デビュー20周年怒涛のリリースラッシュ到来|ビートルズのことを考えない日は一日もなかったVOL.21

1982年はビートルズが「ラブ・ミー・ドゥ」でレコードデビューしてから20年目を迎えるアニバーサリーイヤー。ということで、この年は1月のオリジナルアルバムのモノ盤を皮切りに続々と毎月のように特別企画盤がリリースされた。そのなかでも大きな話題を呼んだのが、4月1日にリリースされた『リール・ミュージック』という、ビートルズが主演した5本の映画の中で歌われた曲で選曲された編集アルバムであった。

80年代ビートルズを代表する「ムービー・メドレー」

『リール・ミュージック』のジャケット表裏

『ハード・デイズ・ナイト』『ヘルプ!』『MMT』『イエロー・サブマリン』『レット・イット・ビー』から年代順に14曲を収録した選曲は、そのままビートルズ史にもなっていて、『赤盤』『青盤』とはまた違った印象のベスト。封入されていた凝った作りのブックレットも見応えがあり、なかなか楽しめるレコードであった。当時はまだ『レット・イット・ビー』と『ハード・デイズ・ナイト』以外の映画は未見だったので、レコードを聞き、ブックレットをめくりながらまだ見ぬ映画に想像を掻き立てた。

21日にはそのアルバムとの連動シングルとして「ビートルズ・ムービー・メドレー」がリリースされた。なぜかアルバム未収録のこの曲は「マジカル」「愛こそは」「悲しみは」「恋する二人」「ハード・デイズ・ナイト」「涙の乗車券」「ゲット・バック」の7曲をノンストップでまとめたもの。完全に去年ヒットしたスターズ・オンを意識したもので、本家なのに二番煎じというこの企画の是非はさておき、プロモーションビデオは観るべき場面が多かった。ジョージの「オール・ゾーズ・イヤーズ・アゴー」同様過去映像で構成したビデオだが、メドレーに合わせて劇中の歌唱シーンや名場面を編集術が素晴らしく、未見だった映画の映像はとくに嬉しかった。

『リール・ミュージック』に封入されていたブックレットより

そこそこ話題になり、チャートをにぎわせ、ヒットもして、『ファントマ』や『ベストヒットUSA』といった洋楽番組で頻繁に流れていた。その都度録画していたのは、いつも途中までしかオンエアしてくれないから。いつかフルで流れるのではないかと期待してのことだった。同じような経験をした人も多いのではないか。

余談だが、この年の『ファントマ』は年間を通してートルズを取り上げてくれていたし、『ベストヒットUSA』はリクエスト大会でビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」の映像を流してくれたことがあった。確か17位だったような記憶。余談だが、このときのリクエスト大会で流れたクイーンの「サムバディ・トゥ・ラブ」のビデオを見て、自分の中で一気にクイーン熱が高まった。話を「ビートルズ・ムービー・メドレー」に戻して、このレコードは80年代のビートルズを語るうえで欠かせないものだと思うのだが、現時点では未CD化でビデオも未ソフト化。もはやなかったことになっているのが不思議であり、残念である。

昭和版『1』というべき内容のベストアルバム

USとUKでは選曲が異なる。日本盤はUSと同じ

その後、6月には『赤盤』『青盤』のカラーレコード、8月には『EPコレクション』、10月には『ビートルズ・イン・イタリー』『デッカ・テープス』(この音源には驚いた)と続き、12月にはLP『20グレイテスト・ヒッツ』と「ラブ・ミー・ドゥ」の12インチシングルがリリースされた。前者はアメリカとイギリスのそれぞれの国でチャート1位になった曲を集めたアルバムで、いわば昭和版の『1』といった印象。アメリカと日本盤は同じ選曲でイギリス盤は別選曲と知るのは少したってからのことだ。

ヒット曲集という内容に興味がもてず、購入には至らなかったのだが、「ラブ・ミー・ドゥ」はB面にリンゴのドラムバージョンが収録されていたのは気が利いていた。プロモーションビデオも秀逸でこれも何度も繰り返し見た。これだけのリリースがあってはさすがに小遣いが足りず、人生初のバイトを始めたのだが、買うレコードはまだ聞いたことのないソロのアルバムが多かった。

ジョージ、ポール、ジョンもレコードをリリース

事件当日に撮影されたというジャケット写真が印象的だった『ジョン・レノン・コレクション』

ソロと言えば、ジョージの『ゴーン・トロッポ』がリリースされたのもこの年の秋だった。ほかにもポールの『タッグ・オブ・ウォー』からのシングルカットで「テイク・イット・アウェイ」「タッグ・オブ・ウォー」(いずれもビデオが秀逸)、そしてマイケルとの「ガール・イズ・マイン」が『スリラー』からの第一弾シングルとして続いた。ジョンも『コレクション』というベストが出た。すでに『シェイブド・フィッシュ』というベストを持っていたし、ソロも買い集めたので、真新しい曲はないのだけど、事件当日の写真というジャケが目を引いた。神保町の三省堂の裏にあったビクトリア(スキーショップのビクトリアがやっていたレコード屋)で買ったらラミネート加工されたジャケ写が入っていたのは、なんだったのだろうか。ジョンのベストはこのあとも手を変え品を変え出たけど、いちばん思い入れのあるものはこの『コレクション』と言える。

正規盤のほかに西新宿に行っては海賊盤も追いかけていた。80年以来44年間ビートルズのことを考えない日は一日もなかったのだが、82年が一種のピークだったような、いま振り返るとそんな気がする。

デビュー20周年キャンペーンで作られたロゴ
この記事を書いた人
竹部吉晃
この記事を書いた人

竹部吉晃

ビートルデイズな編集長

昭和40年男編集長。1967年、東京・下町生まれ。ビートルズの研究とコレクションを40年以上続けるビートルマニア兼、マンチェスターユナイテッドサポーター歴30年のフットボールウィークエンダーのほか、諸々のサブカル全般に興味ありの原田真二原理主義者。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

Pick Up おすすめ記事

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...