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巨万の富を持つダニエル・ファンが、IMMOTORバッテリーに秘めた仕掛けと夢【単独インタビュー】

去る10月3日に発表されたIMMOTOR(イモーター)バッテリー。この商品自体は、これまで様々な企業から発売されてきたキャンプ用の大型モバイルバッテリーにすぎないように見える。しかし、ブロックチェーンや、NFTの技術を組み込んだこのバッテリーはweb3時代のパワーユニットであり、家庭用電源や、自動車用電源に展開する壮大な製品群の記念すべき一作目なのだという。IMMOTOR創業者のダニエル・ファン氏が、IMMOTORに秘めたビジョンは実に壮大で、エネルギーの民主化とも言える計画も含まれている。来日したダニエル氏に単独インタビューを行い、IMMOTORに秘められた壮大なプロジェクトについて話をうかがった。

スティーブ・ジョブズの発表に未来を感じた

ダニエル・ファン氏は、米国と中国で連続した成功を収めた起業家。中国の西安交通大学で情報システムの学士号を取得し、その後、南カリフォルニア大学でMBAを取得している。取材で、筆者がIMMOTORバッテリーの先進性について聞いたところ、ダニエル氏は自らの経歴から話を始めた。

「今日は、時間もたっぷりあるので、私の経歴からお話を始めましょう。その方が、IMMOTORバッテリーについて理解してもらいやすいと思います。まず、最初、私はスピーカーなどを作る会社に入りました。東芝やDellのパソコンに使うためのスピーカーを作りました。また、アップルのパソコンに入れるためのスピーカーも作りましたよ。始めた時はまだスティーブ・ジョブズが半透明のiMacを作る前です。また、eMacのスピーカーなども作りました」

「続いて、何人かの人と一緒にアメリカでmophieを創業しました。最初の頃はiPod用のケースやスピーカーを作っていました。実はiPod用のバッテリーも作りましたが、それは実際に販売するまでに至りませんでした」

そして、多くの人のとって、運命の時となった瞬間がやってくる。

「2007年1月9日、スティーブ・ジョブズがiPhoneを発表しました。非常に大きな衝撃を受けました。未来を感じました。ケースや、スピーカーのビジネスをやめて、iPhone用のバッテリーにフォーカスすることにしました。iPhoneは非常に優れたデバイスでしたが、バッテリーが充分ではありませんでした。2007年、iPhoneが発表された年に、我々はmophie Juice Packという、ケースとしてiPhoneと一体化するモバイルバッテリーを発売しました。2009年にはmophie Power Bankというモバイルバッテリーを発売しました。」

「iPhoneの人気とともに、どちらも非常に好調な売れ行きを見せました。初期には会社の売上げが1年間に100倍になったこともあったほどです。そして、2015年、売上げが伸び止まったmophieを売却しました。iPhone用のバッテリーのビジネスは伸び止まったので、私は次のビジネスに取り組みたかったのです」

新しい事業を始めるためには、新しい会社が必要だった

大きく成長したmophieで、その新しいビジネスをやることはできなかったのだろうか? ゼロから会社を立ち上げるより、成長した会社で新しいビジネスに取り組んだ方が経済的に有利だと思うのだが。

「mophieはモバイルバッテリーの会社でした。新しい事業を始めるためには、新しい会社を作る必要があります」

ダニエル氏が、mophieを売却して新たにスタートした新しい会社=IMMOTORは、折り畳み式の電動スクーターを作った。

「mophieとはまったく違ったビジネスでした。IMMOTORにはアフターサービスが必要でした。タイヤが壊れたりすると交換する必要がありました。また、充電などのインフラも必要でした」

その後、IMMOTORは電動スクーターなどで使う交換式のバッテリーを提供するビジネスへと舵を切る。US、オーストラリア、ヨーロッパ、中国……など、国土が広く、ラストワンマイルのモビリティが必要な国で、IMMOTORのビジネスは花開いた。

「中国ではフードデリバリーサービスの多くが電動スクーターを使っています。従来の電動スクーターだと3〜4時間かかって充電していたのが、街角のバッテリーステーションで1分もかからずにバッテリー交換をすることができます。2017年にスタートしたバッテリー交換プラットフォームビジネスは大きく成長しました。中国の60以上の都市にインフラとして設定されており、100万人以上のライダーに支持され、27億kmの走行に使われました。そして、東南アジアのタイやマレーシアにも進出しています」

再生可能エネルギーで充電することで、NFTを得ることができるバッテリー

しかし、交通機関が充分に発達しており、スクーターで走る必要がなく、余地も少ない日本で交換式バッテリービジネスを展開するつもりはないという。

しかし、IMMOTORが新しく世界的に展開するBAYシリーズにおいては、日本を非常に重要なマーケットと捉えているという。それゆえ、世界で最初の発表会の会場も日本を選んだという。

