【鐵馬乗り的銘品図鑑】G-1と並ぶ名作、冬季用フライトJKT「U.S.NAVY TYPE G-8 WEP JACKET」

世には銘品と呼ばれる優れたプロダクトが、数多く存在している。そんなマスターピースを鉄馬乗りの目線でピックアップしていく。ハーレーライフをより充実させてくれる相棒になってくれることだろう。

ストリートからも支持される名作

今回は50年代中期から70年代まで米国海軍にて支給されていた冬季用フライングスーツである「G-8」をピックアップ。正式名称は「J-WFS(Winter Flying Suits)」であるが、タグに記載された「WEPジャケット」や「G-8フライトジャケット」と呼ばれる。

このジャケットはさまざまなブランドでサンプリングされ、80〜90年代には有名なスケーターであるマーク・ゴンザレスがスピワック製のWEPジャケットを着ていたことで、ストリートでも人気を博したため、元ネタを知らずとも、このジャケットのデザインを知っている読者諸兄も多いだろう。

このWEPジャケットは、同じく海軍の名作フライトジャケットである「G-1」と並行して支給されていた。G-1が中間気候帯で使われていたことに対して、当ジャケットはウィンター用に位置づけされている。シェルには50年代より空軍のフライトジャケットでも主流となったナイロンを配し、裏にはコットンライニングを使用。防寒用のフライトスーツの上からレイヤードすることを前提としているので、大きなワイドシルエットで、着丈が短いシルエットになっている。内側にWEPジャケットとセットアップで作られたトラウザー用のアタッチメントが付いているのもポイントだ。

ワイドシルエットで極端に着丈が短いのは、操縦席に座った状態でも動きやすいように配慮されているからだろう。今回見つけた70年代のヴィンテージはロング丈の仕様であるがそれでも短く、「MA-1」などと似ている。さらに座った状態でもストレスなく動きやすいように背面にはアクションプリーツを配している。また、フロントの大きなポケットはグローブをしたままでも出し入れしやすい大きさかつ、収納したものが落ちにくい構造となっているため、パイロットは言わずもがな、ハーレー乗りでもメリットを多く感じるディテールが採用されている。

ニット製のスタンドカラーもこのジャケットの大きな特徴であり、チンストラップが付くので保温性を上げることができ、ヘルメットとも干渉しないため、ここもハーレー乗りにはうれしいポイント。また中期型のみであるが、ソデのリブがV字型になっており、これは動きに余裕をもたせることに一役買っているのだ。最初期と後期は、このリブが面倒で生産性が低くなったのか、省略されてしまうので、このディテールを求めるなら中期型もしくはそれをモチーフとしたブランドのものを狙いたいところ。ライダースジャケットの起源が飛行服にあるように、防寒性、耐風性、そして座った状態でもストレスなく動ける運動性など、フライトジャケットにはハーレー乗りが求める機能美が詰まっている。

このジャケットはかなり生産数が少なく、裏地のコットンやリブにダメージが多く、いいサイズとなるとなかなか見つからない。それでもオリジナルを探すのもいいし、シルエット的にはかなり癖のあるデザインなので、よりバイク乗り向けにモディファイされた現行品を見つけるのも一興である。

1972 U.S.NAVY TYPE G-8 WEP JACKET

1950年代中期から70年代半ばまで支給されていたUSネイビーのフライトジャケット。この個体は1972年製で、サイズ表記は42Lというグッドサイズ。このLはロング丈であるが、それでも一般的なアウターに比べると短めでスタイリッシュな印象。中期モデルとなり、リブの形状が独特だ。3万8500円

【ポイント①】ウールのスタンドカラー

米軍のフライトジャケットでは珍しいリブのスタンドカラーが採用されている。さらにチンストラップも付いているので、保温性も確保。ウール製なので暖かいが、この個体のようにダメージがあるケースが多く、完璧なコンディションを求めると、それだけプライスも高くなる。

【ポイント②】アクションプリーツ

ライダースジャケットでもおなじみのアクションプリーツは、「M-65」を筆頭にさまざまなミリタリージャケットに採用されている。狭いコックピット内でもストレスなく動くには、必要不可欠なディテールなのだ。

【ポイント③】フラップ付きポケット

フロントに付いた大きなポケットには、スナップボタン付きのフラップが付いている。しかも折り畳むと上部が2重になるので、収納したものが落ちにくい構造になっており、これはハーレー乗りにはうれしい。

【ポイント④】Ⅴ字型のリブデザイン

1960年代からの中期モデルより、リブがV字型に変更され、年代判別をするためのディテールとしてわかりやすい。これは見た目だけでなく、リブが開きやすいので脱着の際にとても楽。ミリタリーらしい機能美あふれるディテールだ。初期モデルにはないディテールなのもおもしろい。

(出典/「CLUB HARLEY 2025年12月号」)

この記事を書いた人
CLUB HARLEY 編集部
この記事を書いた人

CLUB HARLEY 編集部

ハーレー好きのためのマガジン

ブランドとしての知名度が高く、独自のアパレルにもファンが多いハーレーダビッドソンは、バイクにあまり馴染みのない『ごく普通の人』にも大変な人気を博しています。バイクの知識がない人はもちろん、今日ハーレーのことが気になり始めた人、そしていまハーレーが好きで好きで仕方ない人たちも満足のいく情報を詰め込んだ雑誌が『クラブハーレー』です。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

Pick Up おすすめ記事

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...