銀色に光り圧倒的な存在感を放つトレーラーの王様、エアストリームのヴィンテージ市場の現状とは。

  • 2023.02.21  2022.07.08

SF 映画に出てくる宇宙船を思わせるシルバーのジュラルミンのボディに、丸みを帯びたフォルムが圧倒的な存在感を放つラベルトレーラー・エアストリーム。キャンパーならずとも憧れるエアストリームのヴィンテージ市場の現状を探る。

戦前から現存する唯一のトレーラー製造メーカー。

「エアストリームカフェ」代表・岡本博志さん|千葉県大網白里市のヴィンテージエアストリームの展示・輸入買付代行を行う。2001年から今日まで20年家族でエアストリームに住み実証するほか、希少レアモデルも多数所有するなど、世界でも屈指のマニアとして業界では知られた存在。

キャンプをはじめ、移動販売や田舎移住人気もあり、年々注目度が高まるトラベルトレーラー業界。その最高峰といえば、1931年にウォーリー・バイヤムによって設立されたエアストリームだ。

1936年に作られたエアストリーム社の記念すべき初号機モデルのクリッパー。世界でも現存するのはこちらとアメリカに1台のみという博物館級の激レアモデル。内装はもちろん外装もそれなりにやれているが、歴史的な車両が実物で見られるだけでもマニアには十分価値がある逸品。非売品

第二次大戦時に原材料の調達が困難になり一時廃業するものの、1947年に復興。他社とは一線を画す流線型のフォルムや近未来を思わせるジュラルミンのボディ、快適でオシャレな内装を武器に、戦後の好景気の波に乗り一躍人気メーカーの地位を確立した。実はアメリカには1930年代、すでに300社以上ものトレーラー製造会社が存在していた。

だが、今日現存するのはエアストリームただ一社。しかも、ヴィンテージを探してみても、アメリカならともかく日本では他社の物はほとんど見かけない。その理由は素材のジュラルミンにある。

発売当時、顧客に向けて発送された広告のダイレクトメール。二人でもったり、自転車で引いたりなど軽量化されたことも売りだった

「他の会社は皆木製だったからボディが腐ってしまうんですが、ジュラルミンは腐食部分の状態が悪いと錆びることは当然ですが鉄のようには腐りません。年代が古くても磨けばピカピカになるし、内装もレストアすれば問題なく使えます。もちろん使い方や好みもありますが、古くてもレストア前提なら安く手に入ることもあります」

自分でレストアするなら’60~’70年代の出物が狙い目。

’50年代モデルの内装。状態の良いものが出れば多少手を加えるだけで居住空間として使える。もちろん、内装がボロボロでも外装さえ問題なければ、内部は自分で手を加えて好きに作ることができる。キャンパーとしてだけでなく、自宅や別荘にも最高。リモートワーカーのオフィスにどう?

現在、アメリカや国産メーカーのトラベルトレーラーやキャンピングカーは多数作られているが、やはり人気面ではエアストリームが一歩抜きん出ている。新車でも購入することができるが、コンパクトな16フィートのバンビですら1000万円近くになる状況。デザイン的にも価格的にもやはりヴィンテージが狙い目となるところだが、ここ数年は日本国内はもちろん本国アメリカでも人気だそうで、古い物でも価格はかなり高騰しているようだ。

「日本の道路事情にも合うバンビは希少人気で10~5倍くらいの価格になっています。逆に32フィートとか長い物も同じくらいの価格で買えたりすることもありますね。もちろん、年代や内装の程度にもよりますが、300~400万円くらいはかかると思います」

キャンピングトレーラー大国アメリカでは1930年の第一次ブームの頃よりキャンピングトレーラー専門誌やパーツカタログ、DIYのための専門誌なども多数存在した。エアストリームカフェは本場のファンも驚く量の資料がある

使い方や好みで選ぶサイズも変わるが、岡本さん的に狙い目なのが’60~’70年代のものだそう。

「個人的にエアストリームらしさが感じられるのは’80年代以前ですね。’70年代以降になると外装パーツも全て手に入るから綺麗にレストアも可能です。’60年代も部分的には新品パーツが手に入りますから、程度の良くない物を安く見つけて自分で手間暇かけてレストアするのも楽しいはずです」