「2021年、ロシアの紛争などの影響もあり、キャンプなどに使う大型のモバイルバッテリーの市場は非常に大きく成長し、1.5億ドル(約220億円)になりました。毎年2倍前後も成長する市場です。キャンプ泊の時に、パソコンやスマホはもちろん、照明、プロジェクター、ミュージックプレイヤー、ストーブ、クッカーなどに使うことができます。また、非常時にも利用できます」

「IMMOTOR BAYシリーズは、従来にないインテリジェントな大型モバイルバッテリーです。充電や給電のすべてを、連携しているスマートフォンで記録、コントロールできます。さらに、BAYシリーズのバッテリーはユニークIDを持っており、それらの記録を暗号化して記録します」

ユニークIDと充放電の記録は暗号化されて、スマートフォンのIMMOTORアプリに送られた後、IMMOTORのサーバーに送られて記録される。GPNに関してはそれとは別にIMMOTOR BAYシリーズに搭載されたMCUが暗号化し、スマートフォンのGPNアプリへと送られ、そこからGPNのサーバーへ。そして、GPNサーバーでブロックチェーンに書き込まれる。

「IMMOTOR BAYシリーズのバッテリーはGPN(GreenPower Network)と連携しています。GPNは現実世界とweb3の世界を繋ぐ掛け橋です。GPNによりユーザーは再生可能エネルギーを使うことを奨励されます。BAYシリーズのバッテリーを買うと、NFTのアバターがひとつもらえます。7種類のアバターのうち、どれがもらえるかは完全にランダムです」

GreenPower Network
https://www.greenpowern.com/

「再生可能エネルギーでBAYシリーズバッテリーを充電することで、このアバターを強化したり、アイテムを装備したりできます。アバターが劣化する速度を遅くするアイテムや、報酬率を向上させるアイテムを得ることができます。そして、それらをNFT資産としてゲーム内で取引することができます」

ユーザーはNFTの取引で収益を得られるのか?

このアバターの取引は、単なるゲームなのだろうか? それとも、これによってユーザーは金銭的な利益を得ることができたりするのだろうか?

「GPNの将来的なプランですが、GPNを41〜50レベルに上げることでGPNゲームプレイトークンから、GPNガバナンストークンにアップグレードすることができるようになります。デジタルウォレットを用意し、PassNFTを所有することでミントすることができるようになります」

筆者は、NFTの知識が深くないので、詳しく解説することができないが、IMMOTOR BAYシリーズに再生可能エネルギーを充電することで将来的には、金銭的価値を持つ可能性のあるトークンを得ることができるということのようだ。

(注:ただし、IMMOTOR社が販売するのは基本的にバッテリーユニットのみ。GPNは別の組織なので、GPNが将来的に上手く立ち上がるかどうかは保証の限りではないし、IMMOTOR社が保証するものではない。IMMOTOR社はGPNに賛同する企業のひとつにすぎない)

しかし、この市場に大規模なインフラ企業や、ソーラーパネル企業が参入して来たら、我々がベランダの小さなソーラーバッテリーで得る利益は微々たるものにならないだろうか?

「IMMOTOR BAYシリーズはクラウドファンディングで販売しますが、バッテリーを購入いただいたアーリーバッカーにはNFTを無料で提供します。将来このNFTは有料になります。早いウチに購入しておけば、自分のトークンのプライスは増えるはずです」

辺境の人たちが、IMMOTORの収益で自ら電力を得られるweb3的世界

これは、再生可能エネルギーを新たなマネーゲームの舞台にしてしまうことはないのだろうか?

「世界には、いまなお電力インフラに自由にアクセスできない人が10億人以上もいます。彼らはインターネットにアクセスすることもできません。IMMOTORバッテリーと、ソーラーパネルがあれば、これらの人々に電力を供給することができます。GPNが将来的にDAO(非集権的な分散型自律組織)として運営されていき、そこで決定がなされればGPNが産んだお金で、こうした人たちにIMMOTORバッテリーとソーラーバッテリーという電力インフラを提供できるようになります。彼らは太陽エネルギーでIMMOTORを充電することができ、自らの得た収益でさらにインフラを整えることができるようになります。GPNが目指しているのはそういう世界なのです」

web3やNFTの話はまだまだ難しいが、電力インフラを持たない人がソーラーパネルで充電することで、収益を得て、さらにインフラを整えられるという話は面白い。これと、昨日レポートしたSPACE XのStarlinkのような仕組みが組み合わされば、辺境の人たちがインターネットやweb3から収益を得られるようなことが起こるかもしれない。

IMMOTORのCEOであるダニエル氏は、そんなweb3による電力の民主化を構想している。スケールの大きな夢ではあるが、現在の誰もが手のひらの上に『スマートフォン』という世界に繋がるコンピュータを持つ世界も、たった15年ほど前にスティーブ・ジョブズが夢見たからこそ実現した世界だ。

ダニエル氏の夢に乗ってみようと思う人は、近日始まるIMMOTORのクラウドファンディングにバックするという方法で応援し、同じ船に乗ることができる。

IMMOTOR BAY 500(GREEN FUNDING)
https://immotor.jp/

(村上タクタ)

 

 

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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