「アナトミカ」のピエール・フルニエが来日! ご本人に2nd本誌をお渡ししてきた。

雑誌セカンドでいつも掲載しているフランスの人気セレクトショップ「アナトミカ」のディレクターであるピエール・フルニエが来日している! その情報を得て、セカンド編集部はある雑誌を手に駆けつけた。期待と緊張のなか、彼の人柄、魅力を伝えるべく、改めてここで紹介したい。

CONTENTS

これが2020年11月号で制作したピエール・フルニエ特集。

「アナトミカ」ディレクター・ピエール・フルニエ|1944年フランス・サヴォワ地方生まれ。75年「グローブ」、79年「エミスフェール」を経て、94年「アナトミカ」をマレ地区にオープン。いまだ現役のレジェンドだ

4月某日。〈アナトミカ〉ディレクターのピエール・フルニエが来日しているという噂を耳にし、2nd編集部は一冊の雑誌を片手に、ピエールさんがいるという「アナトミカ青山店」へ。その一冊の雑誌とは、セカンド2020年11月号の「おもいっきりヨーロッパ」特集。

この号では、のべ16ページにも及ぶピエール・フルニエを徹底解剖する企画を制作したのだが、とにかく本人に会って、この号を直接手渡したかったのだ。緊張の一瞬。ピエールさんは快く我々を出迎えてくれ、例のページにも好意的な意見を寄せてくれた。誌面にサインをしてくれたり、追加でインタビューを引き受けてくれたりと、その紳士な姿は忘れない。それにしてもピエールさん、服の着こなしはもちろん、身のこなしそのものがエレガント。噂通りのリビングレジェンドだった。

こちらが3年ほど前に制作したピエール・フルニエ徹底解剖。直接本人にインタビューするのではなく、彼をよく知る証言者たちの話から、ピエール像を浮き彫りにしようというコンセプトだった。

恐る恐るサインをお願いしてみたら、二つ返事でOK。当日は我々のほかにも多くのお客さんが彼に会いにきていたが、誰彼なしに真摯に接していたのが印象的だった。

「ピエール・フルニエという存在」の証言者たちによる6つの証言をピエール・フルニエ本人が解説。

以前の企画では、ピエールをよく知る6人のファッション業界人に取材を行った。今回はそのなかでも特に気になる発言について、3年の時を経てピエール本人から解説してもらった。

【証言1】「当時のエミスフェールは店内に入った途端に思わずフリーズして動けなくなるほど素晴らしい品ぞろえを誇っていた」(元エミスフェール/中村隆一さん)

I always try to keep a “floating-eye” on things ; I don’t consider myself as an expert but more like someone who like to do researches, and who tries to discover meaningful things.

自分のセレクトに関して、私は常に物事を “浮遊した目 “で見るようにしている。自分のことを専門家だとは思っていないが、どちらかというとリサーチが好きで、意味のあることを発見しようとする人間のようだ。

【証言2】「ピエールがアナトミカで大切にしているのは、哲学者ユージェニオ・ドールが提唱した『伝統でないものは、すべて盗作である』という精神だったり、柳宗悦が打ち立てた『民藝』の思想だったりする」(サーティファイブサマーズ/寺本欣児さん)

Sometimes, I like to use the words from Ray and Charles EAMES : “Innovate but only as a last recourse”

時々、レイ・イームズとチャールズ・イームズの言葉も引用することがある。
「革新は最後の手段である」

【証言3】「エミスフェールのようなショップから学んだことは“本物をいかに自由に着こなすか”」(ユナイテッドアローズ/鴨志田康人さん)

Concerning “style”, Picasso said one day he was upset by being noticed too many times that he was always changing of style : “Style? Style… Does God have any style ?”
Of course, very few people are talented as Picasso; besides he was not mixing much “his styles” but had kind of different style periods one after the other.

Then, “free-dressing style”, would be more, at first, about having some curiosity and learning the different codes of garments and how to wear them during the past century. But also, getting to know the different kind of garments productions that exist or did exist.

