型遅れでも市場価値が高騰する“Apple Computer”に魅せられて。

大抵の旧いパソコンはそのままジャンク扱いで捨てられる運命をたどる事が多いが、ことアップルコンピューターの製品に関しては別。世界中には多くのオールドモデルを収集するコレクターが存在するのだ。そんなニッチな世界で活躍する、米国に在住する日本人コレクターさんを訪ねてみた。

オールドAppleコレクター・武藤秀毅さん|大学時代には電気工学を専門に学ぶ傍ら自動車部に所属し、初代セリカを改造してはラリーやジムカーナを楽しむなどアクティブに活動していたという武藤さん。勤務先自動車メーカーでの開発担当時、アメリカ駐在を言い渡され渡米先で出会ったのは、大好きなアップル社のオールドモデルが豊富に手に入る環境だった

レガシーだけど美しい筐体デザインにファンは多い。

取材に訪れた自宅のクローゼットにはマッキントッシュをはじめとする無数のオールドApple製品が収納されていた、凄い!

今回、貴重なオールド・アップルのコレクションをお披露目してくれたのは、ロサンジェルス在住の武藤秀毅さん。

日本で暮らしている時からコンピュータの進化、そしてアップル社が世に送り出したコンシューマー向けモデルの洗練されたエルゴノミックなデザインや、ヒューマンインタフェースに優れた新しいOSの登場、そしてその進化に注目し続けていたと言う。彼にとっては、アップルコンピューターが誕生したカリフォルニアは、旧いマシンといくらでも出会える夢のような場所だった。

渡米後は週末になるとコンピューター・スワップミートなどのイベントに出向き、大好きなアップルのコンピュータを買い揃えていったそうだが、気がつくと家の中はオールド・マックだらけに。

その後自分のコレクションを紹介するホームページを用意し仲間と情報を交換していたそうだが、ある時、自分が揃えたオールド・マックを欲してくれる人たちがたくさん居る事に気がついた。それならばと中古で手に入れた、くたびれたマシンを整備して販売してみたところ、それらが飛ぶように売れるようになり、一念発起の脱サラ後、ヴィンテージ・コンピューター社を立ち上げた。

自身が好きだからこそ、オールド・アップル・ファンが何を求めているかも良く分かる。中古で手に入れたマシンをクリーンナップし、故障した部品を交換するなど、可能な限り完動状態に整備して、インターネットを通じ日本を中心に商品の販売を続けられている。

ユーザーがしっかり使えるマシンにリフレッシュする事がご自身の信条という事で、時には複数のマシンからパーツを集めて、1台のフルオペレーション・コンピューターとして蘇らせるそうだ。

オールドApple製品を修復して提供する武藤さんらしく、各種マシンのマニュアルもコレクション
マニュアルに描かれたグラフィックは、Macintosh開発チームのアートディレクターだったトム・ヒューズとジョン・フェイヒーがピカソに影響を受けてデザインしたもので、通称「Picasso Mac」と呼ばれている

デビュー当時からデザインや先進性で常に注目を集めてきたアップル社のコンピューターだが、最新モデルに近くなると徐々に内部に手を入れられるマシンは無くなってきている。2015年あたりまでのモデルはノートブックも含め内部をカスタムできるそうなので、アメリカならではのパーツなどを組み合わせ、カスタマーの要望に応えながら、武藤さんはオールドマックを可能な限り最新のスペックに近づける状態にカスタムして提供している。

そんな武藤さんのオフィスにズラリと並ぶオールド・アップルの一部を拝見したが、当時革新的な先進性を誇ったアップルⅡやL ISA、初代マッキントッシュ128Kをはじめに、博物館レベルのアップル社のオールドマシンたちが居並ぶ様は圧巻だ。そこでコンピューターの歴史を作り上げてきた、アップル社の代表的なコンピューターや周辺機器をご紹介!

武藤さんはレアなMacintoshの空箱も所有する!

