点火系パーツも定番トラブルのアキレス腱
78年までのポイント点火や79年に1年間のみ採用された機械式ガバナー進角のVファイヤー、そして80年からの電気式進角のVファイヤーⅡなど変遷を辿ってきたショベルのイグニッションだが、それぞれにトラブルを抱えていたのも現実だろう。例えばポイントのデメリットとしてはスパーク電流が弱く、燃焼効率がやや劣り、燃焼室にガスカーボンが溜まりやすい上、マメなギャップの調整やガバナーへの注油が必須。
水分や結露による固着も頻繁に起こり、イグニッションスイッチをONにしたまま数分放置しただけでコイルが焼け、パンクしてしまうのも欠点だろう。その次世代のVファイヤーは後に「ダイナS」や「サンダンス・スーパーストック」と同じ構造ゆえ、根本的には優れた構造なのだが、純正はトランジスタが熱に弱く故障も頻発。電気式進角の“Ⅱ”もアイドリングが安定しない問題を抱えていたのだが、現在は高品質な社外イグニッションも多数存在。ここは交換するのが吉、である。
ショベルで見るカムまわりのトラブル
クランクケース側のカム軸受けのベアリングの破損もショベルで見られるトラブルの定番。高性能なオイルを使用すれば問題ないが、ここも3万㎞毎にチェックしたいところ。
カム周辺からカム本体、タペットなどに起こりうる代表的なトラブル例がコチラ。この図からもタペットからの打音が、いかに深刻な状況につながるかが誰でも理解できるだろう。
ハーレーの持病であるミッションからのオイル漏れを完全に解消する革命的パーツとは
構造的にショベル以前のすべてのハーレーの持病といえるのがミッションのメインドライブおよびメインシャフトからのオイル漏れだが、ここはサンダンスの「リークレス」で改善可能。
クラッチ・ジャダーもショベル定番のトラブル
クラッチ板とスチールプレートの平面が出ていないことや表面の硬化によって「食いつく」「滑る」を繰り返すこと、さらにスプリングのヘタりによって発生するジャダーもショベルでよく聞く持病のひとつ。ここも強化スプリングへの変更やクラッチ板の調整、クラッチそのものの交換で解消可能だ。
正確なクランクバランスと軸芯を導き出すことも完調なショベルの基本
ここまで簡単ながらショベルに関するさまざまな問題点を紹介してきたが、やはりそれを解消する根本は正しく組まれたエンジンありきだろう。その中でも特に重要なのが正しいクランクバランスの算出やクランク軸の芯出しなのだが、しかし、逆に技術と知識のない人間がここに手を出すと、絶望的なほどに大きなトラブルに繋がるので注意したい。不快な振動や異音の原因は、実は人為的なミスがほとんどであることをお忘れなく。
(出典/「CLUB HARLEY 2025年6月号」)
text&photo M.Watanabe 渡辺まこと 取材協力/サンダンスエンタープライズTEL 03-5450-7720 https://www.sundance.co.jp/
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