Vast program to try to be free but enlightened…

To summarize, if ones want to transgress the codes with elegance, better to know a bit those codes! HEMISPHERES had this kind of spirit and direction.

スタイルに関して。ピカソはある日、自分がいつもスタイルを変えていることをあまりに何度も指摘され、こう憤慨したという。「スタイル? 神にスタイルがあるのか?」
もちろん、ピカソのような才能のある人はごくわずかだ。しかも彼は「自分のスタイル」をあまり持たず、スタイルは次から次に移り変わっていたという。

「自由な着こなし」とは、まず好奇心を持ち、前世紀にまで遡ってさまざまな衣服のルールとその着こなし方を学ぶことだろう。しかし同時に、現存するしないに関わらずさまざまな衣服自体を知ることでもある。

自由でありながら見識も得なければならない大規模な計画だ……。

要約すると、エレガントにルールを超越したければ、そのルールを少しは知っておいたほうがいいということ! 私がかつて営んでいたセレクトショップ「エミスフェール」はこのような精神と方向性を持っていた。

【証言4】「単にものを買うだけならウェブだけでもいいでしょうが、パリのアナトミカに行って実際にショップの空気を吸い込んでリアルにカルチャーに触れるということが大切」(レショップ/金子恵治さん)

I don’t believe that people can be dressed properly by only e-shopping garments.
Most of people and customers coming to the shop do not know their body measures : neck, chest, waist, foot width & lengths… Who knows all those measures ? how to take them ?? besides, these are changings with time, so they must be updated frequently…

Only in a shop, with a good retailer who knows about this, someone can have these measurements taken properly and have a good advice about the right garments volume and sizing needed. It’s only by being physically in a shop, that you can have the right service, in a tailor or shoe-maker way. Impossible to get this service surfing on a e-shop.

私は、オンラインショップで買う衣服だけで、人が適切に服を着こなせるとは思わない。ショップに来るほとんどの人やお客は、自分の体のサイズを知らない。首、胸、ウエスト、足の幅と長さ……、誰がこれらのサイズを知っている? 測り方は? しかも時代とともに変化するものだから、頻繁に更新されなければならない……。

このことを熟知している優秀なリテーラーのいる店でのみ、適切な採寸を行い、必要な衣服のボリュームやサイズについて適切なアドバイスを受けることができるのだ。テーラーや靴職人のような適切なサービスを受けられるのは、物理的に店舗にいるときだけなのだ。オンラインショップでこのようなサービスを受けることは不可能だ。

【証言5】「身体の動きを助けてくれるもの(=アナトミカル)に主眼を置いているわけで、すでに着飾ることのみでは得られない境地に辿りついているのだと思います」(サンカッケー/尾崎雄飛さん)

Step-by-step, slowly, and more-and-more with time, I did understand the Importance of good and precise measures, and also the right volume balance of a shoe or a garment, to get them to fulfill their true function; “Fitting first, Style resulting naturally after”.

一歩一歩ゆっくりと、そして時とともに、靴や衣服が本来の機能を発揮するためには、正確で優れた採寸、そして適切なボリュームバランスが重要であることを理解していったんだ。「フィッティングが先、スタイルは後から自然に生まれる」

【証言6】「ものへのこだわりや妥協しない姿勢をリアルに感じました」(ユナイテッドアローズ/鈴木健司さん)

This is pretty simple, with always the same Question/Answer :
– is it looking good ? or not ??
– is it nice ? or not ??
– does it fit? or not ??
– is it working? or not ??
– does it suit me ? or not ??

ものづくりへの情熱を保つための方法はシンプルだ。
これらの質疑応答を常に続けること。
ー見た目はいいか?
ー素敵だと思えるか?
ーフィットしているか?
ーうまく機能しているか?
ー自分に合っているか?

ビジネスパートナーのチャールズさんとともに、なんとも嬉しいベストショット。最後にピエールさんから日本のファンへひと言。「Stay Pure! Go forward, Like before!(「ピュアなままで! 前へ前へ」)」

(出典/「2nd 2023年9月号 Vol.198」

この記事を書いた人
パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

Pick Up おすすめ記事

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...