来日20周年とリンゴのシュウェップス|ビートルズのことを考えない日は一日もなかったVol.38

大晦日のカウントダウンを六本木キャバンで迎えようと思ったものの、まさかの休業で念願叶わず、失意のまま迎えた1986年。それでもビートルズ活動は止まることを知らず、新年早々、ビートルズ復活祭に参加するためいつもの九段会館に向かった。

『ビートルズ復活祭』で飲んだシュウェップス

リンゴがCM出演した炭酸飲料水のシュウェップス

日にちは1月15日の祝日。すでに復活祭に通い始めて4年、コンプリート・ビートルズ・ファンクラブのフィルムコンサートから数えると6年目、主要どころの映像はほぼ見てしまっていたため、その日を心待ちにしていたというよりは、ファンとしての義務、あるいは習慣として参加していただけにすぎなかった。ということもあるのか、この日のことはほぼ記憶にない。誰と言ったのかさえ忘れてしまった。

ひとつだけおぼろげに覚えているのは会場ロビーでシュウェップスの試飲会が行われていたこと。日本での発売が始まった英国発の炭酸飲料のシュウェップスのテレビCMにリンゴが出ていたことでのタイアップかと思われるが、小さなカップに入ったシュウェップスが来場者配られ、のどを潤した。このシュエップスは炭酸の加減が刺激的かつ美味で、当時はよく飲んでいたが、いつのまにか消えてしまったのが残念。

余談だが、リンゴが出演した日本のテレビCMといえば、70年代にレナウン(大林宣彦が監督)、90年代にTAKARAすりおろしりんご(リンゴスッターでお馴染み)があるが、我々世代にとっては断然シュウェップスになじみがある。

話を復活祭に戻す。知り合いのファンの伝手で86年1月の復活祭の内容について調べてもらうと、この日は来日公演の映像を心に編成されたもよう。そう、この年は来日20周年のアニバーサリーイヤーだったので、それを記念しての上映が多かったようだ。記憶にないが、ほかに、映画は『ヘルプ!』を上映したのだそう。

1986年はビートルズ来日20周年の記念イヤー

ビートルズ復活祭86年春のプログラム

それから3か月後、今度はよみうりホールで開催された復活祭にまたもや足を運んだ。この時のことは多少記憶にあり、地元の友達KKくん、Fくん、Sくん、この頃はまっていた麻雀仲間と一緒だった。いつものように早い時間から列に並んでいると、主催しているクラブの人から声を掛けられ、開演までの雑務を手伝ってもらえないかと相談を受けた。条件は開場前の席確保と欲しいグッズを1点。

開演まで時間はたっぷりあるし、ただ並んでいるだけでは能がないと思い、4人で引き受けることにした。業務は商品の運搬と陳列、お客さんの行列整理や案内。初めてのことで慣れない部分もありつつ、なんやかんやで慌ただしく、あっという間に2~3時間が経過した。この頃のファンは概ね若く、とくにグッズ売り場は彼らの熱意で雑然とした空気だったから、業務を終えた後ぐったりと疲労してしまった。

映画『イエロー・サブマリン』のパンフ(レプリカ)を受け取り、事前に確保していた席(二階の最前列)に移動し、いよいよフィルムコンサーが開演。この日のメニューは前回の流れで来日20周年をハイライトに添えた編成で、ドキュメント「THE BEATLES 100 HOURS IN JAPAN」を上映。たしか、82年にNHK教育で放送された『日本を変えた来訪者ビートルズ』などの映像を編集した独自制作のドキュメントだった気がする。ほかに、ジョンの『ラスト・ライブ・ショウ』、ポールの『メイク・ア・サウンド』があり、最後に映画 『イエロー・サブマリン』というラインナップだった。

なぜ詳細を記せたのかというと、手元に当日のパンフレットが残っているから。ビートルズ・クラブはこの年から復活祭のたびにパンフレットを製作しはじめ、これはもしかしたら雑務の手伝いの謝礼としてもらったのかもしれない。いまとなっては貴重な資料である。だが、わたしが熱心に復活祭に参加したのはここまでで、その後は自然と足が遠のいてしまった。

東芝EMIから出た手ごろな価格のVHS

『ザ・ビートルズライヴ』VHS

復活祭に参加しなくなった理由には、先述したようにビートルズの映像はほぼほぼ観てしまったことに加えて、この頃から徐々に正規、ブートも含めて多くのVHSが出回るようになり、家で映像が楽しめるようになってしまったことが大きい。正規で言えば、84年にVAPから日本公演の模様を収めたVHSが発売。これは1万8800円と高価ゆえ買うことができなかったが、85年に東芝から出た『ザ・ビートルズライヴ』、翌年同じく東芝から出た『ビートルズスペシャル』は比較的安価で手を出しやすかったこともあり、この2本は家で楽しめるビートルズ映像として広く訴求した。

ちなみに前者は64年4月に収録された『Around the Beatle』という番組で「ツイスト・アンド・シャウト」ほか全7曲を演奏。すべて事前に録音した音源に合わせた疑似演奏ながら臨場感のある映像で、7曲の中の1曲はビートルズの初期代表曲をメドレーでつないだもの。これはファンになりたての頃からよく目にしていた映像であったものの、正規盤でクリアな画質で観られたことに感動を覚えた。後者は63年から64年にかけて3度出演した『Ready Steady Go!』での演奏シーンをまとめたもの。未見のものも多く、当然のこと画質も上場、さらには途中でインサートされるメンバーへのインタビューの字幕も嬉しかった。

原宿に移転した『ゲット・バック』

『ザ・ビートルズ・イン・東京』

冒頭で、86年はビートルズ来日20周年と記したが、この年はそれを記念して多くのアイテムがリリースされた。レコードではオリジナルアルバムのモノラル盤の再発(82年に出たものを帯を変えて)や、来日時の空港での写真をジャケにした『TOKYO DAYS』。書籍では『ザ・ビートルズ・イン・東京』『ビートルズ日本盤ディスコグラフィ』が発売された。レコードには触手は伸びなかったものの、書籍2冊はいずれも力作であり、とくに『ビートルズ日本盤ディスコグラフィ』はその後の研究に大きな影響を与えた一冊と言える。

今回この原稿を書くために久々に読み返してみたら『ザ・ビートルズ・イン・東京』の最後の方に掲載されていたひとつの広告に目がとまった。当時のビートルズファンなら一度は行ったことのある、なかったとしてもその名を目にしたことのあるビートルズ専門店ゲット・バックである。オープン当初は高田馬場店にお店があったはずだが、住所は原宿になっている。この頃に引っ越しをしたのかもしれない。

ゲット・バックの高田馬場には行ったことはなかったが、原宿店にはそれなりに思い出がある。ブートのレコードとVHSは西新宿で集めていたから、ゲット・バックで買ったことはなかったのだが、生写真などのグッズはよく買っていた。が、2年後、衝撃のブート『ウルトラ・レア・トラックス』のCDはこの店で手に入れた。

この記事を書いた人
竹部吉晃
この記事を書いた人

竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。
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