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ChatGPTのサム・アルトマン、日本でメディアアーティストの真鍋大度、草野絵美と対談

2022年にChatGPTを発表し、ここ3年間の話題をすべてさらったOpenAIのCEO、サム・アルトマンさんが来日。西麻布のWALL_alternativeで、メディアアーティストの真鍋大度さん、草野絵美さんと対談した。その様子を現場で取材できたので、レポートしよう。

2人のアーティストと、AI社会の牽引者の邂逅

冒頭サム・アルトマンさんは「私はいつも日本に来るのが大好きです。日本は昔からずっと私のお気に入りの旅行先でした。今でも年に数回、短い滞在で来ています。日本のすべてが大好きで、1年間滞在できればいいのにと思います。日本は様々な意味でAIのアーリーアダプターであり、まさに巨大な導入国です。日本は今、私たちにとって世界で2番目に大きなビジネス市場だと考えています」と挨拶した。

真鍋大度さんは、音楽・映像・プログラミングを自在に横断するインタラクティブ・アーティスト。ライゾマティクスを率い、Perfumeや坂本龍一らと革新的なステージ演出を手がけ、最新テクノロジーを用いた表現で世界的に注目を集めてきた。アートと科学を融合させる姿勢は国際的評価が高く、作品はSXSWやアルス・エレクトロニカなどでも発表されている。筆者にとっては、Ingressのアノマリーの取材時に、さまざまなアート表現で我々を楽しませてくれた人でもある。

草野絵美さんは、アートとテクノロジーの領域を横断する新世代のアーティストであり、NFTを通じた新しい経済圏での表現を切り開いている。AIを用いた自己像の再構築や、テクノロジーと人間の関係性を探る作品を発表し、M+や金沢21世紀美術館などで展示されている。世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出され、AIアートのパイオニアとして世界的に注目を集めている。

モデレータ−を務めるのは沙羅ジューストーさん。バーチャルヒューマン『imma』の企画制作で有名。 TEDでの講演や『Forbes JAPAN 30 Under 30』選出などを通じ、次世代のアート/テック融合を体現する若き旗手として国内外で注目されている。

AIは敵ではなく、コラボレーターなのか?

最初に、沙羅さんは日本のアーティストの2人に「AIは、コラボレーター(協業者)として機能していますか?」という問いを投げ掛けた。

真鍋さんは「実際、AIは単なるコラボレーター以上の存在です。なぜなら、AIは私のことを誰よりもよく知っているからです。単なるツールの域をはるかに超えています。インターネットが登場した頃とほぼ同じインパクトを感じます。しかし、クリエイティブに関しては人間がやった方がいいところとAIがやった方がいいところがあります。作りたいものによって、バランスを取らないといけないと思います」と答えた。

それに対してアルトマンさんは、「アーティストとAIが共同作業であるという点には本当に同意します。そして、この取り組みが今後ますます加速していくことを願っています。創造的なひらめき、何かを表現したいという欲求は、人間から生まれるものであり、ツールと親密なコラボレーターの間の何かとして、AIが役に立つことを願っています。私たちは新しい種類のアートを想像し、迅速にプロトタイプを作り、迅速に制作し、緊密なフィードバックサイクルを維持し、新しいアイデアを考案し、インスピレーションを得ることができます。表現が容易になることで、素晴らしいインスピレーションが得られるでしょう。カメラが初めて登場した頃の、絵を描いていた人のことを思い起こさずにいられません。カメラは全く新しい可能性を切り開きました。それはAIというよりもツールのようなもので、協力者のようなものだったのかもしれません」と返した。

草野さんは聞いた。

「日本は今後、AIをどのように統合していくと考えますか? 日本にはアニミズムという考え方と、テクノアニミズムという考え方があります。コンピューターやロボット、回路など、あらゆる物に精霊が宿ると信​​じられています。そのため、テクノロジーを仲間や守護者として認識しています。だからこそ、多くの日本人はテクノロジーに対して非常に楽観的なのです」

アルトマンさんは「もちろん、そう思います」と答えた。

「もちろん、そう思います。私の人生を通して、日本は未来のテクノロジーの中心地でした。そして、それは常に私に大きなインスピレーションを与えてきました。私は日本の大ファンですが、それ以上に、未来の可能性を押し広げようとする日本の精神に惹かれました。テクノロジーが融合し、私たち全員にとって素晴らしい生活を築いてくれるという信念です。これは非常に特別なプロジェクトだと思います」とアルトマンさん。

