所有欲を掻き立てる欧米の4ブランド。
2023年、欧米の4ブランドが一挙に日本市場へと参入することになった。アルマンド・シモーニ・クラブとベクスリー、ウォール・エバーシャープ、コンウェイスチュアート。これらを束ねているのがペンファミリー社だ。創業者のエマニュエル・カルタジローネ氏は自他ともに認める万年筆コレクター。会社の理念としても「ペンコレクターによるペンコレクターのための会社」をコンセプトにし、2016年に稼働を始めた。
同社のオリジナルブランド・アルマンド・シモーニ・クラブは、今は亡きオマスの遺産を継承する形でスタート。軸の美しさで名を馳せたオマスの素材を用いることで、往年のオマスらしさを感じさせつつ、カルタジローネ氏の発想を取り込んだ新しい万年筆を作り上げている。
一方でベクスリーやウォール・エバーシャープ、コンウェイスチュアートなど、過去に一世を風靡したブランドの再興にも力を注ぐ。今後は日本での販売にも注力することで、ペンの愛好家たちとの交流を増やし、コレクター同士の深い繋がりを創出することを目指している。
右:Armando Simoni Club(アルマンド・シモーニ・クラブ)
ペンファミリーのフラグシップブランド。イタリア・ボローニャにかつて存在した万年筆ブランド・オマスが廃業した後に素材を継承し、2016年に同ブランド製品の復活を期して立ち上がった。名称はオマスを創業したアルマンド・シモーニ氏に敬意を表している。工程の大部分を手作業で行っており、部品の加工から組み立てまでイタリアで行うこだわりぶり。「機能性と美しさを兼ね備えた万年筆で世代を超えた繋がりを生み出す」をモットーとする。
左:BEXLEY(ベクスリー)
1993年にヴィンテージ万年筆愛好家によって設立されたベクスリー。現代の高度な技術を応用しながらも、1930年代のアメリカン・クラシックなデザインのペンを作り続けている。部品加工から製造、組み立てまでを一貫して米国内でほぼ手作業で行う。セルロース樹脂やエボナイトなど、今ではあまり見かけない素材を用いる。2016年にペンファミリー傘下となってからは、よりクリエイティブでデザイン性の高い万年筆の製造を目指している。
右:WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)
1905年に誕生したウォール・アディング・マシーン社を前身として創業したブランド。1910年代後半には米国で初めて繰り出し式シャープペンシルの商業化に成功した歴史もある。2012年からエマニュエル・カルタジローネ氏とコレクターのシド・サパースタイン氏が製造と販売を行うようになり、2016年にペンファミリー傘下に移行。部品の製造は米国内で行うが、最終的な組み立てはイタリア。同ブランドが手がけてきた「過去の名品」の復活を意気込む。
左:Conway Stewart(コンウェイスチュアート)
1905年に英国・ロンドンで創業したブランド。カラフルで小型の万年筆「ディンキーペン」を1922年に発売すると、ロンドンで大きな話題を呼んだ。英国歴代の首相や王族も愛用する万年筆を製造してきた実績があり、チャーチル元首相が愛用していたことでも知られている。1975年に廃業した後、1998年に一度復活したが2014年に再び廃業。2016年にペンファミリーが復活させた。英国で培われてきた優雅さをまとったデザインが魅力のブランドだ。
Armando Simoni Club(アルマンド・シモーニ・クラブ)のラインアップを紹介!
