アップルWWDC 25、現地取材で感じたLiquid Glassと2年目のApple Intelligence

WWDC 25の現地レポートをお届けしよう。また、今回はハードウェアの発表がなかったので、いろいろと資料を整理して理解を深めるのにも時間がかかってしまった。まずは、現地の雰囲気と、要点をどう感じたかをお伝えする。

やっぱりWWDCの雰囲気は最高だ!

朝、ホテルを出た時には曇り気味で、「WWDCで雨は降ったことないけど、降ったら屋外会場はどうなるの?」と心配になったが、Apple Parkに着く頃にはウソのようにドピーカンになってた。

現場についてから、小一時間ほど待機なのだが、我々だって年に一度しか来ないApple Park、いろいろ見てみたい場所もある。もっとも、特設ステージ以外の場所に行こうとしたら、怖い警備員風の人に追い返されるのだが、それでもできる限りウロウロしたいのが人情というものだ。

会場にはやたらハイテンションなスタッフの方々、エンジニアの方、そこら中で撮影している我々メディアの他に、アップルのVIPなどもいらっしゃる。アップル・フェローのフィル・シラーがいたので一緒に写真を撮ってもらったりした。

そうこうするうちに、壇上に「Good mornin’  Welcome to WWDC」とティム・クックが現れて、WWDCが開幕する。

このティム・クックとクレイグ・フェデリギが壇上にいる数分だけが現地取材の大事なポイントではあるので、望遠レンズで頑張って写真を撮る。EOS 6D Mark IIの威力と、ちょっと足で稼いだので、かなりアップの写真が撮れた。うれしい。

ふたりで数分話して、檀上から降りて、そして動画が始まる。

今回のオープニングはApple TVで撮影され、全世界の映画館で上映される、ブラッド・ピット主演の『F1』をパロディにしたもので、フェデリギがApple ParkのRingの上をF1マシンで駆け抜けるというものだった。やっぱり、アメリカ人はオーバルコース(というか真円だが)が好きなのかな……と思う一幕だった。ほんと、フェデリギさんふざけるのが好きですね(笑)

筆者はF1観戦も好きなので、この映画を見るのを楽しみにしている。

OSバーションのネーミングルールが統一された

さて、本題。

ざっくりとまとめるとKeynoteの発表は、Apple Intelligenceがさらに進化するという話と、全モデルのOSデザインが『Liquid Glass』というデザインコンセプトの元に統一されるという話だった。

初代iPhoneからのスキューモーフィズム(実際のモノを模したデザイン)と、iOS 7以来のフラットデザインに続いて、3度目のビッグチェンジということになる。しかも今回は、Liquid Glassで全モデルを統一し、さらにこれまでバラバラだったOSの年度ごとのバージョンナンバーを全部、西暦の下2桁に統一するということで、OSの名前は以下のようになった。

iOS 18からiOS 26っていうのも変だが、macOS 15 SequoiaはmacOS 26 Tahoe、そしてvisionOSは、2からいきなり26へという変更。世代ごとの統一感が出るのはいいが、まだなんかしっくり来ない気がする。

独自路線のApple Intelligenceはどう進化を続けるのか?

Apple Intelligenceの進展は正直なところ、まだ十分な状況だとは思えない。昨年掲げたのにまだ搭載されていない機能もあるほどだ。進捗が良くないというよりは、去年大風呂敷を広げすぎたというところだろうか?

