俺たちの青春BGMといえば、FMラジオ「赤坂泰彦のミリオンナイツ」!【赤坂泰彦インタビュー前編】

ひと昔前、ラジオでは“ヤングタイム”と呼ばれた夜10時以降。各局、中高生に向けた番組を放送していた。FMラジオのヤングタイムと言えばこの番組。雑誌「昭和50年男」に、『赤坂泰彦のミリオンナイツ』DJの赤坂泰彦にご登場願った。『ミリオンナイツ』に込めた赤坂泰彦の思いと現場の熱気が今回の企画趣旨。その願いに賛同したTOKYO FMの協力によりTOKYO FMのラジオブースにて撮影取材が実現。「赤坂泰彦さんと話がしたい」と、林 博紀ディレクター(当時)をはじめとした制作スタッフ陣が集い、思い出の会話が交わされる…。そこはまさに“あの時の”現場だった!

リスナーは相棒、俺とお前で、今聴いてる誰かのために!

声に、言葉に華があった。キラキラした世界にいながら、自分たちと真っ正面から向き合ってくれた。嫌なことがあっても、受験への不安で胸が押しつぶされそうになっても、「夜10時には赤坂がいてくれる」。そう思うと学校に行けた。明日も生きていこうと思えた。『赤坂泰彦のミリオンナイツ〜赤坂泰彦のわがままリクエスト〜』(JFN系全国ネット。以下、ミリオン)は、昭和50年男をそんなつらい日常から救い出してくれる存在だった。

「リスナーが僕を通して遊んでくれましたよね」

赤坂泰彦は、当時の熱気をこう振り返る。

「『バカだなぁ、お前』って、15歳、16歳が言ってくるんです。こっちも結構マジになって、『お前に言われたかねぇわ』って返して。そうすると、『赤坂、こんな漢字読めねぇだろう』ってはがきに書いてくるんです。でも、『その字が間違っているよ』って(笑)。そういう“火のついた球の投げ合い”みたいなやり取りがおもしろかったんじゃないですかね」

番組スタッフの言葉で全国ネットに

バンド「東京JAP」のドラマーとしてデビューした赤坂。だが、最初から「DJになりたい」と考えていた。JFN系の深夜放送『FMナイトストリート〜PAJAMA PRESS〜』(※1)で人気を得て、TOKYO FM(当時の表記はFM東京)の夕方ワイド『TOKYO POP ARENA』、『DANCE SHIP TOKYO』(※2)を成功させる。しかし、深夜放送は東京では放送されておらず、夕方ワイドは逆に東京ローカルだった。

そんな状況で舞い込んだ全国ネットの『ミリオン』。さぞ喜んだかと思いきや、意外にも最初は乗り気ではなかったという。

「夕方ではとにかく暴れまくったんですね。そっちも『わがままリクエスト』という番組テーマだったので、アニメの曲の次に新曲がかかり、その後にビートルズもかかるみたいに。そうしたら数字(聴取率)もついてきたんで。そうやって夕方を温めて、さぁ首都圏を巻き込んで、やっと盛り上がってきた。さらに上に行くぞ! もっと確かなDJ SHOWにしていこうという時の話だったので、実はまだまだこの時間帯をやりたかったんです」

「こだわり症で意固地」(本人談)な赤坂のわだかまりを解いたのは、番組スタッフのひと言だった。

「ADだったか電話オペレーターの女の子だったか…。正確には覚えていないんですけど、『全国に赤坂さんのこういう放送を聴きたい人がいると思います』って言われたんですよ。それを聞いた時に気持ちがパカッと開いて、『やります』ってなりましたね」

※1… 1984年~ 94年春に放送されていた深夜放送。放送時期、時間帯、ネット局によりタイトルが変わり、赤坂が89年~ 94年春に担当していたのが水曜の『PAJAMA PRESS(パジャマ・プレス)』だった。
※2…1989年~ 90年秋が『TOKYO POP ARENA』、90年秋~が『DANCE SHIP TOKYO』。放送時間は18:30(途中から18:00)~ 20:00

