LEVI’Sのこのキャラクター知ってる? 「サドルマン」がいた時代を振り返る。

ジーンズのオリジンであるリーバイスは、アメリカ西部のカウボーイたちからも支持されていた。そんな土壌を活かし、1930年代頃から十八番のデニムを活かしたカウボーイウエアを展開。そして戦後のアメリカで巻き起こったウエスタンブームにサドルマンとともに乗っていった。

アーカイブニスト寺本欣児がウエスタンカタログから読み解く。

35IVE SUMMERSCEO/アーカイブニスト・寺本欣児さん|1964年生まれ。兵庫県出身。1989年にサーティーファイブサマーズを立ち上げる。創業35周年を迎えた昨年より、継承をテーマにアーカイブニストとしての活動をスタート

ロッキーマウンテンフェザーベッドやビッグヤンクなど、米国服飾史に名を刻んだ名門を復活させた寺本さん。世界的なヴィンテージコレクターとしても知られ、ウエスタンウエアや時代背景にも造詣が深い。そこでリーバイスのウエスタンウエアについて自身の資料を元に解析してもらった。

「ワークウエアメーカーであったリーバイスが、新たな市場として目をつけたのがウエスタンウエアでした。1920年代よりデュードランチと呼ばれる牧場を開放したテーマパークがアメリカ西部で盛り上がりました。その背景には客足に悩んでいた鉄道会社の存在があり、観光客を誘致するために牧場主と組んで、デュードランチ協会を1927年に立ち上げたんです。そして世界恐慌の影響もあって、多くの牧場が収入を得るために開放し、そこで銀幕や本の世界でしか知らなかったカウボーイと接する機会ができた。また牧場を訪れる際はデニムパンツやジャケットがうってつけであり、ジーンズに馴染みのなかった都心部の人間にもファッションとして受け入れらたと思います。1934年のウエスタンショップのカタログを見ると、カウガールルックのイラストとともにリーバイスのレディース向けのデニムが新発売されたとの記事が出ています。ここらへんからリーバイスが本格的にウエスタンウエアを展開していく流れになったのでしょう」

ウエスタンはアメリカ西部や西部開拓時代を意味する言葉。カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置いていたリーバイスは、カウボーイの多いアメリカ西部では圧倒的な知名度を誇っており、それも追い風になったのだろう。

「アメリカ東海岸の人たちから見るとカウボーイの装飾的なカルチャーは、ネイティブアメリカンのフォークアート的な感覚と似ていたと思います。リーバイスのウエスタンウエアを多く持っていますが、’40年代のロングホーンはヴィンテージ市場にかなり少なく、’50年代のショートホーン、’60年代のサドルマンが多く出てくることも踏まえて、戦後にウエスタンブームが本格化したのでしょうね。戦後の方が完成度は高いですよ」

1934年に発行されたデンバーにあったストックマンファーマーサプライのカタログ。リーバイスの女性向けのジーンズが新発売されたと紹介。

寺本氏が所有するヴィンテージのウエスタンアイテムは、服のみではなく、革小物からシルクスカーフまで様々。この牧歌的な雰囲気は、フォークアート的な魅力を持っている。

デンバーの名店であるミラーストックマンの1950年のカタログ。ウエスタンラインのデニムシャツから王道の506XXまで掲載。ボーイズやレディースも紹介されている。

1940s

ロングホーンタグと呼ばれるタグデザインのウエスタンシャツ。ウール生地やベークライトのボタンなど、この年代ならではのクラシックな作りが特徴。このタグは市場でもかなり少ない。

1950s

タグが取れているがリーバイス刻印が入ったスナップボタンで判別。なんとも雰囲気のあるデニムウエスタンシャツ。寺本氏は、銅タイプのスナップボタンを用いたシャツをこぞって収集。

1950s

ロングホーンタグからデザインからほとんど変わっていない初期のショートホーンタグのウエスタンジャケット。ノコギリ歯と呼ばれるポケットのフラップデザインも人気のディテールだ。

1950s

’50年代らしい華やかなカラーリングが際立つチェック生地のウエスタンシャツ。ショートホーンタグであるが、初期のものと比べてタグのデザインが異なる。完成度の高いデザインだ。

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

Pick Up おすすめ記事

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...