世界を変えた近代コンピューターの礎、そのダイナミックなラインナップを愛でる。

Apple II[1977年6月]

ガレージカンパニー時代に、マザーボード単体で発売されたApple Iを除けば、Apple Computer社として初となる本格的な製品がこのApple II。キーボードが本体と一体化したスタイルで、その後発展を続けるいわゆるパソコンの元祖と言っても良いエポックメイキングなモデル。パーソナルコンピューターの黎明期と言われる1977年に誕生した。

Apple III[1980年11月]

Apple IIの後継機としてビジネスユーザーをメインターゲットにし、1980年に発売されたのがApple III。内蔵フロッピーディスク・ドライブに加え、外付けフロッピードライブを3台まで拡張可能であった。ただし冷却ファンを取り付ける事を拒んだスティーブ・ジョブスの美学などが技術的な問題を多数引き起こし、Apple IIIは信頼性を失い、商業的には失敗作と言われている。

Apple IIe[1983年1月]

Apple IIIの販売不振を受けて企画されたのが、Apple IIe。16色のグラフィック表示が可能になった事に加え、キーボードがフルASCIIセットとなり、小文字アルファベットが直接入力できるようになった。上下のカーソルキーやAppleキーもこのモデルで新設された。

Apple IIc[1984年4月]

Apple IIシリーズとして1984年に発表されたApple IIc。当時としては非常に薄型であった筐体のデザインに、故スティーブ・ジョブズの美学が伺える。ちなみに手がけたのはフロッグデザイン。その後に登場するMacintoshシリーズのデザインも手掛けており、世界に一躍その名を轟かせた。

Macintosh[1984年1月]

1年前に発売されたLISAの開発チームから外されたスティーブ・ジョブスが、その反骨精神をバネに開発に注力して登場したのが、みなさんご存知のMacintosh。小型でスタイリッシュなモニター一体型の筐体は、その秀でたデザインで一躍脚光を浴びる。初期モデルのMacintosh 128Kはマウスとグラフィカル・ユーザー・インタフェイスを使ったパソコンとして、世界で初めて成功したモデル。

PowerCD[1993年3月]

フィリップス製CDのプレイヤーのボディを利用したマシンで、音楽再生だけでなくMacintoshシリーズに接続しデータCDを読み取ることもできる。またPhoto CD規格に対応し、外部モニターに画像を表示することも可能。

Portable[1991年10月]

ハンドルが取り付けられ、Macintoshシリーズとしては初めてバッテリー駆動に対応したのがこのPortable。純正採用されたトラックボールは10キーと入れ替えたり、キーボード全体との左右位置変更もできるので、左利きにも対応した。

MessagePad[1993年8月]

世界初のPDA(Personal Digital Assistant)で、1993年から1997年11月まで販売された。かなり大きめの手のひらサイズで、文字は手書きで入力し、スケジュールや名簿、ToDoの管理などができた、ある意味でiPhoneのルーツとも言えるモデル。一般的にはOSの名称であるNewtonと呼ばれる事が多い。中でもスケルトンモデルはプレス発表会で配られた限定品との事。

Twentieth Anniversary Macintosh[1997年3月]

Apple IIの発売から20周年を記念して発売された特別なMacintosh。開発コードネームは“スパルタカス” と呼ばれ、コレクターの間では通称“TAM” と略される。薄い縦型の筐体にカラー液晶を備えたユニークなスタイル。さらにBOSEサウンドシステムをビルトインし、サブウーファーも付属するので高音質なサウンドも楽しめる。センターはCDドライブでTVやFMチューナーも内蔵。当時は7499ドルのプライスで売り出されたものの、コンピューターとしての性能は平凡なものであったため在庫が大量に残り、最終的には$1998で投げ売りされたとか。

PowerBook 5300 [1995年8月]

1991年に登場したPowerBookはMotorola製68KシリーズのCPUを使用していたが、1995年にPower PCを採用しグンと性能が向上したPowerBook 5300が登場。刻印された「XXXX」の文字は5300の試作機だそうで、筐体表面のシボ加工なども市販版とは異なる。

(出典/「Lightning2023年4月号 Vol.348」)

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