造船所で使っていた足場板を別のカタチに有効活用。
愛媛県今治市。今治タオルで有名な街だが、実は世界でも類を見ない海事産業が集積する海事都市でもある。造船業も盛んで日本全体の30%を超える船舶を建造しているというから驚きだ。その造船所のひとつ浅川造船でも、ケミカルタンカーを主力とした大型船が建造されている。
船の建造時に使われるのが職人の命を守る足場板。1隻につき約1万本の足場板が使われるのだが、役目を終え、劣化した足場板は工場内で焼却処分されたり、産業廃棄物として処分されてきた。この足場板を別のカタチにして有効活用できないか。そこで生まれたのが“家具”というキーワードだ。
古材を提供する浅川造船、その古材を使って家具を作るコンテナ、そしてブランド運営を行うオズマピーアールがタッグを組んでスタートしたのが瀬戸内造船家具プロジェクトだった。
DIYなどで一般に流通する板の多くが通常3・2㎝だが、造船所で足場板として使われる板は5㎝もの厚みがある。ダイニングテーブルやシェルフなど大型家具には適しているが、小物は作れない。それでもこの重厚感と足場板だったという歴史が刻まれた家具は、徐々に認知され、スタート当時に目標にしていた売り上げをはるかに上回る結果になった。
限られた数の古材を使い、すべて手作業で製作しているため大量生産はできない。しかし世界でたったひとつの家具が愛媛から生まれる。足場板だった面影を残しながら。
手間と時間をかけて古材を再生する方法を紹介。
1.板を洗って乾燥させる。
造船所から引き取った足場材。ずっと雨ざらしになっていたためキレイに洗ってからしっかり乾燥させる。その期間、なんと約3カ月!
2.表面を自動研磨する。
板は表面が削れてボコボコになっている。研磨をしすぎると古材感がなくなり、しなさすぎると木のトゲが刺さることも。その調整が一番難しい。
3.手動で研磨する。
大まかに研磨したあとは表面の状態を見ながらサンダーを使って軽く研磨する。古材感がなくならないようにサンディングするのがポイント。
4.オイルを塗る。
最後の仕上げにオイルを塗ることも。古材の場合、オイルが染みこみやすくなっているため、クリアオイルを使ってもここまで濃い色に変色する。
【DATA】
ConTenna
愛媛県伊予市上三谷1535-5
TEL089-908-4016
営業/11:00~17:00
休み/水・日曜
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「Lightning2022年3月号 Vol.335」)
Text/M.Matsumoto 松本めぐみ Photo/S.Kai 甲斐俊一郎
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