世界に一つだけの刺繡ジャケット。これはもはや至高のアート。

  • 2023.07.01

刺繡の入ったジャケットを着たいという願望から刺繡の技術を一から独学で学び、自分の感性に重きをおいて制作する世界に一つだけの刺繡ジャケットがある。想いの丈を刺繡に乗せたオリジナルのメッセージは、製作を手掛ける手刺繡アーティスト、ヘンリー・ハーパーの等身大であり、見るものを魅了する。

好奇心から生まれた珠玉の芸術品。

制作を始めるときはまず始めにメッセージが浮かんでからジャケットを選ぶ。数多くのジャケットの中からピンときたものを選ぶが、しっくりこないときは何年も寝かせるときもある

手刺繡アーティスト、ヘンリー・ハーパーはテキサス州・オースティン出身。10年前、21歳の時、チャンスに溢れたニューヨークへ魅力を感じて移住。生まれ育った小さな街にはない世界を見たいと思った彼にとってニューヨークへの移住は自然な選択だった。

現在はブルックリンをベースにヴィンテージジャケットに刺繡を施した作品制作をしている。きっかけは、刺繡の入ったジャケットを着たいというピュアな願望から。

マンハッタン、ガーメンツディストリクトにある縫製工場に電話をかけたところ、聞いた値段は当時のヘンリーには優しいものではなく入手するのは難しかった。「ならば自分で作ろう」と決意をし、右も左もわからない刺繡の技術を一から独学で学び、アーティストへと成り上がった。

もちろん当初は苦労や苦悩も多く、自分でも何をやっているのか分からなかったが、現在の技術やスタイルは失敗による功績であり、努力の賜物。ベースであるジャケットは新しいものではなく、ヴィンテージをセレクトしている。ヴィンテージにこだわる理由は自分が手にする前の時間をどう過ごしたのか、破れていたり、縫い直されていたり、その洋服の物語を感じられるから。

背中一面に施された刺繡に目を奪われるが、よく見るとチョークで書いた下書きがうっすらと残っている。これもまた味があってより魅力を引き出す

ひとつの作品を制作する時間は文字数にもよるが大体40~100時間ほど。まず、チョークで下書きをしてからその上を手で刺繍していく。旧いワックスジャケットなどは生地がとてもデリケートなので、通常よりも時間を要する。

ワークジャケットなどは分厚くて扱いやすいが、部分的に破れていると丁寧に縫う必要があったり、ポケットなどの生地が重なっているところは硬くて針が通らないので、ペンチを使って糸を通す。刺繡だけでなく、すべてのプロセスに時間を要するのだ。過去には6mの大きなキャンバス生地の作品制作をし、制作に300~400時間、仕上げるのに数カ月かかったこともある。

また、ヘンリーを語るうえで欠かせない刺繡のメッセージは全てオリジナル。自身が普段感じたことや重要だと思っていること、街でふと目に入る言葉などからインスピレーションを受け、複雑な文章は使わずにシンプルかつ印象的なメッセージを発信し続けている。インプットとアウトプットを繰り返し、ヘンリーにしか作り出せない芸術でより高みを目指す。

最近では、刺繍を施したブランケットの周りに、ウッドボードを文字にカットしたものを配置して、手法を超えた壁全体のコラージュ作品も制作している
手刺繡アーティスト・ヘンリー・ハーパー|唯一無二のメッセージと真心込めて作るこだわりが散りばめられたオリジナルの刺繡アーティスト。ブルックリンを拠点とし、デトロイト、テネシー、メンフィス、マンハッタン・ローアーイーストなどで展示の経験を持つ

インプットとアウトプットを繰り返し、自身も成長しながら作り続ける作品。

刺繡の制作は時間をとるため、時に「なぜ僕はコンピュータの仕事をして稼ぐことを選ばなかったのだ?」と自問自答するときもあるが、やはり何かのプロジェクトに着手しているこの時間が好きで気持ちが落ち着く。

こんなにも繊細な針で、屈強なジャケットを全てハンドメイドで刺繡していく。誰にも想像できない、自分の頭の中を具現化していくための商売道具であり、パートナー的存在だ。

ヴィンテージジャケットの良さは風合いや背景に想いを馳せられるだけではない。ポケットからユニオンタグやレシートなど不思議なものを発見することもある。

誰かが使用していたことが形としてわかるのはヴィンテージならではの面白さであり、抜け出せない魅力。

青いブランケットは昔エアラインで使用されていたもので、あえて旧く破れたりしていたものから制作をした。旧いものをリメイクして命を吹き込み、新しいものへと昇華させる。

以前はスリフトストアにヴィンテージのジャケットを探しに行っていたが、最近はインターネットで探すことが多い。頭の中にあるイメージに近ければ、少しプライスが高くてもプロから買うのがヘンリーのスタイルだ。

この10年で刺繡のスタイルは変化した。当初は、自分のイメージに合うフォントのサイズが見つけられず苦労したが、今使用しているレターサイズには満足感を得ている。現状でとどまらず試行錯誤してベストな状態へ。

(出典/「CLUTCH2023年6月号 Vol.91」)

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