EOS R3の切れ味をサーキットイベントで体験! 巨匠が教える流し撮り

先日お知らせした、サーキットでの撮影会イベントに行ってきた。

そこで、体験したのは、サーキットでなければ体験できないキヤノンのフラッグシップ機EOS R3と、RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMの凄まじいまでの切れ味だった。

イベントは千葉県の袖ケ浦サーキットで開催されたBMW主催のサーキット走行会で、その場を借りてBMW Motorrad Photo Experienceの名で、バイクレース写真界の巨匠、大谷耕一カメラマンに『流し撮り』の方法を教えてもらえるというもの。キヤノン機材課の人がいらしていて、参加者全員にEOS R3とRF100-500mm(合わせて130万円弱)が貸出されるという太っ腹なイベントだ。

ちなみに、イベントはバイクがBMWでなくても参加できるのと同様、カメラはキヤノンでなくても参加できる。

詳しくはこちら。

サーキットでレース写真界の巨匠に流し撮りを教えてもらう。一緒に行く?

2023年05月03日

シャッター速度は1/125〜250。絞りは? 感度は?

まずは座学から。

今回の貸出し機材は、大谷カメラマンの設定がコピーされているので「私と同じ写真が撮れるはず」(大谷カメラマン談)とのことだが、そんなワケはない(笑)とはいえ、設定で悩む必要はない。

画角、シャッタースピード、絞り、感度……などカメラの基本についての講義があった。

ちなみに、貸出し機材のシャッター速度は初心者でも扱いやすいように1/500に設定されていたが、大谷カメラマンは1/125〜1/250で撮ることが多いという。背景を大きく流したいイメージカットの時には1/30〜1/60で撮ることもあるという。

絞りは、いくら明るいレンズを使っていても開け過ぎると合焦する範囲が狭くなるので(たとえば、ヘルメットに合焦しても、バイクがボケたりしてしまう)、あるていどの被写界深度を確保するために8〜11、時には16ぐらいまで絞るという。

とはいえ、これもイメージカットや、クライアントの要望で背景を大きくボカしたい時には、4〜5.6ぐらいまで開けることもあるとのこと。

ISO感度に関しては、大谷カメラマン自身は100〜1200ぐらいで撮影するという。昨今のカメラは高感度性能が高いが、感度50〜200のフィルムで撮影していた大谷カメラマンはやはりあまり高感度性能に頼るのはお好きではないようだ。

EOS R3+RF100-500mmでは、トラッキングは『乗り物優先』、『流し撮りアシスト』オン

ちなみに普通のカメラで流し撮りをするためには、Tv(シャッタースピード優先)で、AFはAI SERVO、トラッキングは『乗り物優先』でオンとのこと。これで、走っているバイクをシャッター半押し(もしくはAFボタン)で対象を追尾し続けてくれる。

ちなみに、最新のEOS Rシリーズの『乗り物優先』設定は、ディープラーニングの成果を使って画像認識しており、バイクの場合ライダーのヘルメットのシールドの部分に合焦し続けてくれる。

また、EOS R3は視線入力が可能で、たとえば複数のバイクが走っていても、視線で合焦させる対象を切り替えることができる。

シャッターは電子シャッターにしておくと、高速連写が可能になるし、最初の1カットしかブラックアウトしないので、流し撮りがしやすい。

さらに、EOS R3に最新ファームウェアを適用すると、『流し撮りアシスト』という被写体ブレ補正機能が使えるようになる。手ブレ補正の機能を使って流し撮りが上手くいくようにアシストしてくれるわけだ。これについては後ほど実例をお見せするが、私のような不慣れな人間だと、とても効果的な魔法のような機能だった。

袖ケ浦サーキットのフィールドでEOS R3+RF100-500mmを体験!