ボローニャメディオ
アルマンド・シモーニ・クラブの代表的モデル。セルロイド製の軸が美しいマーブル模様を描く。「グレート ギャッツビー ロジウム トリム」には、オマスでもその見た目の美しさが好評だった「アルコ ブロンズ」という素材を採用している。
共通スペック:収納時約141mm・本体約128mm・胴軸径約14.3mm・重量約46g・固定コンバーター式・14金ペン先M
ボローニャエクストラ アイラブニューヨーク
大都市ニューヨークがコンセプト。軸には「自由の女神」や「エンパイヤステートビル」、「クライスラービル」といったニューヨークを代表する建造物を刻印する。金属パーツの異なる「ゴールド トリム」と「シルバー トリム」を各1本ずつ販売。
共通スペック:収納時約161mm・本体約149mm・胴軸径約15.5mm・重量約59g・固定コンバーター式・14金ペン先マジックフレックス・税込209,000 円・各限定1本
スチューディオ ライン
アルマンド・シモーニ・クラブのエントリーモデル。吸入式を採用。インク窓が付いているのでインク残量を確認することもできる。今後も続々と新色が登場する予定だ。
共通スペック:収納時約145mm・本体約131mm・胴軸径約13.9mm・重量約28g・吸入式・税込42,900円
トリアンゴロ
「トリアンゴロ」とはイタリア語で「三角形」の意味。オマスの代表作だった三角軸の万年筆を再現している。三角軸は握りやすく、大型のペンにしては使いやすい設計も魅力。「コンプレッサー吸入式」という独特の吸入方式にも注目してほしい。
共通スペック:収納時約155mm・本体約138mm・胴軸径約15.1mm・重量約46g・コンプレッサー吸入式・14金ペン先マジックフレックス・各限定100本
コンプレッサー吸入式の仕組み
尻軸には内部の空気圧を調節するための穴が開いている。
尻軸後端を回すとシリンダーを引っ張り出すことができる。
指で穴を塞ぎ、上げ下げを繰り返すことで吸入ができる。
BEXLEY(ベクスリー)のラインアップを紹介!
カリフォルニア ゴールド トリム
カリフォルニアの豊かな緑がモチーフ。こちらも軸にはセルロース樹脂を採用。クリップにはグリズリーベアーとヤシの木をレーザー刻印で描いている。カリフォルニアの雄大さを感じることができる万年筆だ。
アロハ フロム ハワイ ゴールド トリム
ハワイの青い海をイメージ。軸にはセルロース樹脂を採用しており、美しく奥ゆかしい発色を生み出している。クリップや天冠にはウミガメのレーザー刻印を施すなど、ハワイらしい雰囲気を演出している。
WAHL-EVERSHARP(ウォール・エバーシャープ)のラインアップを紹介!
デコバンド
1929 年誕生の「デコバンド」を復刻したモデル。「ローズウッド ゴールド トリム」と「ギャッツビー オレンジ チェイスト ゴールド トリム」はエボナイトを使用。「フレキシブルニブ」に加え、より軟調の「スーパーフレックスニブ」もある。
共通スペック:収納時約151mm・本体約143mm・胴軸径約15.7mm・コンプレッサー吸入式・税込198,000円
ドーリック
1940年代に生まれた「ドーリック」を再現した注目作。12 面体にカットしたアールデコのデザインの軸は、握りやすいだけでなく、独特なエレガントさをまとっている。コンプレッサー吸入式を採用している。
収納時約156mm・本体約148mm・胴軸径約15.4mm・重量約45g・コンプレッサー吸入式・14金ペン先M・税込209,000円
シグネチャーライン
1920年~30年代にウォール・エバーシャープが発売していたペンがモデル。同ブランドの中では小型で使い回しがしやすい。セルロイド製の軸は美しいマーブル模様を描く。
収納時約137mm・本体約126mm・胴軸径約13.5mm・重量約37g・固定コンバーター式・14金ペン先M・税込110,000円
Conway Stewart(コンウェイスチュアート)のラインアップを紹介!
チャーチルシリーズ
コンウェイスチュアートのフラッグシップモデル。英国の元首相でありノーベル文学賞作家のウィンストン・チャーチルが愛用していた。重厚感のあるデザインが特徴的。日本では限定各1本のみの発売だ。
収納時約146mm・本体約140mm・胴軸径約15.5mm・重量約57g・ピストン吸入式・14金ペン先M・税込198,000 円・限定1本
【問い合わせ】
プリコ
TEL 06-6443-0039
プリコオンラインストア(https://www.preco-pen-online.jp)及びステーショナリーステーション(STAs)、Pen and message.(ペンアンドメッセージ)で発売。販路は順次拡大予定 。
TEXT/小泉翔一(編集部) PHOTO/北郷 仁
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