【メンテ&リペア-チェア編】イームズのDCWがMade in U.S.Aのレモンオイルで見事に復活!

近年の「古着ブーム」や「サスティナブル」、「SDGs」、または「リノベーション」といったキーワードの注目度が高まると同時に、旧き良きもの、ビンテージアイテムにも注目が集まるようになっている。それと共に、モノを長く愛し、エイジングすることをポジティブに捉える風潮も高まっている。デニムやレザーアイテムに顕著ではあるが、モノを丁寧に扱い、愛情を持ってメインテナンスや修理するといった行動にもつながっている。捨てない、循環、メンテナンス、リペアへの意欲が社会全体で高まっている今だからこそ、セルフリペアにもチャレンジしたい。とはいえ、どこまで自分でできるのか、やり方もわからないまま設備や道具に投資し、お金も時間も浪費した上に仕上がりに満足できるんだろうか……と躊躇する人もいると思うので、皆さんの代わりに「ものぐさ&不器用でビンテージ好き!」な私がチャレンジしてみることとした。

天国のイームズも悲しんでいるだろう。チェアとしての機能すら奪われた状態のDCM。

リペア対象はビンテージチェア。今でこそ高騰しているイームズのDCWだが、デザイナーズ家具ブームで高騰したのち、価格が落ち着いた頃に手に入れたもの。背もたれがゴムのマウントで取り付けられていることもあり、ビンテージの場合、どうしてもマウントの劣化を免れられない。マウントと背もたれの接着が取れてしまうのは必然と言っても過言ではない。実はかつてシューグーのほか、負荷がかかる箇所でも接着できると評判の接着剤を使ってリペアを試みたことがあるのだが、あえなく失敗に終わったという過去がある。そのため、ここばかりはプロにお願いした。選んだのはentrance。かつて実店舗を運営されていた頃に、さまざまな家具を購入させていただいたのだが、ウェブショップになってからは張り替えや修理などのリペアを中心にお仕事をされているとのことで、迷わずお願いすることにした。

現状のチェアの様子を写真に撮り、ウェブサイトから問い合わせを行うだけで作業内容と見積もりの連絡がくる。私のDCWは、かつて背もたれに付いていたマウントを活かせそうとのことで、背もたれとマウントの接着のみを行なってくれることに(マウントが活かせない場合は、純正マウントも購入できる)。見積もりが来てから、銀行振込で支払いを済ませ、背もたれ&マウントを指定の住所に発送。今回はマウントを活かして、接着のみを行っていただくということで8800円をお支払い。チェアそのものを送るわけではなく、背もたれとマウントのみの発送、お互い東京都内ということもあり、送料周りもかなり安く済ませることができた。程なく工期の連絡が来て、注意事項の確認の後に作業にかかっていただく。

チェアとして復活! を喜んだのも束の間……。

およそ1週間以内に作業完了の連絡、発送の連絡があり(繁忙期はその限りでない)、丁寧な梱包とともに到着したのがこれ。私が送ったマウントがオリジナルサイズではなく、マウントサイズが背もたれ側に掘られている丸い溝に対して直径3〜4mm程度小さいため、接着自体は問題ないもののマウントと溝に数ミリの遊びがあるとのこと。溝とマウント周りの隙間がオリジナルよりも広くなっているため、通常の修理よりも接着剤が目立っているとの報告を受けたが、気になるほどでもなく、ネジ穴の位置も問題なし! 3カ月間の保証も付くということで、安心。entranceさん、ありがとうございます!

塗装剥げ、水染み……。積年の経年変化によるバッドエイジング。

しかし、せっかくチェアとしての座れる機能を取り戻したのに、コンディションは写真の通り。水染みや塗装の剥げが散見し、ある意味ビンテージらしい風貌ではあるが、せっかくなら綺麗にしてあげたいと思い立った。そこで前述のentranceに自分でリペアしたい旨を連絡したのだが、その際に伝えたのが紙やすりなどで塗装を取り除き、ウレタンニスなどを塗るという計画。すると、ウレタンニスよりもBRIWAXやレモンオイルなどの方がうまくいくかもしれないとの返答をいただいた。

聞いたこともなかったレモンオイルとは!? 口コミの少ないMade in U.S.A.のオイルに決定!

DIYを趣味としている方ならBRIWAXはご存知かもしれないが、もう一方のレモンオイルとは!?  頂いた情報によると、北欧家具店などでプロもリペア用として使うものらしい。しかもMade in U.S.A.! 古着などのアメリカンビンテージを好きな方なら「Made in U.S.A.」はどんなアイテムでも嬉しい。天然由来の成分で自然な風合いの仕上がりになるらしく安心材料も多いのだが、なにぶん口コミ情報が少ないことが心配。もう一方のBRIWAXは色のバリエーションも豊富でテーブルやドアなどインテリア全般に有効なアイテムと知ってはいるものの、衣類が頻繁に接するチェアとなると、衣類への移染が心配。両者を調べ比べたのちに、アメリカ製のレモンオイルを採用することにした。

作業は単純明快! サンディング(やすりがけ)とオイル塗布のみ!