袖ケ浦サーキット(正式名称は袖ケ浦フォレストレースウェイ)は、東京側からいえばアクアラインを渡った袖ケ浦市にある全長2.436kmのこじんまりとしたサーキット。

筆者は、バイク雑誌時代から仕事で、何千周と走ってるが、首都圏からとても近く(多くのサーキットはとても遠い)、それでいて1000ccのバイクでも思う存分(直線ではせいぜい200km出るか出ないかだけど)走れる楽しいサーキットだ。ホームストレートと、長い下りのストレート、左、左、高速S字、左……と左ばかりが続くインフィールドのライン取りは難しく、工夫しがいもある。

筆者はいつもはレザースーツに着替えてバイクにまたがるのだが、今日はビブスを付けて、インフィールドの撮影スポットに入る。ちなみに、サーキットは常に危険のある場所。特に撮影のために入るインフィールドは、一般公道とは違いライダーのための場所で、うかつな行動を取ると撮影者はもちろん、ライダーにも危険が及ぶ場所なので、オフィシャルやスタッフの方の指示は絶対。

普通の公道では歩行者は優先されるが、ここはライダーが最速で走ることが優先される場所なのだ。一般の方の感覚では安全に見える場所でも、転んだバイクが飛んできたり、ライダーの走行の邪魔になる場所もある。逆にコースサイドに近くても安全に撮影できる場所もある。というわけで、大谷さんの指示で安全な撮影スポットに入る。

EOS R3+RF100-500mmを構えた筆者はこんな感じ。

EOS R3と、RF100-500mmは、普段、筆者が使ってるカメラよりだいぶ大柄だが、思ったりより軽くしっくり来る。慣れてくると、せめてこのぐらいの重さがないと流し撮りはしにくいのだと気付く。

特にRF100-500mmは、この圧倒的なズーム領域の広さの割に軽くてコンパクトなので最高に魅力的。大谷カメラマンも、筆者が知る昔は300〜500mmの単焦点レンズを何本も抱えて撮影されていたが、今は特に単焦点の効果が必要な時以外は、このレンズ1本で撮影することが多いという。

ちなみに、普段使ってるEOS R6 Mark IIとRF100-400mm F5.6-8 IS USMだとこんな感じになる。筆者の用途(イベント取材)だとこれで十分なのだが、この機材でどのぐらい戦えるのかも興味深いところ。

こうやって写真で見ると、フォームが少々窮屈になっている。

EOS R3+RF100-500mmのピントの的中率が異常!

というわけで、筆者がEOS R3+RF100-500mmで撮った写真がこちら。

なんというか、AFボタンを押しながら、腰で身体を回して、シャッターボタンを押すと、意図も簡単に(というと語弊があるが)こんな写真が撮れてしまう。

EOS R3+RF100-500mm、マジ凄い。

実は撮影している時は気が付いていなかったのだが、帰ってから大きなディスプレイで画像を見て驚いた。ほとんどの写真に、ちゃんとピントが来ているのだ。

異常な命中率。細かいことを言わなければ、ほぼ全部当りなのだ(もちろん、私の腕の方でブレているのはあるが)。

もちろん、私の腕的に、ちゃんとフレームに捉えられているかどうか……という問題はあるけれど、ハミ出ていても、ちゃんとピントが来てる。しかも、ヘルメットに。

正直、こんなに近寄っていて、筆者がちゃんとカメラを(被写体からブレずに)振れているワケがないのだが、おそらくEOS R3の最新ファームウェアによる『流し撮りアシスト』機能が働いて上下のブレなどをISがキャンセルしているのだと思う。なんなんだ、これは。

その上、デュアルピクセルCMOS AF IIの『乗り物優先』のトラッキングが、ヘルメットの顔の部分を追いかけ続けている。私は何もしていないのだ。

逆に大谷さんは『流し撮りアシスト』についてそれほど語ってらっしゃらなかったが、そもそもちゃんと流し撮りできる人だと効果を発揮する余地がないのかもしれない。ちょうと、上手いライダー/ドライバーの場合、ABSが効果を発揮しなかったり、逆に限界運転の邪魔になったりすることがあるような感じか。

ちゃんとカメラを振れない私の場合は、『流し撮りアシスト』が驚くほど仕事をしてくれていたのだと思う。

カメラの性能だけで、これだけ撮れる!

合焦し続ける能力は本当にすごい。

たとえば、このように手間に人が被ったりしても、迷う事なく被写体を追尾し続けるのだ。この上下のカットは連続して写真で、手前に他の参加者の方がカブってしまっているが、問題なくAFが被写体を追い続けている。

もっと人がたくさんいても、被写体を追い続けてくれる。

なんだ、この性能は?

