GM系ラグジュアリーSUVの代表格、キャデラック エスカレードをディグる。

  • 2023.12.06

2000年代初頭、アメリカではそれまでのミニバンに取って代わるようにしてSUV人気が高まり、さらにその動きは加速してラグジュアリー(高級)SUVというカテゴリーを生んだ。そのパイオニア的車種といえばリンカーン・ナビゲーターだが、そのライバルとして登場したキャデラック・エスカレードの存在も忘れちゃいけない。キャデラック初のSUVとして生まれた同車は、現在でも進化を続け、キャデラックのラインナップに欠かせないモデルにまで成長した。

リンカーン・ナビゲーターのライバル車として登場。

本来商用車としてのイメージだったピックアップトラックや、ファミリーカーや主婦層が乗るクルマとしてのイメージだったSUVに「ラグジュアリー」というものさしが生まれた1990年代後半。リンカーンがブランド史上初めてのSUVであるナビゲーターを1998年に発売したことを発端に、このカテゴリーが一気にアメリカの自動車市場を熱くさせた。

そんなナビゲーターのライバル車として1999年に生まれたのがキャデラック・エスカレード。こちらもキャデラック初のSUVとして登場し、ピックアップトラックをベースに作られたSUVという商業車の転用モデル的なイメージを高級感のある装備で塗り替えることに成功した。

そんなエスカレードは今では独自の進化をし、富裕層のステータスSUVとしてアメリカに君臨している。その歴史と現行モデルの解説まで深掘りしてみるぞ。

第1世代 1999~2000年 あわてて開発した感の否めない初代モデル。

ナビゲーターの登場で、キャデラックも急いで高級SUV開発に着手。同GMのブランドであるGMCユーコンの高級バージョンであるデナリといっしょに発売したのが初代エスカレードだった。急いで開発したおかげか、ベースとなるシボレー・タホやユーコン、それに高級モデルのユーコン・デナリと見た目の差別化をしただけ感が否めないモデルで、2年間で次世代型へとフルモデルチェンジになった。ボディはショートホイールベースの4ドアモデルの3列シートのみで、エンジンも5.7L V8のみという設定だった。

第2世代 2002~2006年 より差別化を図った第2世代。派生モデルも生まれた。

前モデルが兄弟車のGMCユーコンのバッジ違い的なイメージだったエスカレードも第2世代になった2002年モデルからオリジナルのデザインに。4ドアモデルのみというラインナップは変わらなかったが、シボレー・アバランチをベースにした4ドアピックアップモデルであるエスカレードEXTを同時に発売。さらに翌年モデルにはシボレー・サバーバンをベースにしたロングホイールベースバージョンであるエスカレードESV(上の写真のモデル)を追加し、このカテゴリーに厚みを持たせることに成功した。エンジンは5.3L V8と4WDモデルには6L V8エンジンが搭載された。デザインでは当時のキャデラックのコンセプトだったアート&サイエンスによる直線基調のシャープなデザインで、フロントグリルはキャデラックのエンブレムの五角形を想起させるカタチになっている。

第3世代 2007~2014年 2009年モデルにはハイブリッドモデルも追加。

コンポーネントが共通だったシボレーやGMCのフルサイズカーと同時にエスカレードもモデルチェンジ。先代をベースにやや丸みを持たせたボリュームのあるデザインに生まれ変わった第3世代。引き続きEXTとESVモデルも同時にモデルチェンジし、さらに2009年モデルにはハイブリッドモデルも登場。キャデラックのラインナップのなかでも主要なモデルとしての地位を確実にしていく。搭載されるエンジンは6L V8ハイブリッドと6.2L V8ガソリンエンジンだった。このモデル(ショートホイールベースモデルのみ)から日本への正規輸入も始まっている。

先代から追加されたEXTはボディ後部がベッドになった4ドアピックアップモデル。高級車でピックアップトラックというスタイルはピックアップトラック大国であるアメリカならではのアプローチだ。Photo by General Motors

第4世代 2015~2019年 EXTとハイブリッドが無くなり、ホイールベース違いの2モデルに。

ヘッドライトがフロントフェンダー上まで伸びるキャデラックのセダン系モデルと共通のタテ型ヘッドライトのデザインになり、より五角形のフロントグリルが主張する顔つきにフルモデルチェンジした第4世代。それまであったピックアップモデルのEXTとハイブリッドは継続されず、ホイールベースの違う2モデルになった。トリムはベースモデル、ラグジュアリー、プレミアムが用意され、エンジンは6.2LエコテックV8のみになった。

第5世代 2021~現在 横長の目になり、大きなフロントグリルは踏襲された現行モデル。

縦長のヘッドライトデザインが特徴だったフロントマスクが横長でシャープなデザインへと変更された第5世代。車格はそれまで通りシボレーやGMCのフルサイズSUVと共通。車内に世界で初めて38インチの曲面有機EL(OLED)スクリーンを装備するなど、高級ブランドであるキャデラックらしい豪華な装備は徹底してリファインされている。搭載されるエンジンは6.2L V8がスタンダードだが、エスカレード史上初めて3.0L直6ディーゼルエンジンがラインナップに加わった。さらにキャデラックのハイパフォーマンスグレードであるVシリーズが2022年式モデルからエスカレードにも追加され、このモデルには682馬力を発生させるスーパーチャージャー付きの6.2L V8が搭載された。

キャデラックのハイパフォーマンスバージョンであるVシリーズに2022年からエスカレードも追加された。心臓部にはスーパーチャージャー付きの6.2L V8エンジンを搭載し、専用のバッジがボディサイドに付く。スタイリングも高級車というよりスポーティなデザインになっている。Photo by General Motors

気になる現行モデルの価格とサイズ感は?

ロングホイールベースのESVは堂々たるサイドビューを誇る。残念ながら日本への正規輸入はされていない。Photo by General Motors

正規輸入モデルはプラチナムが1740万円から、スポーツが1800万円から。正規輸入にはロングホイールベースバージョンのESVはラインナップされていない。燃費は公式発表でリッター8.3kmとなっている。ボディサイズは全長5400mm、全幅2065mm、1930mmとアメリカン・フルサイズカーらしい大きさ。正規輸入はないが、ロングホイールベースのESVモデルは全長5765mmになる

中古車は日本でも見つかるが価格の幅も気になるところ。

キャデラックらしい高級感のある内装だけでなく、インパネは巨大なモニターで構成される。世界で初めて有機ELモニターを搭載した。当然内装はレザーシートしか設定されていない。Photo by General Motors

さすがに新型のエスカレードを狙うとなると、誰もが買える価格ではない。といってもそこそこ歴史があるモデルで正規輸入車もあるので、中古車も日本国内で探すことができる。初代モデルから狙うことは可能だが、なかなか上質な中古車は期待できない。

現実的なのは3代目、4代目モデルだろう。いずれもSUVなので多走行のモデルが多い傾向なので、多走行車の場合はメンテ歴がはっきりとわかるモデル、高年式であれば低走行車を狙いたい。

3代目モデルであれば中古車市場で200万円台の価格も存在するがしっかりとした目利きが必要。新型は中古車でも1000万円以上で推移している。またエスカレードの内装はすべてレザーシートが標準装備なので、多走行や低年式の車両は痛みがわかりやすいレザーシートの状態を確認したい。経年劣化が激しい場合はシートの張り替えも考える必要がある。

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