夢見る頃を過ぎて、手に入れた日常を走る’90sホットハッチ。

4代目パルサーの中で、WRC参戦を目的に開発されたスペシャルモデルであるGTI-R。子供の頃に夢見るほど憧れたこのクルマを、ついに手にすることができたオーナー。保管するのではなく、日々を共に過ごすことでクルマとの絆はさらに強くなっていく。

見た瞬間、このクルマだと思った。自分と同じ生まれ年のパルサー。

「水上自動車工業」河原塚 玄さん|旧車から最新のクルマまで、水上自動車工業でメカニックを担当している河原塚さん。車種を問わず、丁寧な応対をすることでファンも多い。パルサーは毎日の通勤から休日の遠出まで、惜しみなくパルサーとの生活を楽しんでいる

心から欲しい物は、強く願えば必ず手に入れることができる。日産パルサーGTI‒R。クルマ好きなら誰しも知る名車だが、これを今探そうとすると、それは決して容易なことではない。

この個体は、本物の技術をもつ頼れる旧車専門店「水上自動車工業」でメカニックを担当する河原塚さんの愛車。若い彼が、なぜこの時代のクルマを選んだのだろう。

「父が日産で働いていて、子供の頃にビデオカタログをもらってきてくれたんです。その中でパルサーが一番好きで、テープが擦り切れるほど何度も見返してました」

パルサーの前はかなり手を入れたスイフトに乗っていたが、2年前の年末に1台の個体に出会う。

足周りはラルグスの車高調でセッティング。マフラーはノーマルで、クルマの性格から考えると非常に静かなサウンドを聞かせる。ボディは購入してから毎年1万キロ超のペースで走行しているが驚くほど美しい状態をキープしている。これはマメな洗車のたまものだ

「GOOで見つけたんですが、エアコンのファンレジスターの製造日が自分の誕生日の2日後だったのと、車体年式も自分の生まれ年と同じ’91年というところからも運命を感じてしまって(笑)。決め手だったのは運転席のドア部分に収納する付属の傘。これが袋入りの状態で未使用だったんです」

そのショップで購入し、自走で帰宅途中にガソリンが漏れたりと、いきなり旧車の洗礼も受けたが、今では好調を維持する。

「洗車はよくします。マメに洗うことで不具合にも気付きますから。あとは動かすこと。クルマは走らせてあげることが大切ですね」

一時期、日産車に搭載されていた「アンブレラポケット」。専用の傘が付属するが、この個体の場合、ビニールに入った状態の未使用の物が残されていた

1991 NISSAN PULSAR GTI-Rのディテールを拝見!

ハイパワーなエンジンの冷却効果を高めるため、ボンネット上のパワーバルジに加え、バンパーやグリルにもエアインテークが設けられている。

ENDLESSのステアリングは、前に乗っていたスイフトから引き継いだもの。

オーディオはカロッツエリア。室内の雰囲気を壊さないよう、できるだけシンプルな液晶表示の物を選んだ。

直列4気筒2000ccターボのSR20DETを搭載。エンジンはノーマルのままだが、当時のオプションであるニスモのタワーバーを装着している。

ホイールはRAYSのTE37 SONIC SLの16インチ。当初はブロンズカラーの予定だったが、色味が明るすぎたためガンメタに変更した。

リアに装着された大型のテールスポイラー。エアスクープの形状から空力特性が考えられているのがわかる。もちろん標準パーツだ。

【DATA】
水上自動車工業
埼玉県北足立郡伊奈町小針新宿717-1
TEL048-729-1330
営業/9 :00〜18:00
http://www.mizukami-auto.com/

(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)