今回はあらためてピュアブルージャパンの「コンセプト」へと迫る。代表の岩谷さんが語るピュアブルージャパンらしいデニムとは? 普段、アイテムを見ただけではわかりにくい部分を編集長、ラーメン小池が掘り下げた。目からウロコのオリジナリティをあらためて知ると、もっとピュアブルージャパンが気になってくるはずだ。
「ピュアブルージャパン」代表・岩谷健一さん
もともとは生地を扱う仕事をしていたが、ブランドを設立。それまでのノウハウを活かして、デニムを筆頭に様々なインディゴ染め生地によるアイテムを生み出している。
アメリカではなく、日本のモノ作りに特化したい。
ラーメン小池(以下、小池) 対談企画って初めてじゃないですか? なんか逆に新鮮ですね。
岩谷さん(以下、岩谷) あらためてブランドのモノ作りについて話してみようかと。
小池 今や日本だけでなく、世界中にファンがいますもんね。
岩谷 気がつけばかなりの国に行き渡ってます。うれしいかぎりですけど。
小池 それも、ピュアブルージャパンのオリジナリティによるところですかね?
岩谷 もともとボクは生地業界からこの世界に入ったじゃないですか? だからオリジナリティのある生地や、穿くことで生まれる色落ちや風合いは大事にしてますね。
小池 それって、いわゆるヴィンテージジーンズのような深みってことですか?
岩谷 それもブランド当初はアタマをよぎったんですが、ボクがブランドを立ち上げようとしたときには、すでに日本にも多くのデニムブランド、そのときはレプリカジーンズを追求する先輩たちがいましたからね。もちろんボクも古着やヴィンテージに愛着はありますけど、そこで勝負しても、すでに素晴らしいブランドがありましたから、もっと違う視点を大事にしないといけないなあと思ったんですよね。
小池 それって何だったですか?
岩谷 アメリカのヴィンテージジーンズに倣うのではく、日本の工場背景で日本人が考えるプロダクツを作ろうと。だから、ヴィンテージをそのまま踏襲したスタイルではないんです。
小池 確かにヴィンテージライクなゆったりとしたシルエットのアイテムは皆無ですもんね。
岩谷 シルエットもワークアイテムに代表されるゆったりとしたモノではなく、すっきりとさせたモノが基本です。ウチはレギュラースレートでも細身だと思います。
小池 あとはデニムひとつ取っても生地が独特ですよね。
岩谷 うちは海外ではスラブマスターって呼ばれたりするんですが、糸から特別な工程で作った凸凹とした生地がメインになってますね。生地を構成する糸から激しいムラ糸を特別に紡績しています。
小池 やはり生地やシルエットが違うっていうのがオリジナリティにつながっているんですかね?
岩谷 あとは縫製仕様ですかね。一般的なデニムよりも太い番手の縫製糸を使って巻き縫いをしたり、巻き縫いの幅も広くしていたり、言われなければ気がつかないかもしれない部分に注力してますね。
小池 それって理由があるんですか?
岩谷 もちろん、他のブランドの同じような5ポケットジーンズと見比べたときに「何か違うな」と思わせることができますし、特別な縫製仕様を実現させるためには、ミシンを改造する必要があるんです。これができる職人さんが日本でも稀少ですし、海外にはほとんどいないんじゃないですかね。
小池 まさに日本でなければできない縫製っていうわけですね。
岩谷 そうだと思いますよ。ただ太い糸で縫えるミシンに改造ができたとしても、それを量産で使えるセッティングにまで煮詰めることができるのは職人ならではだと思います。太い糸で縫うことで、見た目のメリハリも出ますし、縫製糸自体がデザインとしても生きてます。
小池 確かに実物を見ると、要所要所がかなり太い糸で縫われていますね。ワンウォッシュの段階でも縫製糸のイエローやオレンジがしっかりと主張してる。
岩谷 まあ、これも言われなければ気がつかないことかもしれませんが、生地を織るのも、織機を改造できる職人さんがいるからこそやれてるんですよ。
小池 旧い織機をさらにカスタムしているんですね。
岩谷 もちろん、簡単なことではないですが、生地、縫製、そしてシルエットでそれぞれオリジナリティを持たせているので、よく見ると、同業他社のデニムとは違う部分がたくさんあると思いますよ。
小池 確かに、言われてみなければわからなかったです。
岩谷 もちろん、聞かれなければボクも言わないですしね(笑)。
小池 生地や作りに注力してるデニムブランドってことですかね?
