常にファッションの本質を追い続けアンテナを張っている洒落者たちが、いまトラッドの定番としてなにを選ぶのか。そして「100年後の名品」、すなわち新定番と合わせて紹介してもらった。
1.【定番】「グッチ」のビットローファー|アーバンリサーチ 中山慶人さん
アーバンリサーチの名物プレスである中山さんは、古着好きでそのスタイルにも定評のある人物。物の良し悪しを深く理解する中山さんが定番として選んだのは、グッチの名作ビットローファーである。
「ビットローファーは昔からある名品ですが、僕が好んで集めているラグソールの仕様は、当初からラインナップされていたものではありません。おそらくトム・フォードがグッチに入った90年代頃から展開されたのではないでしょうか。レザーソールだとドレス的なテイストが強いのですが、スウェードでラグソールの仕様ならカジュアルに履けますし、気を使う必要もありません。様々なバリエーションがあるので、新旧問わず探してみるとおもしろいですよ」
【新定番】「アーバンリサーチ」のトーマスメイソンオーバーシャツ
産業革命時代より続くイギリスの老舗シャツ生地メーカーであるトーマスメイソンを使ったシャツ。トラディショナルな生地感をオーバーサイズシルエットでモダンな印象に。「生地は言わずもがな、トレンドをうまく反映したシルエットも絶妙です」 各1万6500円(アーバンリサーチ ルミネ新宿店 050-2017-9004)
2.【定番】「リーバイス」のホワイトデニム|ソウボウ ディレクター 藤田貴久さん
パンツに限らず、素材としてのホワイトデニムをこよなく愛する 。「学生時代にポール・ウェラーのホワイトデニム姿に憧れたのが原体験です」。とはいえ、その頃はまだ白デニムは似合わないと自己判断。「穿いてもいいかな」と思えるようになったのは20代半ばの頃からだ。
「リーバイスのシルバータブ、中でもこのバギーはワイドルーズシルエットなので、スリムだったポール・ウェラーのジーンズと違い、自分らしく穿けます。とはいえ真っ白なパンツなので、ラフなコーディネートでも自然と清潔感が出せます。ヨーロッパ企画という、王道の文脈からは少々外れたシーンで展開されていた点もモノ好きとして惹かれる ところ。汚れたら漂白剤に頼ればいいので、実はケアもラクなんです」
【新定番】「ソウボウ」(右)、「シャンハイタン」(左)のマオカラーシャツ
中国の正装、すなわちトラッドな襟型がマオカラーだ。「タックアウトで、たっぷりとしたサイズ感のものを洗いざらしで。どことなくオリエンタルなムードを醸すことができ、アジアの原風景的なスタイリングが完成します」。右のシャツ2万4200円/ (ソウボウ)、左のシャツ/シャンハイタン(本人私物)
3.【定番】「サウスウィック」のケンブリッジ|サウスウィック 篠原渉さん
シップスのメンズバイヤーとして長きに渡り活躍し、現在は 新生サウスウィックのディレクターを務める篠原さん。定番として挙げたのは、サウスウィックのフラッグシップモデルである紺ブレだ。
「『紺ブレに始まり、紺ブレに終わる』なんて金言があるように、紺ブレは非常に奥深いアイテム。汎用性が高く、ドレスからショーツまで合わせられ、数ある洋服の中でもその振り幅が最大なのではないかと。このケンブリッジの特徴は、ナチュラルショルダー、段返りの3つボタン、ボックスシルエットという正統派。新生サウスウィックとなって、工場を探すところから始まったのですが、その伝統と品質を守ってくれる東海岸の工場と出会い、メイドインUSAを実現できました」
【新定番】「グルカ」のカバン
グルカを代表するモデルのひとつであるNo.5「エグザミナー」。これはシップスが40周年を迎えた際に、篠原さんが手掛けたネイビーの別注モデルだ。「コー ポレートカラーであるネイビーで別注をお願いしました。レザーにはクロムエクセルレザーを使用。銀座店がオープンした77年から取り扱っているんです」
4.【定番】「エルメス」のスカーフ|バーニーズ ニューヨーク 中野光章さん
ネイティブアメリカンジュエリーのスペシャリストとしても知られ、モードからヴィンテージまで熟知するバーニーズ ニューヨークの中野さん。欠かせない定番アイテムとして挙げたのは、エルメスの不朽の名作であるカレ90だ。
「学生時代から憧れであったエルメスは、今でも身に着けると背筋が伸びる特別な存在です。カレは複数のサイズがありますが、メンズだと90サイズがベストだと思います。個人的に好きなのが、スカーフリングを使ったコーディネートです。これまでに数多くの名作が存在しますが、私の場合は敬愛するネイティブアメリカンをモチーフとした柄を厳選しています。なかなかリリースされることがないので、新旧問わず探していますね」
【新定番】「バーニーズ ニューヨーク別注」のパラブーツ・シャンボード
定番のシャンボードに、アメリカ・ ホーウィン社の “ハッチグレイン” という型押しレザーを使ったバーニ ーズ ニューヨークの別注モデル。「ロシアンカーフを彷彿とさせるハッチグレインレザーで別注したスペシャルモデル。肉厚ながらもしなやかで、傷が目立たないのも魅力です」 7万7000円(バーニーズ ニュー ヨーク六本木店 0120-137-007)
5.【定番】「ロッキーマウンテンフェザーベッド」のダウンベスト|サーティファイブサマーズ PR 信岡淳さん
70年代に一世を風靡し、2005年に国内で復刻を果たした、ロッキーマウンテンフェザーベッドのダウンベスト。オリジナルを忠実に再現した現行モデルも人気が高いが、信岡さんは70年代のヴィンテージを定番としてセレクト。
「アーカイブとして会社で150着ほど所有していますが、今でも現役で着用できるほどクオリティが高い。むしろレザーの質感とかは長年の経年変化で、さらに美しく仕上がっていると思います」。
自ら企画に加わることもある現行モデルも、時代を超えて愛用できる一着を追求している。
「シルエットだけ少し修正しているけど、素材感もなるべくヴィンージに近づけています。50年後には、オリジナルも現行モデルも大差ないレベルで愛されているといいですね」
【新定番】「ビックヤンク」のM43シャンブレーシャツ
アイコニックな山ポケやガチャポケを取り入れず、USネイビースタイルのシンプルなパッチポケットを搭載した1着。「ビックヤンクとしては、ありそうでなかったベーシックなアイテムだけど、一昨年のリリース以来ロングセールスを記録して、すっかり定番化しました」。2万6400円(アール 柳橋 080-7024-4090)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典:「2nd 2022年9月号 vol.186」)
Photo / Satoshi Ohmura, Shunichiro Kai, Akane Matsumoto, Yuta Okuyama, Shigeki Tsuji, Nanako Hidaka, Kazuya Hayashi, Yoshika Amino Text/Shuhei Sato, Masatsugu Kuwabara, Okamoto 546, Kiyoto Kuniryo, Shinsuke Isomura, Shuhei Takano, Kazuki Imanishi
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