デニム同様に経年を楽しみながら乗るスタイル。
デニムの似合うクルマって何だろう? メルセデス・ベンツのGクラスやポルシェのカイエンといったハイブランドのインポートカーをサラリと乗りこすのもカッコいいが、穿き込んだジーンズのように長い時間を経た、いわゆるヴィンテージカーもよく似合う。
ここで紹介するのは’73年のバハバグ仕様のフォルクスワーゲンタイプ1と’61年のフィアット600ムルティプラ。どちらも愛知県のアメリカ車に強いショップ「アクセル426」の在庫車両だ。アメリカ車ではなく欧州車からセレクトしたのは、可愛い丸目ヘッドライトと手ごろなサイズ感、そして夏を感じさせるカラーが理由。
どちらもイマドキのクルマのような快適装備なんて何ひとつない。例えばパワステ。だけどどちらのクルマもエンジンは後ろに積んであって、タイヤも細い。だからハンドルを切る時に「よっこらせ」とはならないし、気負うことなんてない。クーラーももちろんないけど、それなら窓を全開にして走ればいいだけ。しかもバハバグには三角窓がついている。走っていれば風がどんどん入ってくるからとっても気持ちがいいんだ。
「欧州車やと、どうしてもマニアックな傾向になりがちやけど、あえてカジュアルに乗ってもらいたいね。バハバグのようにカスタムしてもいいし、ムルティプラのようにバンパーが少しくすんでいてもええし。逆にもっとボロでもええと思う。そんな状態のクルマでもどっかカッコよく見えるのは、ジーンズと一緒やね」とアクセル426代表の山手さんは語る。
「最近は綺麗にレストアされたクルマやないと嫌という人も多いけど、お金をかけてピカピカにするのではなく、あえてそのままの状態で乗り続けて、経年による変化を楽しむのもええもんやで」
旧いクルマ、特に欧州車となると、維持を含めて難しく考えがちだけど、実際はデニムと同じく実はカジュアルに楽しむことができるのだ。だが昨今の旧車ブームで、今までは手頃な価格で購入できた欧州車も最近は軒並み高騰中。空冷フォルクスワーゲンも、いまや高級ヴィンテージカーの仲間入りって状況だ。だからこそ、山手さんは新車並みに仕上げた状態の物を無理して買うのではなく、少し傷が入っていても、まずは安く乗り出すことをお勧めしている。
「綺麗すぎると気使うから(笑)。サーフボードを載せたり、気軽に使って欲しいね」
1.ビーチグッズやキャンプ用品満載で、海へ山へとアウトドア三昧。|1973 Volkswagen Type1 “Baja Bug”
日本ではローダウンしたストリートスタイルが多いけど、この個体はタミヤのRCカー「ワーゲンオフローダー」ようなリフトアップ仕様。特殊な車両のように思えるが、スタイル以外はいたって普通。乗り心地だって悪くない。排気量は1200㏄でパワーも十分。これでアウトドアに出かけたら目立つこと間違いなし! 258万円
2.ルーフにサーフボードを積んで、ゆる~く海まで走りたい。|1961 FIAT 600 Multipla
「史上最も醜いクルマ」と呼ばれた’98年に登場したムルティプラだが、’56年登場の初代はこんなにキュート。全長3530㎜・全幅1450㎜・全高1580㎜で軽自動車よりも一回り小さいが、何と6名乗車が可能。非力なエンジンを一生懸命回しながら、トコトコと走る姿に癒される。コイツとはゆるく付き合うのが正解。548万円
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning2023年7月号 Vol.351」)
Text/M.Sasaki 佐々木雅啓 Photo/D.Katsumura 勝村大輔
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