4000個のハンバーガーを食べてきた男が、ここまでハマってしまった理由。

初めて食べたハンバーガーが忘れられず、そこからハンバーガーにどっぷりとはまり、さらに人生までも変えてしまったハンバーガーラバーたち。好きが高じてハンバーガーの専門誌や本格的なショップガイド本などを出版するのがハンバーガー探求家・松原好秀さん。どんなハンバーガーに出会い、感動したのか。話を伺った。

ハンバーガー探求家・松原好秀さん|1971年、東京都生まれ。ハンバーガー探求家。評論家。専門誌『HAMBURGER STREET』を自主出版の後、ハンバーガーショップの本格的なガイド本『THE BURGER MAP 首都圏版』(幹書房)などを出版。テレビ・ラジオ出演のほか、映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』の公開記念キャンペーンなども担当した。現在もウェブや雑誌にハンバーガー連載を継続中

見た目の8割で美味しいかわかります。

2004年からハンバーガー探求家として様々なメディアに出演、執筆活動を行っている松原さん。元々ハンバーガーやグルメ、雑誌業界とは無縁だった松原さんがなぜ探求家として活動しはじめたのだろうか。

「高校生くらいまで、ハンバーガーといえばマクドナルドが主流でした。大学生くらいになってからファストフードではなく、手作りのグルメに目が向いたんです。そんなときに食べたのがウェンディーズでした。クラシックシングルチーズを食べたのですが、当時294円でこんなに美味しいの? と衝撃を受けました。私の人生を変えたハンバーガーです。

そこからモスバーガーやロッテリアのチェーン店を巡り、そのあとハードロックカフェなどの上陸系ショップを巡る日々。そんなときにブラザーズが突如登場した。当時は個人経営の専門ショップはなかったんです。ここのハンバーガーを食べて、また衝撃を受けましたね。この頃は自主出版でハンバーガー専門誌を作り始めていたときで、自らインタビュワーになって話を聞いて記事にしましたね」

ハンバーガー探求家としてスタートするきっかけとなったのがウェンディーズのクラシックシングルチーズ。今のバージョンではなく、当時の味が今でも忘れられないそうだ

低く見積もってもこれまで4000個のハンバーガーを食べてきたという。では美味しいハンバーガーを見つけるコツはあるのだろうか。

8割が見た目ですね。積み方には意味や機能、役割があって、食材の順番とか説明ができる人と、見よう見まねで重ねている人が積み方でわかっちゃうんですね。例えばカフェアルプスのバーガーは美しくて美味しい。とはいえ例外も2割あります。見た目はイマイチでも、手慣れていてそつがないバーガーはやっぱり美味しいんですよね」

僕にとってハンバーガーはヒーローです。

では、松原さんにとってハンバーガーの魅力とはなんなのだろう。

「ハンバーガーは牛肉の食べ物です。それを差し置いてどうこう言うことができないですね。私の好みはUSビーフですが、黒毛和牛の良さを生かしているお店もたくさんあります。本当に肉が美味しい店は、野菜の存在が気にならないんです。それこそ美味しいハンバーガーなんだなと僕は思っています。

アメリカでは牛豚の合い挽きパティは、宗教もあって存在しないんですね。ただし、10年ほど前にロサンジェルスで、牛肉50%とベーコンを挽いたもの50%のパティが出たんです。カリッとした食感のベーコンと塩気やスモークのフレーバー、そして豚の脂のうまみが絶妙で、これは美味しい! 時代と共にパティも変化していくのでしょうね」

松原さんが自らの足でハンバーガーショップを巡って厳選したお店だけを掲載したガイドブック。メニューや店舗情報はもちろん、車椅子で入れるかどうかなどとても細かい情報が満載。取材もすべて松原さんによるもの。一都三県のバーガー店を紹介。アマゾンで購入することができる

これから次々と新しいハンバーガーが登場し、それぞれのお店特有の味をもっと楽しめるようになるのだろう。さて、松原さんにとってハンバーガーとは? という質問をぶつけてみた。

「子どもっぽいことをいうようですが、ヒーローですね。いろいろこれまでを振り返ってみると、美味しいハンバーガーを食べると救われるんですよね。ちょっとだらけた生活に活気や精気が蘇ったりとか。人生をちょっと巻き戻せるような存在だなと、最近気がつきました。18年間この仕事をやってきて、よきハンバーガーは僕の人生を肯定してくれている。そういう意味でも救いの神であり、ヒーローなんですよね」

最後にいま気になっているハンバーガーは?

「映画『ザ・メニュー』に出てくるハンバーガーです。僕の思い描いた理想のハンバーガーがそこにあったんです。派手で豪華なものでなく、日常普通に食べるシンプルなものこそ、本物のハンバーガーなんだなと再認識しました」

ハンバーガー専門誌『HAMBURGER STREET』は自主出版の雑誌。松原さんならではの目線で構成された記事は、とてもユニークで面白い。またアメリカンカルチャーの専門誌などでもハンバーガーの連載を担当している。アメリカとハンバーガーは切っても切り離せない

ハンバーガー探求家・松原好秀さんの思い出バーガー2選。

BROZERS’のロットバーガー BBQソース

チェーン店ばかりの中、突如現れた専門店。こんなに立ち姿が美しいバーガーを見たことがなかった。かけるソースが選べるのも画期的。強い味わいの中にみごとなまとまりあり。東京スタイルのバーガーを確立した。

GORO’SDINERのプレーンバーガー

今はないのだが、忘れがたいお店。とても均整がとれた総合力の高いバーガーだった。バンズの神様と呼び声高い「峰屋」の酒種バンズをみごとに使いこなし、ハンバーガーのポテンシャルを無限に引き出していた。

ハンバーガー探求家・松原好秀さんの今イチ押しの店3選。

SHAKE SHACKのシャックバーガー ダブル

もっと評価されるべき店。いい意味でビーフの香りがとても強いバーガーで、例えるならジャーキーのようなスナック感あふれるおいしさ。「これぞバーガー」というハンバーガーだ。

Skippers’のスキッパーズバーガー 4.0

近年チョップ肉のパティが多い中、チョップ肉と伝統的な挽肉を二層構造にしたパティで、肉のダイス感が大変よくわかるバーガー。昆布や鰹だしを練り込んだオリジナルバンズも特徴的。

Mikkeller KandaCHEESE BURGER

デンマークのクラフトビールメーカーの直営店。世界で唯一この神田店でのみハンバーガーを提供している。挽肉を丸めた状態で鉄板に乗せスマッシュ(つぶす)する調理法で有名。

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「ハンバーガーLOVE」)

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