DJひとりでは個性は生まれない

1993年春に始まった『ミリオン』は大ヒット。その理由は、当時のメインリスナーである中高生との距離感にある。

「言葉遣いは悪いですけど、リスナーのことを“お前”って呼んでいました。『俺とお前でどっかで聴いている誰かにやるんだぞ』っていう。『2ウェイじゃないんだ、3ウェイなんだ。お前はいつもリクエストをくれる、お前はいつも俺にツッコミを入れたりボケたりしてくれる。お前はもう相棒みたいなもんなんだから、お前が聴いていないと誰かが聴いてくれないんだよ』って」

確かに赤坂は近所の兄ちゃんだった。同時にメチャクチャかっこよく、別の世界に住んでいる雰囲気も漂よわせていた。まだメールがない時代。やり取りの手段は手紙か電話、FAX。今よりはるかに手間も時間もかかり、費用もかかる。それでもリスナーは赤坂に構ってもらいたくてお便りを送る。その気持ちは通じていた。

「疲れていて気分が乗らない日も、番組が始まる前にFAXがガーガー鳴り出して、中学生ぐらいの字で『やった! 俺、間に合った! 赤坂!!』っていうメッセージを一枚見ると、パチッとスイッチが入りましたね。人気のトレンディドラマでもないのに、『夜10時に間に合うように走って帰ってきた』とか、『町に1軒しかないコンビニまでバイクで来て、今リクエストしてんだけど』とかって文字を見た途端、対象が何十万人、何百万人じゃなくて、そいつになったり。

代筆で『友達が病院で寝ちゃってんだけど、代わりにリクエストしました』とか、今の“生きてる”ライブの言葉が届きました。『チンチンに毛が生えたから今日は読んでくれ』とか、もうピンからキリまで(笑)。そういう時に一対一になっていたんでしょうね。だから、“お前、お前”って言っていたのかな。『俺はもうお前が聴いてりゃいいや。その代わりお前、絶対に聴けよ。離さないからな』っていう思いでしたね」

そんな熱狂の中心にいた赤坂。自分で自分を演出していた部分はあるのだろうか。

「いや、『ミリオンナイツ』の赤坂を作ったのは、僕の個性を伸ばしてくれたスタッフと、リスナーとの信頼感です。だから、同じ番組をやってくれと言われたら『同じスタッフをそろえてくれ』って言います。本当に今、つくづく思うのは、DJのキャラクターや個性っていうのは、そのDJひとりじゃ作れないんですよ。リスナーとスタッフの性格が作ってくれます。リスナー、スタッフ、DJの三角形がぐるぐるぐるぐる回ると、洗濯機の中で1本の水柱になるみたいに、DJのキャラクターができ上がるんです」

ラジオにとって幸せな形が構築されていたと言えよう。

勲章をつけてもらえた『ミリオン』最終回

しかし、始まりがあれば終わりもある。『赤坂泰彦のミリオン』は、1997年9月30日、人気絶頂のまま幕を降ろすことになる。

最終回当日は局の電話、FAXが鳴り止まず、レコード会社やリスナーからの花で廊下が埋め尽くされた。その日の思い出を語ってくれた。

「ミキサーさんってシフトがあるから、スタジオに多くて2人なんです。それがあの時、5人か6人、全員いたんですよね。みんながそろったのを見たのは初めてでした。夜勤明けの人もスタジオに来てくれて、1人10分ずつぐらいリレーで『最後、俺たちが順番に卓に座りますよ』って言われた時は、トイレに行って泣きました。そうやって勲章をつけてもらいましたね」

最終回が終わった後はどのような気持ちだったのだろうか。

「哀しさと怒りがスーッと抜けていって、スッキリしたような、ポカーンとして、これでみんな解放! みたいなところもありましたね」

“解放”とは穏やかではない表現だ。さらに突っ込んでたずねると…。

「やっぱり、毎日夜10時に、よいテンションにもっていかなきゃいけないっていう緊張があったんですかね。疲れた、だるいなんていいながらも、時計の針が重なったらカフが上がるんで、スタッフも僕から開放されて、次のチャプターに行けるかな? みたいな…」

