エンジニアブーツを味わうということ、それを教えてくれる「ROLLING DUB TRIO」のGRIFFIN ENGINEER

欲しいモノが尽きないライトニング編集部員が、いま気になるモノから実際に購入しちゃったモノまで、ジャンルに限らず何でも紹介! 今回は、「古典を読む時は、圧倒的に岩波文庫がおすすめ。級数の小ささと改行の少なさが何ともクラシカルで、俺をその時代へと誘ってくれる。ちなみに中公文庫も好きです」と語る、革ジャンの伝道師・モヒカン小川がお届け!

ROLLING DUB TRIOのGRIFFIN ENGINEER

文庫本が好きだ。ハードカバーに比べて携帯性がいいからという理由もあるが、各社の書体の違いを味わうのが、俺の文庫本の楽しみ方。ちなみに俺の好みは新潮文庫。格調高く落ち着きがあって、しっとりとした文学世界を俺に見せてくれるのだ。

以前、夏目漱石の『こころ』を、新潮文庫と角川文庫両方読み比べてみたことがある。角川文庫も悪くないんだが、ちょっと俺には軽い感じがするんだよね……。また今ではずいぶん良くなったが、一昔前の講談社文庫の書体はいただけなかった(個人の感想です)。文春文庫は、読みやすいんだが、味がない感じ。海外ミステリーを読むなら、ハヤカワ文庫も悪くないが、個人的には創元推理文庫の方が好き。光文社文庫なら、カッパノベルズの書体の方が好み……同じ作品でも、書体や紙質がちょっと変わるだけで、感じ方がガラリと変わる。そこが楽しいのだ。

枕が長くなってしまったが、俺のエンジニアの楽しみ方も、文庫本のそれとよく似ている。ひとくちに「エンジニアブーツ」といっても、素材やフォルム、ソールが変わるだけで、全く違う世界を俺に見せてくれる。王道のレッドウィングのエンジニアを、読みやすい文春文庫や角川文庫とするならば、今回ゲットしたローリングダブトリオのグリフィン・エンジニアは、どの文庫にあたるのだろうか?

黒光りする茶芯仕様のホースバットを使用、均整のとれたシャープなフォルムがどことなくクラシカルで落ち着いた大人の雰囲気を漂わせており、マンソンラストをベースにナローに改良しているため、履き心地もいい。このブーツの持つ絶妙なバランス感が、50歳を超えた今、妙にしっくりくる。本当に素晴らしいブーツを手に入れた。これを新潮文庫に例えるのは簡単だが、それではあまりに能がない。わかった。これは俺にとっての「岩波文庫」だ(個人の感想です)。

ローリングダブトリオの新作エンジニア「GRIFFIN ENGINEER」。つま先部分にUSネイビーラストを組み合わせたマンソンラストを採用し、クラシカルかつシャープで曲線的なフォルムが美しい。素材はホースバットで、厚みを持ちながら、馴染みがいいのが特徴だ。茶芯仕様でエイジングも楽しみな一足に仕上がっている。14万3000円(ザ・ブーツショップ TEL03-6802-8083)

グリフィン・エンジニアの最大の売りは、美しい曲線を描いたナローなフォルムと履き心地を両立させている点。履き心地がいい→履きたくなる→アジが出る→すげーかっこいい→もっと履きたくなる……という素敵なループが待っている。ちなみにこれを書いてる今も、俺の足元はこいつです

(出典/「Lightning 2023年11月号 Vol.355」)