特に『より高度な、自然な会話が可能なSiri』は、登場する予兆さえもない。

たしかに、ChatGPTなどと会話していると、Siriは進化すべきだとは思うが、ローカル側で処理するApple Intelligenceに高度な会話を要求するのはなかなか難しいようだ。明言はされないが、少なくとも26シリーズの間に登場しそうな雰囲気はなさそうだった。

登場が遅れそうといえば、ChatGPT以外の社外生成AI、つまりGeminiなどの搭載も遅れそうだった。少なくとも当面は、Apple Intelligenceから使えるのはChatGPTだけという状態が続きそうだ。

いろいろ、大変そうではあるが、デバイス側で生成AIを使う、Private Cloud Computeを使って個人情報を外に出さずに処理する……というのは、アップル独自の方向性なので、それはそれで良いのではないかと思う。

OpenAIや、Googleなどの方向性も、計算リソースをかけたほどの収益が上がるようになる時が来るのかは不明。今のところ、猛烈に投資して、先陣争いをしているだけの段階ではある。もちろん、この先陣争いを制した先に、圧勝があるのかもしれないが、今のところ先は見えない。Open AIの黒字化は2029年以降と言われており、経営的には先行きは不透明。GoogleはGeminiで戦うために、検索や広告での収入を諦めなければならないような状態。

ならば、アップルの端末側で処理する独自路線というのはアリではないかと思うのだ。少なくとも、それによりiPhoneが売れるのなら、アップルは利益を上げ続けることができるわけだから。

すべてのアプリにApple Intelligenceを組み込めるようになる

今回の発表の中で、一番注目すべきは、Foundation Models frameworkだろう。

これを使うことで、Apple Intelligenceのパワーを一般のデベロッパーもアプリに組み込むことができる。

プレゼンによると、最小でわずか3行のコードを書くだけでアプリにApple Intelligenceを搭載することができるのだそうだ。アイデア次第ですごくユニークなアプリが作れそうな気がする。

期待されているような大きな機能の搭載は遅れているが、全体的に見ると、一般ユーザーが使う普通の機能にも着々とApple Intelligenceが使われるようになってきていると思う。

録音音声の文字起こしや、通知の集約などの機能がそうだが、電話にも面白い機能が搭載された。

設定すると、連絡先にない番号から電話がかかって来た場合、まずは生成AIの音声が電話に出て、要件と誰なのかを聞いて、それを通知で表示するようになる。その通知を見て、迷惑電話だったらそのまま放置。出た方が良い電話ならそこで出ればいい。

迷惑電話が増えすぎた状態で、なかなかのナイスアイデアだと思う。

筆者も仕事中に、迷惑電話や、セールスの電話で集中力を切られることも多い。この機能は便利に使えそうだ。

また、メッセージ機能でも知らない番号からの連絡はすぐには通知しないようにできる。自分の時間をセールスや詐欺に費やすことに対して、ようやく対策が取られるようになってきたということだ。

『ライブ翻訳』も夢のような機能だ。メッセージ、FaceTime、電話に組み込まれ、テキストや音声をApple Intelligenceを利用して、その場で翻訳し、多言語間コミュニケーションを実現してくれる。

自分が使えない言語でも、電話をかけることができるようになるなんて、ずっと前から望まれていたことだと思うが、まさかこんなにあっさりと実現するとは思わなかった。

この機能は、こちら側がiOS 26以上で、Apple Intelligenceを利用できれば、両側の音声を翻訳できる。相手がAndroidでも、有線電話でもライブ翻訳を利用することができるのだ。

Apple Intelligenceを上手に利用した機能がどんどん追加される

Apple Intelligenceを活用し、ワークアウトデータやフィットネス履歴に基づいて適切なコーチングをしてくれるというWorkout Buddyも気になる機能だ。

これこそ、AIで実現して欲しい機能だったので、たいへん喜ばしい。

ただし、コーチングのポイントや、音声データなどは、fitness+のものを利用しているらしいので、fitness+が利用できない日本では、現時点での導入は難しそう(fitness+のコンテンツ化はローカリティを重視するということで、動画に登場するモデルも日本人にして、楽曲もふさわしい日本の楽曲を中心に使いたいそうだ。だから道のりは長そう)。

しかし、確認したところ、このWorkout Buddyは言語設定を英語に変えさえすれば日本でも利用できるそうなので、ワークアウトの時だけ言語設置を変更して使うこともできそうだ。楽しみ。