別荘、カフェ、ギャラリーと内装も自分流に楽しめる。

千葉県長柄町にある乗馬クラブ「エバーグリーンホースガーデン」内に併設されたカフェ&ヴィンテージランタンギャラリー「ヴィンテージガレージ」。こちらには希少ヴィンテージトレーラーの展示のほか販売車両もある。その中にあるのが、ヴィンテージのトレーラーを改装したこちらのカフェ。使用されているのは’50年代のロールアウェイ社のトレーラーハウス。居住空間だけでなく、据え置きや移動販売のカフェやレストランとして利用してもオシャレ。

こちらも千葉「ヴィンテージガレージ」に置かれているエアストリームを利用したヴィンテージのコールマンランタンのギャラリー。ヴィンテージのエアストリームに一歩入れば、レアなヴィンテージのコールマンのランタンが所狭しと並ぶという贅沢な空間。ギャラリーとして使うのもオススメだ。

ヴィンテージエアストリームの市場価格を知る!

日本はもちろんアメリカでも人気が再燃していることもあって、状態のいいヴィンテージは品薄で価格も高騰気味。だが、最近のコロナ不況で手放す人もいるそうなので、こまめにチェックしていればお得な出物もあるという。また、外装に使われるジュラルミンは基本的に錆びることはないので、一見内装がボロボロで使えないようなものでも自分で直すことを前提にすれば問題なし。購入時は外装の状態のチェックをお忘れなく。

1.Liner|1947年

第二次大戦時に物資不足のために一時休止していたエアストリーム社が戦後復活して発売したのがライナー。22ft。それまであったセンターピラーを前後とも取り払うことで窓が大きくなるなどデザイン的に改良が加えられた。古いロゴマークもファンには人気の高いポイント。ASK

2.Bambi|1962年

狭い日本の道路事情にも合うことから日本で最も人気の高いバンビ。なかでもこの16ftモデルが人気だが発売されたのはわずか数年のみ(その後17ftのバンビ2、19ftが名前を変えて復刻した)。近年はアメリカでも人気が高いようで状態のいいモデルは品薄で価格も高騰している。500万円

こちらは発売当時作られていたオーナーズマニュアル。小型乗用車でも牽引できるのがバンビの魅力のひとつ

3.Globe Trotter|1962年

現在も新車のラインナップにもあるグローブトロッター。1962年製の19ft。使いやすいサイズ感で外装もしっかりと手入れ
されているのでピカピカ。多少手入れする箇所はあるものの、そのまま使うこともできるほどの状態。当時の雰囲気をそのまま味わいたいという人にはオススメ。ASK

当時の雰囲気を今に伝えるウッディな内装。さすがにトイレやシャワーは使えないが、内装は目立ったダメージはなくそのまま使える

4.Excella1000|1989年

‘80年代後半になってくると、やや四角いフォルムになり、内装も現代のモデルと遜色ない豪華なものに。こちらは34ftと最長クラスのモデルにして、エアストリームカフェオーナーの岡本氏が実際に家族で暮らす家でもある。空調や下水、排水を整備すればローコストで楽しい暮らしが可能。説明展示車

5.Classic|2005年

2000年代に入るともうヴィンテージ ではなく現行車だが、実際に自宅や別荘として使うことを考えれば内装の綺麗さや使い勝
手の良さは高年式に勝るものはない。こちらは34ft。車幅も2.5m以上あるので実際に牽引して走ることはできないので、据え置きでの定置設置用。輸入も可能。委託販売中

車両の一部(リビング)が電動式で張り出すので内部はもはやトレーラーとは思えないほど快適だ
ソファ部分が横に張り出している場所になる。木製のキャビネットやシャンデリア調のライト、フローリングに奥にはキングサイズのベッドルームまで完備しており快適に過ごせる

日本のキャンプブームや移動販売ブームだけでなく、本国アメリカでも、近年はヴィンテージエアストリームの人気は高まる一方で、年々、価格は上昇。購入を考えるなら常に市場をチェックすべし! また、自分で内装を手直しできるなら、安い出物も狙い目だ。

▼エアストリームの購入を考えている人必読!

「エアストリーム」とは? 新車価格から中古相場、購入方法まで徹底解説!

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2023年07月31日

(出典/「Ligthning2021年9月号 Vol.329」)

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