赤坂には「ラジオの生放送はハプニングを起こしたい」という信条がある。毎回、何かハプニングが起きれば、明日を楽しみにして聴いてくれるというのだ。確かにそのとおりだが、想定外の出来事に対応するためには、気力・体力ともに充実させておかなければならない。4年半もの間『ミリオン』前も含めると9年、月〜木曜をその状態で迎えなければならないプレッシャーたるや、相当なものであったのだろう。

>>後編はこちらから

【コラム①】リスナーが憧れた『ミリオンナイツ』のオリジナルグッズ

『ミリオンナイツ』当時のディレクター林博紀氏が番組のノベルティキャップとTシャツを届けてくれた。ボディは重厚で、デザインも秀逸。手にしたかったリスナーが多かったのだ。『ミリオンナイツ』復活しないかなという思いが込み上げてきた。

【コラム②】『ミリオンナイツ』の名物コーナー「うさんくさいポップス」

毎週火曜に放送されていた名物コーナー「うさんくさいポップス」。“誰が、いつ、どこで、なんのために歌ったかわからないうさんくさい曲”を紹介していた。

赤坂いわく「最初は『アタックNo.1』の曲にツッコミを入れていた」。

例:「♪苦しくったって~ 悲しくたって~」「うん」「♪コートの中では 平気なの」「じゃあいいじゃねぇか。ずっとコートにいろよ」

違うフロアで自身の番組『山下達郎のサンデーソングブック』を収録していた山下達郎が、「うさんくさいポップス」を聴いて生放送中のスタジオに乱入。違う日に山下達郎が自分の秘蔵コレクションを持って来て、赤坂と一緒に笑い転げたこともあるという。

「尾崎家の祖母(おざきんちのばばあ)」まりちゃんズ

「うさんくさいポップス」といえばこの曲。タイトルどおり、尾崎の家の祖母がどれだけ憎たらしいか、意地悪かを歌い上げる。Part3まである。番組で紹介されるや大人気となり、シングルCDとして再発売され、ヒットを記録した。なお、「まりちゃんズ」は『崖の上のポニョ』で知られる「藤岡藤巻」が組んでいたバンドで、藤岡藤巻の2人と赤坂は現在も交流がある。

「謎の女B」平岡精二

自分(仮にAとする)と謎の女Bが出会い、Cの存在に気づいて逃げるまでの曲。ムーディなメロディに乗せ、普通は歌詞にしない“ 説明文”調で描いているところが非常にうさんくさい。曽我町子、EGO-WRAPPIN’など、雰囲気のある役者・歌手にもカバーされている名(迷)曲。

|PROFILE| 赤坂泰彦/あかさかやすひこ

昭和34年生まれ。バンドデビュー後、音楽知識やトーク力が買われ、憧れのラジオDJの道を進む。JFN系『赤坂泰彦のミリオンナイツ~赤坂泰彦のわがままリクエスト~』では、第31回(1993年度)ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞を受賞。フジテレビ系『夢がMORI MORI』、日本テレビ系『THE夜もヒッパレ』、フジテレビ系『タモリのボキャブラ天国』、日本テレビ系『『KDDI presents Music Lovers ~一夜限りのスペシャルライブ~』など、数多くのテレビ番組に出演。現在もラジオでNHK-FM『ラジオマンジャック』(土曜16:00 ~18:00)を担当している。

(出典/「昭和50年男 2023年11月号 Vol.025」)

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昭和50年男 編集部
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昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50(1975)年生まれの男性に向けて、「ただ懐かしむだけでなく、ノスタルジックな共感や情熱を、明日を生きる活力に変える」をテーマに、同世代ならではのアレコレを振り返ります。多彩なインタビューも掲載。
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