ロサンゼルスで追い続けた30年。世界屈指のヴィンテージ蒐集
アメリカ・ロサンゼルス在住の日本人であり、世界屈指のヴィンテージスウェット収集家として知られるpagi氏。今回、そのpagi氏のコレクション“のみ”を撮影して制作された『Lightning Archives VINTAGE SWEATSHIRTS 2』の発売にあたり、改めてその人物像を掘り下げる。そんな折、LAで開催されたイベント「LAヴィンテージ・ランデブー」に彼が姿を見せているという情報をキャッチ。現地へと足を運んだライトニング編集部は、突撃取材を敢行した。
まずは、その人となりから。長年ヴィンテージと向き合い続けてきた彼の原点、古着との出会いについて話を聞いていく。
「20歳の時、学校を卒業してアメリカへ来ました。古着との出会い自体はそれより前で、1994〜96年頃。大阪・アメリカ村で初めて古着に触れました。当時はいまよりずっと安かったけれど、学生の自分にとって気軽に買えるものは少なくて、“見るだけ”の日々が続いていました。その頃はフロッキーのスウェットというより、デニムのほうが好きでした。今回の本のお題で言えば、ピーナッツのスウェットが欲しかったですね。でも、世界的な人気キャラであるスヌーピーは、その時点でもう高くて買えませんでした」
その後アメリカへ渡り、約30年。仕事を続けながら古着を見つづけてきたpagi氏が、本格的にヴィンテージを手に入れることができたのはコロナ禍以降だという。
「最初はピーナッツとか、後付けのスウェット。このあたりが欲しかったんです。でも全然買えなかったんですよね。これまでフリーマーケットにはずっと足を運んできたのですが、一般的な時間ではダメなのだと思い、コロナの少し前頃から朝の暗いうちからフリマへ行くようになりました。それでもやっぱりあまり買えず、探し方そのものが間違っているって思ったんです。フリマの掘り出し物なんて本当に少ないし、人気のあるものはディーラーから直接買うしかありません。アメリカに来た年からずっとフリマには通っていましたけど、新参者の日本人にはディーラーが厳しくて、いいものを買うのは難しかったですね」
では、なぜここまでの数が集まるようになったのか。鍵は“若いディーラーとのネットワーク”にあった。
「ここ数年、アメリカのヴィンテージ熱は上がり続けていて、若いディーラーもかなり増えました。若いだけあって考え方が柔軟で、僕とも取引してくれます。『こんなものが出てきた』『Pagiに見せたいものがある』。積み重ねてきた時間が、ようやく動き出したんです。熱もあるし、話していても面白い。そういう人たちから古着を買うこと自体が、いまは一番面白いですね。これからは彼らみたいな若い人たちの時代だと思います」
そして本作の核となるのが、掲載の半数以上を占める“黒ボディのフロッキープリントスウェット”。存在自体は以前から知っていたものの、LAで長年古着を見てきたからこそ、その希少性に現実として驚かされ、深く沼へ引き込まれていったという。
「古着ってどのアイテムでもそうかもしれないけど、黒は難しいです。やっぱり残らないんですよね。でも、その分だけ異様に存在感があります。これまで何百枚とフロッキープリントのスウェットを見てきましたけど、同じものが本当に少ないんです。当時、学生がリアルに着ていたもので、“売るための商品”じゃなかった。だからチームの人数分みたいに少数で作られることが多かったんですよね。集め始めた数年前でさえ、高くて500ドルでも『高いな』と思っていました。それがいまでは2000ドルを超えることも珍しくない。流行と希少性、その両方ですね。本が完成するのは1つの目標でした。達成されたら『ここで終わり』って思っていたのですが……。まったく終わらないんですよ(笑)。昔から収集癖がある性格なので」
純粋な偏愛と探究心。相場や流行を越えて“手放せない理由”を積み上げていくその姿勢こそが、pagi氏という人物を物語っている。



上および下左はPagi氏のコレクションルーム、そのクローゼットの一部だ。室内はヴィンテージアイテムで埋め尽くされ、このほかにも希少なミリタリーやデニムのラックが並んでいる。なかでもフロッキープリントスウェットとピーナッツの棚は圧巻だ。

Pagi氏のインスタグラム(Instagram:@pagipagipagi)。日々、自身のコレクションを記録している。フォロワーは1万人を超え、世界中のヴィンテージ愛好家がその投稿に注目している。

