新型HHKB Studioの感想は? HHKBユーザーミートアップ Vol.7で聞く

新型HHKB Studioが発表された当日の夜、HHKBユーザーミートアップが開催された。参加された方は当然のことながら、初めてHHKB Studioに触れられるわけだが、イベントでは開発に携わった方々や、HHKBエバンジェリストの人たちが登壇され、そのインプレッションをお話された。その意見から、HHKB Studioがどのような製品なのか見てみよう。

予想を超えた売れ行きで、現在入手困難

会場で聞いた情報によると、昨夜発売開始の情報が出て以来、即座に注文が殺到して、イベント開始時にはすでにオンラインでは品切れ表示となっていた。イベント会場では、来場者限定で即売が行われてたが、こちらも飛ぶように売れていた。まず、初回販売分は売り切れということで、次回の入庫を待たざるを得ない状況らしい。

冒頭にHHKBのキー配列を考案した東京大学名誉教授の和田英一先生のビデオメッセージが流された。 「コンピュータの世界もコマンドラインで扱うことが多い時代から、大画面でさまざまなものを扱う時代になったからキーボードも進化すべき」とのことだが、「私自身は、文字入力用途が多いのでHHKB Professionalを使い続ける」と本音トークを流すPFUの度量の広さもすごい。

とにかく、タイピングの基本性能が高い

会場で聞いた話を総合すると、まず一番評判が良かったのがタイピングの快適性というか、キーボードの基本性能の高さだ。

一般から公募された約100人が集まって、イベントは開催された。

打鍵感の良さは、基板の安定感とスイッチのチョイスが実現している模様。

HHKB StudioはHHKB Professionalより、300〜320gぐらい重い。その重さは、キースイッチが搭載される基板の裏に重い鉄板が入っているからなのだそうだ。

打鍵している時に本体が軽々しく動かないというのもあるが、そもそもキースイッチの下のシャシーががっちりしている感じなのだ。

クルマに例えるなら、キースイッチがサスペンションで、基板がフレーム。サスペンションが十全に仕事をするためには、撚れないしっかりした剛性のあるシャシーが必要ということだ。

そして、45gのリニアのキースイッチが良い。Twitterなどを見ていると「静電容量無接点方式が良かった」という声もあるが、メカニカルの良さもある。特にこのHHKB Studioのために特注されたKailh製の押下圧45gのリニアタイプのスイッチがまた絶妙なのだ。リニア軸なのだが、押下時に若干の抵抗感があってHHKB Professionalの静電容量無接点方式のキーによく似ている。

そこの評価が一番高かった。

開発の途中から試用し、仕様の煮詰めに協力したプログラマーの有山圭二さん、プロフットバッグプレイヤーの石田太志さん、自作キーボードマニアのぺかそさんと、びあっこさん。
「開発途中で受け取った時は「どうなるかな」と思ってたけど、かなりいろんなポイントに意見を言って、すごく良い製品になった思う」とのこと。

筆者としては、キースイッチがホットスワップ可能なのが非常に嬉しいのだが、69個ものキーを差し替えるのが楽しみ……という意見はあまりなかった。

トークセッションに登壇していた清水亮さんも絶賛で、エバンジェリストとして試用機を受け取っているにも関わらず、さらに2台を購入して帰っていた(いろんな場所にいろんな端末があるから、多数キーボードが必要なのだそうだ)。

キーアサインにこれほど個性があるとは!

次に評価が高かったのが、キーマップ変更ツールだ。

話を聞いてみると、以外とキー配置の好みというのはある。

曰く、「Altキーはここがいい」「Fnキーはこの位置にある方が便利」「⌘とOptionは逆の方がいい」……などなど。それを自分好みにセッティングできるのは、けっこう嬉しいということなのだ。

さらに、空いてるキーに画面キャプチャーを割り当てたり、USキーボードの空いてるキーに「かな」「英数」キーを割り当てる……というようなことも可能になっている。こういった個々の要望に合わせた詳細設定ができるということは、キーボードという入力デバイスにおいて、極めて重要なのだと思った。

めちゃくちゃ面白かったスペシャルトークセッション2。(左から)乱入した落合陽一さんと、Shiftall CEOの岩佐琢磨さん、自称Uber Eats配達員で、実態はエンジニア、会社経営者、ブロガー、テクニカルライターの清水亮さん、ユーザーインターフェイスに詳しい東京大学情報学環教授/ソニーコンピュータサイエンス研究所フェロー・副所長の暦本純一さん、そしてPFUの松本秀樹さん。ぜひYouTubeを見ていただきたい。

「ディップスイッチがアプリに表示されるようになったのはいいけど、なんでディップスイッチの絵が描いてあるんだよ!」と清水亮さんが叫んでいたが、それは確かにその通りで、そこには機能を明記しておいた方がいいに決っている。

新機構は熟成に期待

ポインティングデバイスと、ジェスチャーパッドについては、歓迎はされているが、動作特性に関してはまだ不満な人が多そう。

キーボードを試用されているのは、SF作家の藤井太洋さん! 「非常に好印象で、これから執筆にはHHKB Studioを使う」とのこと。

感度というか、反応速度は調整可能なのだが、まずその方法がマニュアルを読まないと分からない。そして、清水さん曰く「キーボードのマニュアルなんて読んだことない」ということで、登壇者の誰もマニュアルは読んでいなかった。

そして、調整できたとしても、それは多段階に調整できるというだけなので、たとえばレスポンスのカーブを調整できるというわけではない。

ポインティングスティック、ジェスチャーパッドも、そのあたりの熟成が進んではじめて、便利な操作系になっていくのではないだろうか?

スペシャルトークセッション2に登壇された方々はそれぞれエンジニアなので、「オープンソースにしてくれれば自分で調整する!」とおっしゃっていたが、実際には製品品質保証とかの問題があって、そこをオープンにできるかは不明。

ただ、さまざまな特性を選んだりできるようになっていれば、一般ユーザーにとっても便利だと思う。

YouTubeが面白過ぎるので、ぜひご覧を!

総じて、ハードウェア的には大歓迎。ソフトウエア的には、まだ熟成の余地が大きいというのが登壇された方々の意見だったように思う。

キーボードマニア、HHKBファンが集まり、非常に楽しいイベントだった。

これらの意見が反映されて、ファームウェアや、キーマップ変更ツールが熟成されていけば、もっと使いやすくなるのではないだろうか? キーボードがソフトウエアアップデートで進化して行くというのも面白い。これからのHHKB Studioの進化を楽しみにしたい。

なお、HHKBユーザーミートアップ Vol.7の様子はこちらの動画で公開されている(ちょっと、一部音声が割れているのが残念だが……)。

冒頭の和田先生の挨拶、大倉さんのAdobeアプリ用のキーマップの割り付け、開発に携わった自作キーボード界隈の方も参加したスペシャルトークセッション1、清水亮さんの暴言すれすれアウトの発言をはじめとして、岩佐さん、暦本さんの話も過激で、さらに落合陽一さんも乱入してさらに言いたい放題……というスペシャルトークセッション2も、とても面白いので、ぜひご覧いただきたい。

(村上タクタ)