけてから比翼に2本針ステッチを付ける。持ち出し付けは、1943年モデルは地縫い+太番手ステッチなのに対し、1946年モデルは地縫いと再度ロックミシン+太番手ステッチで取り付けている。比翼の下部が切りっぱなしになっているのは1943年モデルも1946年モデルも同様だが、後者は股ぐりの縫製部分を折り伏せ縫いになっている。4万6200円

13.5oz. BLUE DENIM BLOUSE “1946” MODEL

混乱した時代だったことで通常よりも雑な仕様になっていた1943年モデルと異なり、徐々に縫製にも“綺麗に作りたい“という当時の職人気質が感じられるようになったのが1946年モデルから。後の1947年モデルよりは歪さがまだ残るが、明らかに1943年モデルよりも縫製仕様が丁寧で綺麗に作られるようになったことが随所に見て取れる。5万7200円(SIZE46,48,50のT-BACK仕様は5万9400円)

【問い合わせ】
シュガーケーン(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321
https://www.sugarcane.jp

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2023年12月号 Vol.356」)

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ランボルギーニ三浦
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ランボルギーニ三浦

ヴィンテージ古着の目利き

全国的に名を轟かせていた札幌の老舗ヴィンテージショップに就職。29歳で上京。Lightning編集部、兄弟誌・2nd編集部で編集長を務めた後、現在は、Lightning副編集長に。ヴィンテージ、古着の知識はその道のプロに匹敵。最近はヴィンテージのロレックスが最大の関心事で、市場調査も日課のひとつ。ランボルギーニ三浦の由来は、もちろんあの名車。
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