『流し撮りアシスト』のおかげで、シャッタースピードを1/60まで遅くして、風景を流してもなんとか被写体をブレずに捉え続けることができている。

他の参加者の方々も、この性能を思う存分満喫していらっしゃった。

筆者のEOS R6 Mark IIとRF100-400mmも、お値段の割には十分頑張ってる!

では、筆者の私物、EOS R6 Mark IIとRF100-400mmだとどうか?

撮れている。まぁ、撮れてるように見える。少なくとも、現場で、背面モニターを見た時点ではそう思っていた。

しかし、家に帰って大きなモニターで見てみると、命中率が相当落ちていることに気付く。上の写真の次のカットは、下の写真のようになってしまっている。

ピントが合ってないのか、ブレなのか?

ピントが来てる写真だけピックアップすれば、同じように見えるかもしれないが、実際の命中率はかなり違う。

ちなみに、何が違うか考えてみると、メカニズムとして大きく違うのは、RF100-500mmは流し撮り用のISモード(レンズのスイッチで、縦方向だけの手ブレ補正を設定可能)があることと、本体に『流し撮りアシスト』機能があることだ。

もちろん、全体の性能、重量バランスなどのトータルパッケージの違いというのもあるだろうけれども、。

EOS R3+RF100-500mmが、私のような一般兵が乗っても9割5分のザクのコクピットをオートマチックに打ち抜くガンダムとしたら、EOS R6 Mark II+RF100-400mmはせいぜい、なんとか的を倒すガンキャノン。ただ、EOS R3+RF100-500mmを使えばモビルスーツの性能のおかげで、かなり勝てることは確かだ。

実際に、もし筆者が仕事で流し撮りをする必要があるのなら、間違いなくEOS R3+RF100-500mmを購入するだろう。

ちなみにEOS R3+RF100-500mmが130万円弱なのに対して、筆者の機材は50万円弱。2.5倍以上の価格差はダテではないのだ。そして、それだけの価格差があっても、デュアルピクセルCMOS AF IIで『乗り物優先』トラッキング機能を使えるのだから、EOS R6 Mark II+RF100-400mmは本当にお買い得だといえる。

大谷耕一カメラマンに、わからないことを何でも聞ける!

さらに、今回のイベントがお得なのは、大谷カメラマンに指導を受けられること。

世界トップクラスのカメラマンに、直接教えてもらえる機会はそうはない。

そういえば、コース上では元世界GPチャンピオンである原田哲也元選手が参加者をタンデムシートに載せて指導していたが、世界的カメラマンである大谷さんの指導はこれに変わらない価値があると思う。

次回は11月12日開催! 店頭で触れただけでは分からない性能をぜひ体感しよう!

流し撮りのテクニックを大谷カメラマンに教えてもらうおうと思って参加したイベントだったが、勉強になったのはもちろんEOS R3+RF100-500mmの性能にも驚かされた。

CP+や店頭などで触れたことはあったが、実際にサーキットで流し撮りを体験してみると、その性能の凄まじさに鳥肌が立った。多くの人にとって、流し撮りをする機会はあまりないかもしれないが、カメラが好きなら、一度はこの性能の凄さに触れてみていただきたい。

あと、EOS R3+RF100-500mmがすごいすごいと書いたが、一般兵の乗るガンダムと、アムロ・レイが乗るガンダムが全然レベルが違うのは当然。Moto GPマシンがすごくても、プロライダーが乗ると全然違うのと同じ。

優れた道具を、大谷カメラマンのようにすご腕の人が扱ってこそ素晴らしい作品になるのだ。

“いつかこんな写真が撮りたい” 陽の光とバイクがシンクロするその一瞬を求めて
https://www.bikejin.jp/column/history-14071/
(余談ですが、八代さんが乗る748の写真の時は大谷さんの横にいましたし、750SSの写真を撮る時にレフ板を支えていたのは僕です!)

ちなみに、次回は11月12日開催だそうです。サーキットでバイクを撮る体験をしてみたい! と思う方はぜひ。

私物カメラの清掃もしてもらった!

ちなみに、今回はキヤノンの機材課の方もいらしていて、参加者のカメラを清掃して下さいました。私は、それが目当てで、自分の機材(カメラ2台と、レンズ5本)を持ち込んで、清掃していただきました。ありがとうございます!(明日からの取材写真は少しキレイなはず(笑))

(村上タクタ)