突撃取材を敢行した「LAヴィンテージ・ランデブー」にて、Pagi氏と共に会場を見て回っていた2人のヴィンテージディーラーGolden State VintageのKyle(左)(Instagram:@goldenstatevtg)と、Cooked VintageのClay(右)(Instagram:@cookedvintage)。『Lightning Archives VINTAGE SWEATSHIRTS 2』の制作にあたり、彼らの存在は欠かせないものだったとPagi氏は話す。


掲載しているなかでも、特にお気に入りだというのがドラゴンのマスコットがプリントされたカラーフロッキー。マスコットが文字に干渉する構図ながら、その作り込みは極めて緻密。完成度の高いデザインは非常に珍しい。
「VINTAGE SWEATSHIRT 2」の中身をチラ見せ

現在予約受付中の『VINTAGE SWEATSHIRTS 2』。本書に掲載されるPagi氏のコレクションを、Lightning読者限定で先行公開。
COLOR FLOCK PRINT SWEATSHIRTS フロッキープリントスウェット
前作『VINTAGE SWEATSHIRTS』では数の限られていたフロッキープリントが、今作では半数以上を占める。ここでは約300着に及ぶ掲載アイテムから、資料的価値とデザイン性の両面で特に興味深い4着をピックアップした。フロッキープリントは時代性が顕著に表れるため、その背景や空気感を読み取る楽しさも魅力だ。

シンシナティ大学のフロッキープリントスウェット。「カレッジエイト」製のボディ。プリントの色残りも良好で、当時どのようなカラーで仕上げられていたのかが窺える。単なる古着としてだけでなく、資料としての価値も高い。AGE:1960s/BRAND:COLLEGIATE/ MATERIAL:ALL COTTON

「YEA YEA!」のコピー、そして4人の顔のプリントが示す通り、世界を熱狂させたビートルズを想起させるカラーフロッキープリント。1960年代当時の人気や時代の空気を色濃く映し出す、カルチャー色の強い1着。AGE:1960s/BRAND:UNKNOWN/ MATERIAL:ALL COTTON
PEANUTS ピーナッツ
今作でフロッキープリントスウェットに次いで多く掲載されているのが、1950年に誕生したコミック、ピーナッツのキャラクターがプリントされたスウェットである。なかでも1960年代に販売されていたスプルースボディの個体が大半を占める。数あるバリエーションのなかから、デザインの気に入っている2枚を厳選、紹介する。

“CURSE YOU, RED BARON!”の名コピーと、ドッグハウス=戦闘機の空想設定を描いたピーナッツ屈指の人気図案。軽めのスプルースボディとラグランスリーブのバランスも当時らしい特徴を備えた1着。AGE:1960s/BRAND:MAYO SPRUCE/MATERIAL:ALL COTTON

フロントにはバットを肩に担ぎ、どこか浮かない表情を浮かべるチャーリー・ブラウン。背面には「こんなに真剣なのに、どうして負けるんだい?」というメッセージが入る。誠実で不器用な彼の性格が反映されたピーナッツらしいデザイン。AGE:1960s/BRAND:MAYO SPRUCE/MATERIAL:ALL COTTON
OTHER SWEATSHIRT アザー スウェット
もちろん、フロッキープリントやピーナッツのスウェット以外にも、多彩なバリエーションが掲載されている。キング・オブ・スウェットとも称されるチャンピオンをはじめ、各年代を象徴するブランドや個体が随所に並ぶ。これまでのプリントスウェットとは異なり、より旧い年代の資料的観点からも見逃せない内容となっている。

ATTACHED HOOD PARKA。2本針両V仕様、ダブルフェイスの後付けパーカ。アメリカの名門アイビーリーグの中でも一際人気の高いイエール大学のアイテム。カプセルナンバーのように、フットボールナンバーが正面に入るため、アメフトチームのものなのだろう。AGE:1940s/BRAND:CHAMPION/ MATERIAL:ALL COTTON

SWEAT PANTS。上のパーカと共通するイエール大学のプリント意匠。フットボール型ナンバリング、チャンピオン製、タグデザインも一致し、同時期の使用が推測される。番号違いではあるが、当時はこのセットで着用されていたと思われる。AGE:1940s/BRAND:CHAMPION/ MATERIAL:ALL COTTON
photo/Norihito Suzuki 鈴木規仁 , Kentaro Minato 湊健太郎 (Seven Bros.) text/Yu Namatame 生田目優
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