季節ごとに織りや染め方を微調整しつつ、創業3年目にたどり着いた理想の形を継承する「フルカウント」のジーンズ。

変わりゆく世の中で「変わらないモノを作り続ける」というコンセプトの下、創業当時より同じ生地、デザインのジーンズを作り続けてきたフルカウント。模倣から始まったモノづくりが時を経てオリジナルへと昇華されてゆく。

「フルカウント」代表・辻田幹晴さん

国内アパレルメーカー勤務後1993年にフルカウントを設立。デニム製作には強いこだわりがあるが穿き方や洗い方は「普段着なので、こだわりがないのがこだわり」だそう。

20年前も、そして20年後も変わらないマスターピース。

工場や職人さんと長年かけて人間関係を作ってきたからできる変わらないモノづくり。今や海外での評価も高く、通販の5割はアメリカだ

レプリカジーンズ黎明期の1993年創業のフルカウント。そのモノづくり原点はヴィンテージの再現にあるが、もうひとつ欠かせない大切なことが「変わらないモノを作り続ける」ことにある。

「3年目に納得のいくモノができて以来、生地もシルエットも変わってません。ただ、同じといっても、品質の安定化ために長年データを取って季節ごとに織り方や染め方を微調整したり、工場や職人さんたちと信頼関係を築いてきたからこそできることなんです」

辻田さんの愛用デニムのひとつ。お気に入りポイントはサイドのラインに現れる” ピリピリ” と呼ばれるヴィンテージライクな色落ち具合。フルカウントのデニムだからこそ出せる風合いだそう

だがひとつ、変わらないために変えた大きな出来事がある。それが2019年よりバックポケットのステッチを廃止したことだ。

「その少し前に日本限定ですけどウチのステッチの商標登録が取れたんですよ。それはつまりフルカウントのステッチが正規のモノとして認められたってこと。それで急に冷めてしまったというか」

ステッチをなくすことを不安視する人もいたが、よりシンプルで合わせやすいと好評で、以前より売り上げも上がったそう。

ロールアップは合わせる靴やトップスによって巻く回数や幅を変えている。この日はヒールのあるシューズなのでアクセントに軽くひと折り

「いずれはレプリカとしてでなく、この形とか生地に価値を認めてもらえたらいいなと思っています。本当に自信があるモノだからこそ、今後もそこは変えずに続けていくということですね」

そんな辻田さん、年間通して基本2本を着回しているという。その愛用の2本を見せてもらった。

1.何も気にせず穿くだけで美しい色落ち「FULLCOUNT 0105」【4年着用】

フルカウントの定番シリーズの中では最もシルエットがワイドなストレートモデル。基本的に年間通して2本(もう1本はテーパードの入ったモデル)を公私に渡って着回していて、破れたら新しいのを下ろすというサイクル。こちらは約10年前に4年ほど穿いて珍しく破れる前に終了した1本。

バックポケットにはモノを入れないのでキレイ
洗濯も汚れが気になったら奥様に普通に洗剤&全自動洗濯機で洗ってもらうそう

2.毎日穿き続けて生まれた自然な色落ち& ダメージ「FULLCOUNT 0105」【5年着用】

公私に渡りほぼ毎日5年間ほど穿き続けたことでヒゲの部分から破れてきたもの。こちらも洗濯は全自動で普通に。破れてからは現役を退いたが、色落ち具合は気に入っているのでたまにダメージジーンズを穿きたい時に登場するそう。

隠しリベットギリギリに通る縫製ラインが密かに好きなポイント

(出典/「Lightning2022年4月号 Vol.336」)