異形だからカッコイイ。アメリカン・セダンピックアップの両巨頭「ランチェロ&エルカミーノ」を比べてみた。

アメリカのカーカルチャーのなかで独自の進化を遂げたのが、セダンピックアップというカテゴリー。その代表格でもあるフォード・ランチェロとシボレー・エルカミーノを比べてみた。

どちらも半世紀近い歴史を重ねながら、今や絶版車というモデルたち。

アメリカらしい異形のデザインながら、今でもクラシックなアメリカ車愛好家のなかでも確固たる地位を築いている個性派モデル。あらためて見比べてみるとなかなか興味深い。

ピックアップ大国が生んだアメリカらしいスタイル。

1959年にフォード・ランチェロの後を追うカタチで生まれたのがシボレー・エルカミーノ。初代は当時のフルサイズカーだったベルエアやインパラと基本コンポーネントは共通だった。photo by General Motors

セダンピックアップとはその名の通り、セダンのボディながらリアをベッド(荷台)にしたモデルのこと。もともとピックアップトラックは、商業車として使えるタフな構造が基本。そこにプライベートユースモデルとしてライトデューティ仕様で開発されることが当たり前だった時代に、セダンの構造そのままで、後ろにベッドをくっつけることで、よりスポーティなルックスを持ったデザインで生まれたのがセダンピックアップだった。

その見た目は2ドアワゴンのルーフを切ったようなスタイル。かなり特徴的なスタイルだけど、現代でいうクロスオーバー(乗用車のコンポーネントで製造されるSUVなど)的な発想で生まれたと思えば、逆にその発想自体は先を見据えていたともいえる。

その誕生は、当時アメリカのモータリゼーションをリードしていたフォードが先手を打ち、ランチェロが発売されたのが1957年。たくさんの荷物を運ぶことができるうえにセダンやクーペの乗り味が楽しめることで初代モデルからヒットした。

その後、後を追うようにそれを見たGMからはシボレーブランドで1959年にエルカミーノが発売される。

どちらも当時のファーマーやカウボーイ、それに1960年代になるとアウトドアレジャーやサーファーといったユーザーに支持されるだけでなく、1970年代初頭にはマッスルカー並みのスペックを持ったハイパフォーマンスモデルが登場するほどグレードも多様化して進化していく。あっという間にセダンピックアップは市民権を得たのである。

日本でもかつてトヨタ・クラウンやニッサン・サニーにピックアップモデルが存在したのは、ランチェロやエルカミーノの影響があったことはいうまでもない。

そんなセダンピックアップの両巨頭を、それぞれ近い年式で比べてみた。どちらも実にアメリカ的で、今となっては異形のデザインが逆にカッコいい。

事実、どちらももはやコレクターズカー(ランチェロは第七世代までモデルチェンジして1979年式、エルカミーノは第五世代までモデルチェンジして1987年式で生産終了という絶版車)なので、その価値は下がらないだろう。

アメリカ旧車のなかでも特に「アメリカ車らしい」車種として、今後もコアな人気を誇るモデルであることは間違いなし。数々のアメリカ映画でもスクリーンを疾走していたセダンピックアップ。気になる人は手が届かなくなる価格になる前に何とかしておきたい。

比べてみたのはこの2台。

今回比べたのは1973年式フォード・ランチェロGTと、1970年式シボレー・エルカミーノ。どちらもほぼ同じ時代の世代なので、まさに当時のライバル車といえる。フロントマスクはどちらも丸目4灯で大きく口を開けたようなデザイン。ランチェロは当時のトリノ、エルカミーノはシェベルがベースになっていた。

ちなみに全幅はランチェロが2007mm、エルカミーノが1915mmとランチェロの方が幅はある。

サイドからの眺めは独特。

セダンピックアップのデザインはサイドからの見た目がもっとも特徴的(フロントから見れば普通のセダンやクーペと見た目は変わらないからね)。2台を見比べてみるとフロントのウィンドシールド(フロントガラス)の角度やBピラーの太さが若干違うけれど、エルカミーノの方がシャープなデザインに見える。

全長はランチェロが5479mm、エルカミーノが5245mmとほぼほぼ同じ。どちらも5m超え。ホイールベース(前後のタイヤの距離)はランチェロが2997mm、エルカミーノが2946mmとこちらもほぼ同じ。

ベッドの大きさ。

ピックアップトラックなのでベッドの荷室部分も気になるところ。ボディデザイン上、ホイールベースやキャビンのスペースはほぼ同じなので、広さもほぼ同じながら、ランチェロの方がベッドのサイドパネルに高さがあるので、やや深さを感じる。アメリカにはベッドの上に取り付けられるハードシェルやトノカバーも各年式で存在しているので、アップデートも可能。

リアゲート&リアデザイン。

全体的にシャープなデザインのため、リアスタイルもエルカミーノの方がリアゲートも高さを抑えたデザインになっていて、テールランプは両サイドに張り出している。一方、ランチェロは高さのあるリアゲートで、テールランプはやや「く」の時になった縦長タイプになっている。どちらも可倒式のリアゲートを採用していて長尺モノも積載可能。それぞれクロームメッキのバンパーが装着されるのは往年のアメリカ車らしい部分。

内装およびインテリア。

写真上がランチェロ。下がエルカミーノ。キャビンの広さは同じくらい。ランチェロはベンチシート(3人乗車可能)にコラムシフトでインパネには5連メーターが並ぶ。1970年代らしく、プラスチックを多用したブラックのインテリア。一方エルカミーノはSS仕様にカスタムされているので、フロントは2座でフロアシフト。メーターも社外品のデジタルメーター(ダコタデジタル製)にカスタムされている。どちらもピックアップトラック然とした雰囲気は無く、スポーティなデザイン。ステアリングホイールはどちらの車両も社外品に換装されている。

リアウィンドー。

写真上のランチェロは平面ガラスで中央がスライドする形式(おそらく当時のオプション設定)。エルカミーノは逆Rを描いた1枚ガラスになっている。撮影車両ではエルカミーノの方がデザイン的にはすっきりとしたイメージだけど、ランチェロの方が換気ができるので機能性は高い

エンジンはどちらもアメリカ車らしくV8。

この世代のランチェロは直6とV8エンジンが選択可能だった。撮影車両はGTグレードなのでV8エンジンを搭載している。排気量は351キュービックインチ(約5800cc)。一方エルカミーノは当時のスタンダードなV8エンジンであるシボレーの350キュービックインチ(約5700cc)をメッキパーツでディテールアップ。トランスミッションはどちらも3速オートマチックを搭載し、パワー比べはほぼ互角といったところ

【取材協力】
1973 Ford Ranchero/J-Motors https://www.instagram.com/j_motors_yokohama
1970 Chevrolet El Camino/M-Spec http://www.m-spec.jp

この記事を書いた人
ラーメン小池
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ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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