日本文化の最も特別な点の一つは、ハイテクと職人技への極端なこだわり

草野さんは好きなアニメは何かと聞き、アルトマンさんは『デスノート』と答えた。

それに対して草野さんは驚いたように「かなりダークな作品ですよね!」と返した。

「日本はアジア的な社会だと思いますが、素晴らしい職人技がたくさんあります。そして、テクノロジーはそれをうまく表現していると思います。例えば、3Dプリンターがあり、Soraはまるで実写のようです。ですから、私たち日本人とAIは互いに協力できると思います。AIは職人技の対極にあると言われることがよくありますが、実際には、データセットや録音といったものも職人技であり、AIも新しいタイプの職人技なのです」と草野さん。

そこにアルトマンさんが同意した。「実は以前から言おうと思っていたので、今言っておきます」

「日本文化の最も特別な点のひとつは、ハイテクと職人技への極端なこだわりだと思います」この発言には登壇者全員が大きくうなずいた。

「それは本当に素晴らしいことです。テクノロジーがそれを成長させる機能を持てば、世界はまさに日本の目指す方向に向かうと思います。人間の職人技、本当に素晴らしいものを作ることの価値は、ますます重要性を増していくと思います。だから、日本の重要さは増すと思うのです」とアルトマンさん。

沙羅さんも「職人技とAIについて話すと、他の国では異なるものと捉えられます。でも、日本では、あらゆる技術や職人技が、まさに隣り合わせに存在するのです」と、応じた。

なぜ、日本はそうなのだろうか? とアルトマンさんに問いが投げ掛けられた。

アルトマンさんは「私たちは多くの日本企業、クリエイターと仕事をしていますが、日本のニーズ、日本のスキル、日本の文化は、私たちが技術を提供するのに、まさに理想的な国なのです」と答えた。

「日本は私たちの最初の海外オフィスでした。設立後すぐに、日本が生成AIという技術を有意義な形で取り入れていることが分かりました。私たちはそれを支援したいと思ったのです。日本とAIの未来がどうなるのか、とても楽しみです」

沙羅さんは、「日本とAIについて、なにかコメントはありますか?」と真鍋さんに聞いた。

「諸外国より、テクノロジーに対して楽観的というのはありますよね」と真鍋さん。「法律的なことでも、日本は有利な点が多いと思うので、日本にしかできないAI利用というのはあると思います」

OpenAIはクリエイターにとって意義のあることをしたい

真鍋さんの法律的なことという話を受けて、安全性と責任について沙羅さんはアルトマンさんに問うた。

「私たちはクリエイターの権利を尊重し、クリエイターにとって意義のあることをしたいと考えています」とアルトマンさん。「創造的な仕事に費やす価値と労力を非常に尊重しています。また、人々が過去の作品からインスピレーションを得てきた長く豊かな歴史もあると考えています。私たちはそれを支援したいと考えています。しかし、テクノロジーを提供する者としての私たちの役割は、クリエイティブコミュニティーと対話し、私たちができることを模索していくことです。人間の創造性を豊かにし、素晴らしいクリエイターたちが疎外感を感じないようにすることは、私たちにとって非常に重要です」

多くの人が話題にするクリエイターの権利について、アルトマンさんは腐心していると感じた。しかし、同時に、そのことがテクノロジーの進化を抑制してしまうよりは、前に進まなければならないと感じているとは思った。

善なるものを追求しなければならない

最後に筆者も質問するチャンスをもらったので、「AI を利用して我々の生活を壊滅的なものにするのではなく、より良いものにするために、何を一番心に留めておくべきでしょう?」と聞いてみた。

アルトマンさんは「今日 AI を使用することには明らかな利点が数多くあります」と答えた。

「AIは生産性を高めるのに役立ちます。それはすでに新しい科学の発見に役立っています。壊滅的ことが起こらないように、追跡し続けることは非常に重要だと思います。これらのモデルをどうテストするか、安全基準をどう定義するかについて、世界中で共通の基準を構築することは、今日非常に重要かつ緊急であると思います。確かに、再帰的な自己改善が可能な AI モデルには追加の安全性テストが必要です。サイバーセキュリティー同様です。世の中にはAIの活用方法がいろいろあると思います。良いものもあれば悪いものもあるでしょう。でも、悪いものを避けることに集中する必要があります」と、しっかりとした回答をくれた。

アルトマンさんは、世界を変えた知性の持ち主なのに、高圧的でなく、非常に思慮深く対談に応じ、質問に答えてくれていた。ChatGPTが与えた衝撃に対して、なんともおとなしく控えめな人だと感じた。

生成AIの進歩はあまりに速く、それに対して不安になったり、反発心を持ったりする人が多いのはよく分かる。しかし、パンドラの箱はすでに開かれた。そして、今回の取材を通じて、箱を開けたのがアルトマンさんで良かったなと思った。いずれにせよ、あらゆるテクノロジーを使う時に、一番必要とされるのは『善なる心』なのだ。そういう意味で、筆者はアルトマンさんの人間性と、テクノロジーの開く未来を信じようと思った。

(村上タクタ)

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村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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