カメラに見せた(撮影する必要はない)ものを取り扱うことができるVisual Intelligenceがかなり便利だが、iOS 26でiPhoneのディスプレイに写っているものについてもVisual Intelligenceを使えるようになる。

画面キャプチャを撮る操作をすると、ご覧のような画面になる。通常通り、画面キャプチャとして保存することもできるし、Visual Intelligenceを使うこともできる。

たとえば、画面に写ってるもの何か聞いてみたり、ネットで販売されているものを探したりすることができる。

たとえば、イベントについて書かれている画像であれば、それをそのままカレンダーに登録することもできる。

名刺を撮ったら連絡先に登録することができるのだろうか? その点については未確認だが、もしそうならかなり便利になると思う。

生成AIはSwiftなどのコーディングにも使える。すでに、エンジニアの仕事は、ゼロからコードを書くことではなくなって来ているが、アップルデバイスも同様の流れにあるということだ。となると、本来開発者の集まりであるWWDCはこの先どういうイベントになっていくのか、ちょっと不思議でもある。

その他、まだまだ数多くの機能にApple Intelligenceが搭載されていく。楽しみだ。

ただの『透明』ではなく、『液体のように動く透明』がLiquid Glass

次なる大きな変更は、Liquid Glassの採用だ。

iOSからApple TVまで、すべてのOSのインターフェイスデザインが統一され、このLiquid Glassというデザインになる。

単に、透明なだけでなく、すべてがレイヤーを持ったデザインになり、それぞれ、透過、屈折、反射の見え方を反映するので、静止画で見ると分かりにくい部分もあるが、実際に目の前で見ると、非常にシンプルで分かりやすいインターフェイスだ。

増え続けて混乱の度合いを増していく情報をいかにシンプルに、いかに整理して扱うかということが今後のOSには求められる。そのひとつの回答がLiquid Glassなのだろう。

ムービーの中には、何度もご覧のようにアクリル(らしきもの)で作ったコンセプトモデルが表示されていた。もし、本当にこんなものを作ってみてアイデアを検証しているのだとしたら、非常にコストがかかっているものだなぁ……と感心する。

Classic Mac OSの時代にあった、フォルダを色で区別する機能が復活する。

ラベル機能の延長的にフォルダの色を変えて、絵文字を貼ったりできるようだ。フォルダの色はカラーホイールで、もっと微妙な色合いを作ることもできるが、ラベル自体の色は9色。

ついにiPadで自由なサイズのウインドウ表示が可能に

その他にも数多くの機能が発表された。

iPadOSはついに、アプリを自由な位置に自由なサイズで表示できるようになった。

また一歩macOSに近づいたわけだが、MacはMacで、高性能高機能になり続けているから、iPadがMacに取って代わるということはないのだろうけれど、両方のすき間が埋め合わされていることは確かだ。

この機能は高性能なiPad Proだけでなく、すべてのiPadで可能になるとのこと。

visionOS 26もユニークな進化を続ける

visionOSのアップデートもすごい。

visionOS 26では、iPhoneやMacにあるのと同じようなウィジェットが壁に貼れるようになる。一度設置すると、次にVision Proを立ち上げた時にも同じ場所にあるというからびっくりだ。

またビデオ会議などに使える空間ペルソナの表現力が高まった。Vision Proを着けて、このアバターを使ってビデオ会議などに出ることができる。これまた素晴らしい機能だ(もうパジャマのまま会議に出られるかもしれない)。

まだまだ、たくさん紹介したい機能があるのだが、ここからはポイントを絞って、現地取材ならではのレポートをお届けできればと思う。以後の記事をお楽しみに。

質問などあれば(取材で答えが得られるかどうかはわからないが)、Xにお寄せいただけると幸いだ。

X(ThunderVolt)
https://twitter.com/ThunderVolt_mag

(村上タクタ)

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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