“革靴の王様”が生み出したタッセルローファーの元祖「オールデン」563【名作ローファーブランド図鑑】

トラッドスタイルにおけるマストアイテムとして欠かすことのできないローファー。1930年代に誕生し、いまでは世界各国様々なブランドがこの形の靴をリリースしている。そんな数あるローファーにおいて、2ndが考える名作の中の名作を厳選した。今回紹介するのは「ALDEN」の563だ。

「ALDEN(オールデン)」の563

“革靴の王様”としてその名を知らしめる「オールデン」。最高級のレザーを使用した高品質なモノづくりは言わずもがな、カジュアルなローファーに房飾り(タッセル)を付けることでエレガンスと気品を漂わせるタッセルローファーを発明したという功績も見逃せない。ここでは、アッパーにホーウィン社のシェルコードバンのバーガンディ、通称「#8(ナンバー8)」を使用した[563]をピックアップ。

「オールデン」を代表するモデルのひとつ。世界トップクラスのコードバンを作り出すホーウィン社のシェルコードバンのバーガンディ(#8)を採用し、コードバン特有の眩い光沢や極上の経年変化を楽しむことができる。コルクをたっぷりと使用することで履くごとに着用者の足型へと沈み込むという機能性や、タッセルを邪魔しないためにあえてマシンステッチがなされたモカ縫いなど、その魅力を挙げればキリがない。20万9000円(ラコタTEL03-3545-3322)

563が名作たる5つの理由

タッセルローファーの元祖

第二次世界大戦後、アメリカ人俳優ポール・ルーカスが、ニューヨークの製靴店にタッセル付きで腰革の端から端に革紐が施された革靴の製作を依頼。デザインには満足したものの履き心地に不満があり、改良のために片足をニューヨーク、もう片足をカリフォルニアの靴ショップに持ち込んだところ、両店ともにオールデン社に製造を依頼し、履き心地の良いモデルを製作。この出来事がきっかけとなり、1948年に「オールデン」の「ORIGINAL TASSEL MOCCASIN」が誕生したのだ。

アメリカントラッドとの密接な関係

「オールデン」は、アメリカントラッドの元祖「ブルックス ブラザーズ」のOEMを担ったことでも知られる。1957年に同ブランドがオールデン製のタッセルモカシンをコレクションのラインナップに加えることを検討したため、特別にブルックス ブラザーズ仕様のタッセルモカシンを製造したのだ。この“ブルックスネーム”が当時のトラッドマンの憧れであったことは想像に難くない。

ホーウィン社のシェルコードバンを使用

「オールデン」を語るうえで外せないのが1905年にシカゴにて創業した名門タンナー「ホーウィン社」の存在。[563]やブラックのタッセルローファー[664]などに使用されるシェルコードバンは、良質な原皮はもとより、繊維の密度が高く厚みが充分にあり、さらに色ムラも極めて少ない。元来トップクオリティを誇るシェルコードバンであるが、「オールデン」はそのなかからさらに選び抜いたものだけを使用。「革靴のクオリティは使用する革によって大きく左右される」というが、まさに「オールデン」のプロダクトはその言葉を体現している。

最もドレッシーなアバディーンラストを採用

「オールデン」が長年愛される理由のひとつに卓越した履き心地が挙げられる。その最たる理由が、革靴の“土台”ともいえるラスト(木型)だ。“バリーラスト”や“ヴァンラスト”など数種類のラストが存在するなかで、[563]は「アバディーンラスト」を採用している。ドレス系のラストのなかでは最古ともいわれているこのラストは、細身で高さのあるドレッシーなフォルムを特徴とし、足元をエレガントに彩ってくれる。

もはや絶滅危惧種のメイド・イン・USA

「オールデン」の創業は1884年。マサチューセッツ州のミドルボロウにてその歴史はスタートし、初期の工場ではカスタムメイドブーツや受注生産による高品質な紳士靴を製造していた。その後、移転を経て1970年に創業地・ミドルボロウへと戻り、現在に至る。創業から140年を超えたいまもレザーの品質検査からラストの管理、そして製造までを一貫してこの自社工場にて行っており、いまでは絶滅危惧種ともいえるアメリカ生産を貫いている。

(出典/「2nd 2025年6月号 Vol.212」)

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みなみ188
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みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
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