作業そのものは至ってシンプル。サンディング(やすりがけ)した後に、オイルを塗り重ねるだけ。まずはサンディング用の120番と240番の紙やすりを用意する。紙やすりは数字が少ないほど目が粗く、数字が大きいほど細かい。まずは塗装を剥がすために120番を使う。

まずは端の方でテスト。結構簡単に塗装が剥がれる。よし一気に行こう。この段階では特に木目を意識せずに、円を描くようにしながらサンディング。塗装や汚れが剥がしながらもムラが出ないことを意識した。およそ15分ほどかけて120番を使用し、塗装を完全に除去した。その証拠がこの写真の通り、全く光沢感のない状態。同時に水染みなどもある程度までは取り除くことができた。

その後、240番手で丁寧に表面を慣らしていく。これも約15分ほど。120番のサンディング後の状態と見た目には差がないが、触り心地はかなりスムーズ。これは後で分かったことだが、この段階で木目を意識してサンディングを行った方が良い。レモンオイルを塗った後も、角度によっては円を描くようなやすり痕が見えたからだ。いずれにしても作業時間はサンディングだけなら30分程度。次のオイル塗布に向けて掃除機で粉塵を取り除き、乾拭きしておく。

ついにレモンオイルの出番。ほんのり香るアロマで作業が進む!

で、ここからがレモンオイルの出番。コットンウエスに適量(私の場合は五百円玉程度)をとり、ウエスに馴染ませてから塗布。靴磨きなどでも同様のことが言えるが、ニスやクリームなどの類いはウエスに馴染ませてから塗布しないとムラが出てしまうことがあるので、ご注意を。もちろん、ウエスは廃棄前のTシャツなどでももちろんオッケー。オイルは思った以上に伸びが良く、薄く塗り広げることができるタイプなので、厚塗りなどの心配はなし。そして、いわゆるワックスやニスとは異なり、ほとんどベタつかない。そして、うっすらとレモンの匂いが香ってくるのもかなり嬉しい。オイルやニスの匂いも嫌いではないが、良い匂いなので塗り重ねるのも苦じゃない。

レモンオイルは、写真の通りパッケージに入っている状態で見ると黄色いが、ウエスにとった段階ではほとんど色はない。円を描くように塗り広げ、1度目の塗布後の状態。オイルが木に染み込んでいくことで生まれた自然な色という感じで、この段階では光沢は皆無。乾燥を待つ間に、座面以外も少し塗ってみたところ、驚くほど簡単に小傷が目立たなくなる! 以下のbefore→afterの通り。

小傷も簡単に目立たなくなる! 塗るたびに効果を実感できるから、塗り重ねるのが楽しい。

before
after
before
after

木の持つ本来の色やすでに塗装されている色から逸脱せずに小傷が目立たなくなるため、ビンテージチェアの持つ本来の色などを尊重したい場合には非常に有効だ。背もたれのほか脚なども細かく塗っていく。座面の乾燥を待つ間にとても良いサイクルだ。なお、夏場の屋外作業だったこともあり、レモンオイルの乾燥はかなり早いと感じた。およそ15分程度でサラッサラになるので、座面→その他→座面→その他の循環を繰り返す。

5回ほど塗り重ねた状態がこちら。

約5回の塗布の結果がこれ。塗ったばかりの状態だとかなり光沢があるように見える。ただ、乾燥すると光沢がなくなるので、これをさらに数日に渡り繰り返すことに。と言っても、1回3分で塗り終える程度の作業なので、リペア作業をしているというよりも、ちょっと掃除してるというくらいの心構え。

計10回程度の塗布でリペアは完了! 見違えるほどのbefore→afterをご覧あれ。

計10回程度、オイル塗布を繰り返した結果が上の写真。乾燥した状態でもしっかりと自然な光沢を放っているのがお分かりだろうか? 背もたれや脚などは、あらかじめニスなどの塗装が残っている上に、さらにレモンオイルで磨き込んでいるため、塗装を剥がしてからオイルを塗り重ねた座面とでは光沢感に少々の差があるが、かなり自然で美しい光沢を放つビンテージチェアに復活した。

before
after

背もたれのマウント修理に始まり、サンディング→レモンオイルの塗布を行ったが、レモンオイルの便利さと手軽さには舌をまいた。他の家具や家中の木枠に塗りたい衝動すら覚えた。印象をまとめると「手軽で失敗がない分、効果は劇的というほどではないが、何回も塗り重ねることで自然な光沢を生むオイル」。ニスやワックスと違ってレモンのいい匂いなので、物置の奥ではなく手の届くところに置いておいて、日々の気軽なケアに役立てるといいだろう。

この記事を書いた人
おすぎ村
この記事を書いた人

おすぎ村

ブランドディレクター

『2nd』のECサイト「CLUB-2nd」にて商品企画・開発を担当。貴重なヴィンテージをサンプリングした人気ブランドへの別注などを世に送り出している。2nd、Lightningの元編集長にして現在は2ndのブランドディレクター
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

ロンドン生まれのアイウエアブランド「CUBITTS」が日本に本格上陸! 人気の秘密に迫る。

  • 2026.05.19

英国・ロンドン生まれのアイウエアブランド「キュービッツ」。日本へ本格上陸したばかりでまだ多くを知られていない、その全容を紐解く。 ロンドン生まれ質実剛健な実力派 2013年にロンドンで創業、2025年に日本へ本格上陸を果たした「キュービッツ」。本国では、新鋭ながら圧倒的な知名度を誇り、ビスポークも手...

