

音楽を端緒とする英国族文化との親和性
日本におけるアメカジムーブメントの礎を築き上げたリビングレジェンドたちの貴重な証言を、Ptアルフレッド代表・本江さんのナビゲーションでお届けする連載企画。今回ご登場いただくのは、英国でクールを意味するスラングでもある“サウンド”をブランド名に掲げ、往年のヴィンテージガーメンツにインスパイアされつつも現代的にモダナイズを重ねたリアルクローズを展開し続ける「サウンドマン」のデザイナー今井千尋さん。
大学在学中は英国音楽に傾倒し、本流のファッションとは縁遠い立ち位置にあったというように、バンド活動を続けつつも、将来のライフプランは何ひとつ考えていなかったと当時を振り返る。
「ヤマハが主催していたイーストウエストというコンテストの県大会で優勝したのが、大学3年の頃。かといって、音楽で食っていこうとか、就職しようとか、具体的なことは何も考えていませんでした(笑)。4年のタイミングでバンドが空中分解した際もまだ、いわゆる就活も一切していない状態。学校近くにあった『ブルックスブラザーズ』でアルバイトしたりしながら、結局は卒業まで何も決まらないまま、一旦は音楽で食っていこうと、事務所に所属して。モッズかぶれの格好をしたりして、洋服は好きでしたが、ファッション業界に興味があったワケでもなかった。
そんななか、事務所のプロデューサーに言われるがまま、毎月1曲ずつ合計12曲をひたすら書き続けていたのですが、何の見返りもない生活にストレスは溜まる一方でしたし、アルバイトでは社会保険もつかないしで、アパレルの商品管理程度なら音楽活動を続けたまま二足のわらじができるだろうと甘い考えから、まずは子供服メーカーに就職したんです。そんな矢先、父親が心筋梗塞で急逝し、さらに音楽活動にも限界を感じ始めた時期でもあって。知人の紹介を頼りに、当時隆盛期を迎えていた『シピー』へと移り、当初は営業職に就きました。在籍中にいろいろな服に触れるなか、自分が好きなスタイルの大半はイギリス発祥であると気付き、古着を中心に英国服へとどっぷりハマっていきました」。
ヴィンテージをメインに英国服を買い漁るなか、ロンドンのストリートに端を発したモッズやニューウェーブといった族文化の源流となる、ブリティッシュトラッドへと次第に関心が移っていったという。
音楽をきっかけに30年代の英国スタイルへと傾倒

1987年にヤマハ主催でスタートした世界最大級のアマチュアバンドコンテスト『BAND EXPLOSION』にも出演するなど、かつては音楽事務所に所属し、プロを目指していた時期もあったという。

1930年代頃のブリティッシュトラッドを再現していた「ドレイパーズベンチ」在籍時代。定番だったこのワイドパンツは、当時の縫製工場担当者からお借りした。


若かりし日の今井さんが参考にしていたのは、1930年代頃までに見られた英国紳士たちのクラシカルなスタイル。いわゆるブリティッシュトラッドの源流にして特権階級の日常服に強い関心を寄せていたとか。
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