ハンドメイド染色による新たな価値の創造。MODESTY INDUSTRYのデニム&ミリタリーとは?

日本の伝統的な技法を用いて、アメリカンクロージングを再構築する実力派ブランドであるモデスティインダストリー。昔ながらの手間暇の掛かる染めの技法を駆使しながらも、伝統に縛られず、自由な発想で仕上げれるデニム&ミリタリーは、究極の1 点ものとなっている。

「デスティ・インダウトリーズ」RONN さん|東京都出身。インポートショップやストリートブランドのスタッフを経て、サリーズジャーニーをオープン。今でも続けているスケートを筆頭に、大のアメリカンカルチャー好きである

日本の伝統的な手法とストリートな感覚を絶妙にミックス。

まるでアーティストの手描きやシルクスクリーンプリントに見えるアートワークだが、実はすべて染めで表現しているというから驚く。アメリカンクロージングにおいて染めと言えば、素人でもできるタイダイのイメージだが、それとは一線を画した高い技術が要求されるのだ

三軒茶屋にフラッグシップストアを構えるモデスティインダストリー。インポートショップやドメスティックブランドのスタッフを務めていたロンさんと、美大のテキスタイル専攻で染織を学んだ実弟の2人で手掛けている。そのスタンスは独特で、自分たちの気に入った古着の欧米のクロージングに、1点ずつ日本の伝統的な染色技法で新たな息吹を吹き込んでいるのが特徴だ。

「ベースとなる古着は、自分たちがリアルタイムで通ったものや今の気分に合うようなものをピックアップしています。自分も弟もアメリカの洋服やカルチャーに多大な影響を受けているので、デニムとミリタリーは欠かせない要素ですね。

ミリタリーやデニム以外のラインナップも充実している。ベースがベーシックなデザインのクロージングが多いので、染めが入って、ちょうどいいバランスになっているのがよい

日本において染めは、襤褸と同じようにひとつのものを長く使うためにも用いられているアップサイクルでもありました。アメリカの古着でも長く使うためにリペアやリメイク、カスタムが施された個体がありますが、そんな感覚を日本の伝統的な染色技法で表現しています。

具体的には柿渋を塗った和紙を筒状にして、目糊(糯米粉と米糠)に、染料を混ぜた色糊で染める筒描き染めや捺染を得意としているのですが、伝統に縛られすぎず、自分たちの自由な感覚を大事にしているんです」

キャップやソックスなど、古着ベースではないものも展開している。この染めも伝統的な手法を用いており、そこにストリートの要素をプラスしている
ここでは紹介しきれないほど、デニムアイテムも展開している。まるでカラーデニムのような感覚で着ることができるのが、おもしろい
オリジナルのキャップは新品をベースに1点ずつ丁寧に染めを施している。使い込むことで、より風合いが増していくのも醍醐味である
オリジナルファブリックで作ったようなスニーカーだが、もちろん手作業による染めを施したカスタムモデル。すべて1点ものである
フラッグシップストアであるサリーズジャーニーでは、服だけでなく、絶品のホットドッグも提供しており、中でコーヒーも飲めるのが魅力。ホットドッグも評価が高いのだ

定番のアメカジアイテムが新鮮に映るハイセンスなカスタム。

メイドインカナダの変わった’90年代のリーバイスのGジャンを一回抜染してから、筒描き染めでアートワークを施している。染めとは思えない直線的なデザインや絶妙なグラデーションがおもしろい。3万3000円

アイアンクロスをモチーフにした和洋折衷のアイデアがおもしろい。ベースはアメリカ製の501で、38インチというビッグサイズをリメイクしてテーパードシルエットにアップデートした。2万7500円

デカタグの付いたリーバイスのGジャンに、プリズナーのようなボーダーを染めで施した。大きめなサイズも◎。3万800円

パンチの効いた芸術的なMA-1は、アルファがベース。あえてグレーのベースにこだわり、色糊でナイロンを染めた。3万8500円

メイドインUSAのリーバイスのGジャンをカットオフし、染めでファイヤーパターンを表現。星のアートワークも絶妙だ。2万2000円

センス溢れるオリジナルTシャツは、プリントではなく、もちろん染めで表現している。上、中/各1万4300円、下/1万2100円

まるでどこかの軍隊で使われていそうな完成度の高いカモフラ柄は、なんと染めで構築。ベースはリップストップ生地を使った無地。2万2000円

ポロラルフローレンのジーンズをベースに、一度染めてからバラのアートワークを施した力作。穿かない時は、飾っておきたいくらいのクオリティ。2万2000円

【DATA】
Sally’s Journey
東京都世田谷区三軒茶屋1-9-13
TEL03-5787-5683
https://modestyindustry.com
Instagram@modesty_industry

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning2023年7月号 Vol.351」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

Pick Up おすすめ記事

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...