岩谷 デニムをメインで作ってますけど、デニムというよりインディゴブランドとしてやっていきたいですね。天然藍染めのアイテムも通年定番として作っていますから。そういう意味ではファンの方もゴリゴリのヴィンテージ好きっていう人は少なくて、純粋に普段着のひとつとしてウチのアイテムを選んでくれている人が多いような気がしますね。そこはヴィンテージを徹底的に掘り下げるのではなく、天然藍も含めたインディゴ染めに注力してきたからだと思います。
小池 客層の幅広さがインディゴ染めをキーワードに広がったんですね。
岩谷 もちろん、なかにはデニムにもの凄く詳しい方も来るんでおもしろいですよ。
小池 なるほど。そのオリジナリティは今後も楽しみですね。
岩谷 もともといわゆるジーンズだけをやりたかったわけではないので、いろいろなアイテムでインディゴ染めの生地を楽しんでもらえるようにがんばります。
日本の技術でなければ実現不可能なディテールが満載。
日本の職人技術がなければ実現させることができないというディテールワークこそ、ピュアブルージャパンが目指した「日本人が考える日本のジーンズ」の秘密。ここではブランドの定番であるXX-019 を例にそのオリジナリティのある仕様を確認してみる。
ポケット、巻き縫い部分など、太さや縫製糸のカラーを変えていることにも注目。同じ糸で縫った方が効率は良いが、あえて変えることで奥行きのある表情に。
バックの巻き縫い部分も通常では20番手くらいの縫製糸のところを6番手という太い糸で縫うだけでなく、巻き縫いの幅も独自にセッティングしている。
ヴィンテージをも凌駕するザラ感のあるデニムは、糸の紡績から始まり、織機を改造することで生まれる。すべて日本の職人技術が結集することで生まれるのだ。
ベルトループは中央がかなり盛り上がった仕様に、両サイドの縫製糸が切れるのを防ぐだけでなく、中央部分が先に色落ちすることで表情も豊かに変化してくれる。ミシンに特殊なパーツをセットすることで可能に。
サイドのアウトシーム部分である脇の押さえ部分の縫製も0番手の太い糸で縫製。ワンウォッシュの状態でも縫製糸がはっきりと見え、メリハリのある顔立ちに。
小股と呼ばれる股下部分の縫製には0番手というもっとも太い縫製糸で縫われている。これだけでフロントから見たときのイメージがずいぶんと変わってくる。もちろん運針や縫い幅まで特別にセッティングしている。
フロントの持ち出しと呼ばれる部分も0番手の太い糸で縫い上げる。普段は見えない部分にもしっかりと主張する仕様にすることでオリジナリティをさらに高める。
デニムジャケットの袖付けはヴィンテージと同様の巻き縫いではなく、テーラードジャケットと同じ仕様に。こうすることでアームホールを細くでき、着たときがよりスタイリッシュに見える。
【問い合わせ】
ピュアブルージャパン原宿店
TEL03-3408-6644
http://www.purebluejapan.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典「Lightning2022年1月号 Vol.333」)
Text/S.Koike 小池彰吾 Photo/A.Kuwayama 桑山章
関連する記事
-
- 2024.11.22
ステュディオ・ダ・ルチザンの「定番・際物」プロダクツを狙え。
-
- 2024.11.22
ヴィンテージカバーオールが高騰中! 名店「ベルベルジン」のスペシャルピースを拝見。