日本人に最適化された新作の“JAPAN LIMITED”に注目!「MOSCOT」現代に引き継がれるアメリカンクラシックのDNA

  • 2026.05.20

1915年にNYで創業し、アイウエアデザインの王道を形づくった「モスコット」。多様なデザインで溢れるいまこそ、伝統に裏打ちされたクラシックな佇まいに惹かれる。 新作の“JAPAN LIMITED”のラインナップを紹介! 2016年よりスタートした“JAPAN LIMITED”は、インラインにはないノ...

夏を彩るカラーゴールド。「市松」定番の18金シリーズはカラバリ豊富で夏に欠かせないアクセサリー

  • 2026.05.18

湘南に工房を構えるオーダーアクセサリーブランド「市松」。1997年に創業し、その2年後から27年も続く定番の18金シリーズは、カラバリも豊富で、いまや欠かせないブランドの顔だ。プロダクツとしての魅力だけでなく、夏の装いにも重宝する。 「市松」の定番、特別な5色の18金 「酷暑日」という言葉が新たに発...

アメリカンクラシックの原点「ディグナ クラシック」の[ジミー]なら、カラバリ・仕様も豊富で自分好みの1本が見つかる!

  • 2026.05.21

50sアメリカンスタイルを踏襲した「ディグナ クラシック」の[ジミー]は、シンプルなデザインやクラシックな世界観から多くの人に愛される名作。その人気ゆえ、仕様やカラーのバリエーションが非常に豊富な[ジミー]の全容をいま一度おさらいする。 955E“Jimmy”とはどんなメガネ? 1950年代にアメリ...

アイヴァン史上初の完全復刻。“ヒストリック コレクション”誕生の裏側に迫る!

  • 2026.05.22

「アイヴァン」2026年春夏の新コレクションとして突如発表された“ヒストリック コレクション”。これまでにもアーカイブを現代に甦らせる試みは幾度か行われてきたものの、どれも細やかなアップデートが施されていた。文字通りの“完全復刻”は今回が初となる。 アイヴァンには立ち返るべき原点がある どこぞのヴィ...

Pick Up おすすめ記事

アメリカンクラシックの原点「ディグナ クラシック」の[ジミー]なら、カラバリ・仕様も豊富で自分好みの1本が見つかる!

  • 2026.05.21

50sアメリカンスタイルを踏襲した「ディグナ クラシック」の[ジミー]は、シンプルなデザインやクラシックな世界観から多くの人に愛される名作。その人気ゆえ、仕様やカラーのバリエーションが非常に豊富な[ジミー]の全容をいま一度おさらいする。 955E“Jimmy”とはどんなメガネ? 1950年代にアメリ...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

落語家たちが洋装に身を包む会、第4弾! 落語会「師匠お似合いですよ」の舞台裏で注目の落語家たちをSNAP!

  • 2026.05.18

アメカジを提案するファッションブランド「ゴールデンベア」が主催する落語会、その名も「師匠お似合いですよ」。弊誌も師匠方のスタイリングを担当。第4回目となる今回も大盛況でした。楽屋裏で撮影したみなさまの素敵な着こなしをお届けします! 落語家たちが洋装に身を包む会「師匠お似合いですよ」の舞台裏に潜入! ...

働くヒトとヴァーグウォッチ。【vol.01靴磨き職人/「Chett」店主・大平雄太さん】

  • 2026.05.21

「Time is Money」=「時は金なり」。自身の仕事に誇りを持ち、日々働く人々は有限な“時間”というものを重んじ、身につけるプロダクトにも徹底的にこだわる。アンティークウォッチの旧きよきディテールを備えながら、手軽かつデイリーに使うことのできるヴァーグウォッチはそんな彼らの心強い相棒となる。 ...

アイヴァン史上初の完全復刻。“ヒストリック コレクション”誕生の裏側に迫る!

  • 2026.05.22

「アイヴァン」2026年春夏の新コレクションとして突如発表された“ヒストリック コレクション”。これまでにもアーカイブを現代に甦らせる試みは幾度か行われてきたものの、どれも細やかなアップデートが施されていた。文字通りの“完全復刻”は今回が初となる。 アイヴァンには立ち返るべき原点がある どこぞのヴィ...