シルバーレイクの湖畔に佇む「V.D.L. Research house」。
賑やかなシルバーレイクの中心地からは少し離れ、自然豊かで静かなエリアにあります。緑に溶け込んでいて、どこまでが敷地かわからないほど。
プレートにも名前が刻まれています。
ここにはかつて、ノイトラと妻、息子が住んでいました、現在はCal Poly Pomona大学に寄贈され、建築学科の研究所になっており、バックハウスには教授が住んでいます。
メイン棟、バックハウス、地下の3パートで構成されており、メイン棟は1932年、バックハウスは1939年に建設されましたが、1963年に火事でメイン棟が燃えてしまい1966年に再建築されたものです。
入り口を入ってまず目に飛び込んできたのは、2階へ上がる階段の斬新なデザイン。階段が一段一段、上から吊るされており、まるで宙に浮いているよう。
階段を上がって2階のリビングスペース。窓に囲まれ、開放感溢れる気持ちのいい空間になっています。
ソファ、本棚など、家具の多くが備え付けになっていて、これは、空間をより広く見せるためのデザインなんだそう。本棚には住んでいた当時の本が並びます。
木目調のシックな室内に黄色のソファが映えますね。
鉄筋コンクリートとガラスによる構造とフラットな屋根で出来た、四角い形が特徴の建築様式をしています。インターナショナル・スタイルと呼ばれたこの様式は、1920年代までのアール・デコ様式などに見られた華美な装飾をなくし、合理的・機能的な様式を目指した世界共通の近代建築。ドイツで考案され、それ以降アメリカにおいてはカリフォルニアで最初に展開されたものです。
それが、ミッド・センチュリー期にカリフォルニア・モダンデザインとして大きなムーブメントを引き起こしたのですが、その背景にはオーストリアから移住してきたノイトラの存在が大きく関係していたと言われています。
ノイトラが、建築において最も重要と考えていたものは、「人」。人と自然を調和させるのが家であると考えており、家は「膜」であって「シェルター」ではないという考えから、膜で優しく覆うようなイメージでデザインしていたんだそう。だから、デザインと実用性、快適性を考慮した上で、本当に必要なものを見極め、ミニマムにデザインされています。
キッチンも備え付けのものが多く、まな板の右側に見えるのは、備え付けのジューサー。まな板も、カウンターにはまるようになっており、スッキリとした空間づくりに余念がありません。
また、キッチンについている木の扉を開けるとリビングと繋がり、機能的。
居室は、まるでビジネスホテルの一室のような、シンプルな空間になっています。
廊下は壁と扉の区別がつかないような、こちらもまたミニマムなデザイン。反対側の壁はガラスになっていて、パティオが見下ろせます。
木目の壁と広がるグリーンが対照的で、とても引き立っています。
家の中のスイッチさえも、モダン。
また、興味深いのは、家のいたるところにスイッチがたくさんあるところ。この時代にして、全てを電動で動かせるシステムにしたかったのだそう。
時代を感じる、温度計も。
そして3階部分もガラスで囲われた空間。ベランダに出るとシルバーレイクが見渡せて、とても見晴らしがいい。
こちらはパティオ。大きな木に見下ろされるようなスペースで、木陰になっていてとても気持ちがいい空間。
カーテンが、室内でなく外のパティオ側についている! 室内は屋外のように、屋外は室内のように感じるのは、きっとこういった細かな工夫があってこそ。随所にこういう面白い工夫があって、見ていて飽きない。
毎週土曜は予約なしで見学可能。
【DATA】
V.D.L. Research house
2300 Silver Lake Blvd, Los Angeles, CA 90039
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