アウトドアの聖地はプレッピーにとっても掛け替えのない場所。「エル・エル・ビーン」。

1980年に発行された『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』(リサ・バーンバック著)には「WHERE TO SHOP」という項目があり、プレッピーたちが通うべき17の衣料品店がリストアップされている。その冒頭には「本当のプレッピーは衣類を普通のデパートやショッピングセンターで買ってはいけない」とも記されており、ただ由緒正しい服を着ていればいいわけではない、特有の精神性がその一節からも色濃く滲み出ている。そこに最初に掲載されているのが「エル・エル・ビーン」の旗艦店だ。数回の止むを得ない事情を除き1951年より70年以上、365日24時間営業のスタイルを守り貫いてきた旗艦店をご覧あれ。

▼プレッピーってそもそもなんだ?

プレッピースタイルとは? 誕生から現在に至るまでその歴史を振り返ろう。

プレッピースタイルとは? 誕生から現在に至るまでその歴史を振り返ろう。

2025年07月09日

北東アウトドアの玄関口は今日も24時間営業。

1984年に増築されたハンティング&フィッシングフロアの荘厳なる空間は訪れたものすべてを高揚させる。アメリカ全土のアウトドアーズマンたちがこの地を目指すのも納得

『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』に掲載されているいくつかの御用達ショップリスト。その冒頭を飾るのは何を隠そうエル・エル・ビーンの旗艦店だった。セカンド読者諸兄にとってはアメリカを代表する老舗アウトドアブランドとして当然の認知がされているエル・エル・ビーンが、ブレザーなどのトラディショナルスタイルを好むプレッピーたちの御贔屓と聞いて少し意外に感じるかもしれない。

しかし、「タフなフィールドで培われたヘビーデューティなアイテムを身に着けることはプレッピーにとってもクールで意味のあること」だった。実際、件の書籍が1980年に発刊された直後はバーズアイのノルウェージャンセーターやメインハンティングシューズ、ボート・アンド・トートの売れ行きは絶好調だったとブランド創業100周年を記念した書籍にも記されている。

1982年春のカタログを見てみよう。ヘビーデューティなアイテムに混じってマドラスチェックやシアサッカーのパンツ、ウェビングベルトなどのプレッピーアイテムが散見されることからも、プレッピーブームが商品構成にも大きく影響を与えていたことがわかる

セカンド編集部がこの地を訪れるのは2度目。前回は2018年秋のことだった。それから現在までになにがあったかは周知の通り。コロナウイルス蔓延防止のため、例に漏れずこの旗艦店も営業停止を余儀なくされた。それは1951年より70年以上、365日24時間営業のスタイルを守り貫いてきた旗艦店にとって、あまりにも大きな出来事である。

エル・エル・ビーン発行の100周年記念の書籍『Guaranteed to Last』には時代ごとにエポックメイキングなアーカイブやトピックがまとめられている。1980年代はまさにプレッピーの時代として、著者リサ・バーンバックのインタビューが掲載された

これまで“店仕舞い”をしたのは創業者レオン・レオンウッド・ビーンとジョン・F・ケネディが亡くなった時と、向かいの店の火事の影響で営業が不可能となった時だけだった。さらに24時間以上、営業停止したのはこれが初めてのことだったという。

未曽有の事態がアメリカ全土にどれほどの影響を及ぼしたかを感じざるを得ないが、幸い今ではまたあの頃と同じように営業を再開している。最後に『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』にはこうも書かれている。「真夜中に店へ訪れることがプレッピーの慣例のひとつ」と。現在もそれが叶うのは実に喜ばしい限りだ。

商品企画責任者のオーウェンさん
1980年代のアーカイブをデザインソースとするカタディンロゴやアノラックパーカの復刻など、近年のヒット作を多数手掛けてきたオーウェンさん。取材時に着ていたシャミークロスのシャツはセカンドハンドで手に入れた1枚で、ポケットには穴が空いていたり、ペンキで汚れていたりするが、それも含めて彼のお気に入りだとか。シャツonシャツのレイヤードもめちゃくちゃプレッピーな着こなしだ!

歴史を感じるアーカイブが店内のあらゆるところに!

ずらりと猟銃や剥製などが並ぶ光景は旗艦店ならでは。自らも釣りや狩りなどアクティビティを楽しむ従業員たちとカスタマーとの間で繰り広げられるアウトドア話は尽きない。

なんと店舗を含むフラッグシップキャンパスの広さは22万平方フィート。吹き抜けのある2フロアにはありとあらゆるところに貴重なアーカイブが飾られているため、買い物を楽しみながらミュージアムやテーマパークに来たような楽しさがある。

本店名物、巨大ムースの剥製にも出会える!

昔ながらの狩猟部屋をイメージした寛ぎスペースも。暖炉脇に飾られた猟銃は創業者本人が使用していたもの。右目が不自由だった彼のために左目で照準できるようにカスタムされていた。

ビーン・ブーツを自分好みにカスタム

購入したビーン・ブーツは個人カスタムがオススメ。好みの色へのシューレース交換やイニシャルなどを入れるエンボス加工のサービスを店では10ドル以下でオーダー可能だ。

100年前のメイン州旗がモチーフ!

ストアマネージャーのロジャーさん

チロリアンテープを施したマウンテン・クラシック・アノラックは80年代のアーカイブから着想を得た近年のヒット作。創業地であるメイン州初の州旗をイメージしたワッペンが付く特別なコレクションはアメリカ本国でも売れ筋。こちらは日本国内でも購入可能だ。

【DATA】
L.L.Bean Flagship Store(エル・エル・ビーン)
95 Main St, Freeport, MAINE
TEL877-755-2326
営業/24時間営業
休み/無休

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年8月号 Vol.197」

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パピー高野
この記事を書いた人

パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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